忍者ブログ
2023年7月号  №193 号 通巻877号
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『旧・新約婦人物語』(51)

 

 ピラトの妻

  =マタイによる福音書27:15~31=    

 

 イエス様を十字架に付ける宣告を下しましたローマの総督ピラトは、歴史の中で一番憎まれた人物の一人でありましょう。ピラトはローマ皇帝テベリオに選ばれまして、紀元26年頃、ユダヤの総督として遣わされたのです。彼はまことに残酷で、無慈悲な男であったばかりでなく、性格が頑固一徹で、一度こうと決心し、決定したことは、それがどんなに間違っていましても、「それは間違っていた」と言ったり、決定を取り消したりなどする人物では、決してなかったようであります。

 ピラトのユダヤ人に対する政策は、余りにも独裁専制主義であったために、紛争が絶えず、彼はとうとうローマ皇帝に訴えられてしまいました。紀元37年頃のことですが、ローマ皇帝より、ローマに呼び戻されてしまい、ユダヤには別の人が総督として遣わされることとなったのです。

 彼のいろいろな間違った政治のやり方や悪い行為などが、ローマで調べられることになってしまいました。ところが彼がまだローマに帰り着かない先に、皇帝テベリオが死んでしまったのです。ピラトは皇帝テベリオの前で取調べを受け、自分を弁明することが出来ませんでした。歴史家の伝えますところでは、ピラトはその後、フランスの南部に追放されまして、哀れにもそこで自殺をとげたとか言われています。正しい政治を行わず、良心的に善を尊ばなかったためにピラトは、彼自からの罪のために滅んでしまいました。

 

 さて、お話をイエス様が総督ピラトの前に立たれました時に戻しましょう(27:11以下)。ピラトは先ず、イエス様に向かって、「あなたがユダヤ人の王であるか」と尋ねました。イエス様は、はっきりと「そのとおりである」とお答えになられました。ところがイエス様をなき者にしようと、イエス様を捕らえ、ピラトの前に引っ張って行った祭司長や長老たちが、次々と不利な証言をピラトに訴え続けましたが、イエス様は彼らには一言もお答えになりませんでした。イエス様のこのような態度には、総督ピラトでさえいぶかるほど沈黙されていました。

 総督ピラトが裁判の席に着いていました時、一つの不思議な出来事が起き上がりました。それは群衆が裁判の開かれている法廷の広場に集まり、キリストを十字架につけよ、十字架につけよと、激しく叫び続けている時のことでした。ピラトの妻の所から、一人の使いが来まして、総督に何か話したいことがあると告げました。

 裁判の開かれている大切な時に、妻が夫の総督を煩わすというのはどうしたことでしょう。余程、何か重大な急を要することでも起きませんと決して裁判の最中に、夫の総督を煩わすといったことをするはずがありません。ピラトは驚いて、何事が起こったのかと、問うたことでありましょう。

 どんな重大な事件が起きたと言うのでしょうか。彼女は夫のピラトに、「あの義人には関係しないで下さい。わたしは今日夢であの人のためにさんざん苦しみましたから」(19)と、使いの者を通して告げました。

 ピラトの妻のこの言葉によって、わたしたちは彼女についていろいろなことが、分かるように思います。その一つは、彼女は総督の妻として、また、裁判をする立場の人の妻として、彼女自身の立場と責任を非常に強く自覚していて、今、主人がどういう人を裁いているのか、またどういう問題に主人は直面しているのか、と言ったその時の状況をよく知っていたということであります。事件そのものの善悪に関しては別問題として、ピラトの妻は主人のしていることをよく知って、主人を助け、できるだけ正しい裁判をするように願っていたのでしょう。

 彼女がどうしてこの場合、キリストは義人であることを、こんなにはっきりと、知っていたのでしょうか。わたしたちにはその原因は分かりません。たぶん、彼女はイエス様のご生涯を聞き、知っていたのか、法廷に連れ出されたもうた前後の関係をよく調べたりした結果として、そのことが分かったのかも知れません。

 総督のピラトでさえ、イエス様には何の罪もないと、裁判の中で何度も主張しています。18節を見ていただきますと、分かっていただけますように、祭司たちがイエス様を総督に引き渡しましたのは、彼らの妬みのためであったのです。このことを、ピラトはよく知っておりました。

 とにかく、ピラトの妻は、イエス・キリストが義人であると確信しまして、主人が裁判で、もしも誤った判決を下したら大変なことになると考え、急いで使いの者を送り、自分の思うところを主人に告げたのでありましょう。しかし、彼女からの伝言は、十分に意を尽くしたものとは言えないように思います。と申しますのは、彼女がその日、非常に恐ろしい、心に不安を感じさせる夢を見ただけなのです。その夢の内容については19節の使いのものの伝言からは、語られてはいないからです。恐らく、その夢の内容は余程重大な意味をもっていたのでありましょう。

 それで、彼女は“キリストのためにさんざん苦しみましたから、あの義人には関係しないで下さい”と、主人に進言せずにはおれない心の不安が、きっと彼女の心にあふれたのでしょう。

 このように、ピラトの妻の場合、法廷に立ち、人を裁く自分の主人を、判決に誤りを犯さぬように、正しい方向に導こうと一生懸命に努力することは、妻として主人への果たすべき第一義的な責任を果たしているものと思います。わたしたちは、自分の夫が勤めている役所や、会社や、学校で、あるいはまた、主人自身が商売のことで、いろいろな問題や、悩みに遭遇し、苦しんでいる時、妻として真心から愛と同情をもって夫とともに話し合い、助け合って行くことこそ、夫婦が当然取るべき生活態度であると考えます。

 もしここで、ピラトが妻の言葉に耳を傾けて、彼女の言葉に従い、正しい判断裁判を下しておりましたら、彼は決して、イエス様を十字架につけるような、愚かな失敗はしなかったことでしょう。また、極悪非道の悪人のように、世間の人々から蔑まれたり、惨めな死に方をしなかったことでしょう。

 この話から教えられますことは、わたしたち夫婦はお互いに、神様のお導きに従って、どのようなことであれ、すべての問題や悩みを、キリスト者として、祈りによって解決し、助け合っていかなければなりません 。さもなければ、わたしたちは、滅びの道へと足を踏み外し、恐るべき方向に行くということを、強く教えられているのです。

 

 ポーリン・マカルピン著

(つのぶえ社出版)この文章の掲載は「つのぶえ社」の許可を得ております。尚、本の在庫はありません。

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
ブログ内検索
カウンター
★ごあんない★
毎月第一日更新
お便り・ご感想はこちらへ
お便り・ご感想くださる方は下記のメールフォームか住所へお願いいたします。お便りは「つのぶえジャーナル」の管理人のみ閲覧になっています。*印は必須です。入力ください。
〒465-0065 名古屋市名東区梅森坂4-101-22-207
緑を大切に!
お気持ち一つで!
守ろう自然、育てよう支援の輪を!
書籍紹介
    8858e3b6.jpg
エネルギー技術の
 社会意思決定

日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
 定価(本体5200+税)
=推薦の言葉=
森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授

本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
 共著者・編者
鈴木達治郎
電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
寿楽浩太
東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本

      d6b7b262.jpg
教会における女性のリーダーシップ
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント 
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
217ff6fb.jpg 








「緑のまきば」
吉岡 繁著
(元神戸改革派神学校校長)
「あとがき」より
…。学徒出陣、友人の死、…。それが私のその後の人生の出発点であり、常に立ち帰るべき原点ということでしょう。…。生涯求道者と自称しています。ここで取り上げた問題の多くは、家での対話から生まれたものです。家では勿論日常茶飯事からいろいろのレベルの会話がありますが夫婦が最も熱くなって論じ合う会話の一端がここに反映されています。
定価 2000円 

b997b4d0.jpg
 









「聖霊とその働き」
エドウイン・H・パーマー著
鈴木英昭訳
「著者のことば」より
…。近年になって、御霊の働きについて短時間で学ぶ傾向が一層強まっている。しかしその学びもおもに、クリスチャン生活における御霊の働きを分析するということに向けられている。つまり、再生と聖化に向けられていて、他の面における御霊の広範囲な働きが無視されている。本書はクリスチャン生活以外の面の聖霊について新しい聖書研究が必要なこと、こうした理由から書かれている。
定価 1500円
 a0528a6b.jpg









「十戒と主の祈り」
鈴木英昭著
 「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
定価 1800円
おすすめ本
4008bd9e.jpg
われらの教会と伝道
C.ジョン・ミラー著
鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
定価 1000円
おすすめ本

0eb70a0b.jpg








さんびか物語
ポーリン・マカルピン著
著者の言葉
讃美歌はクリスチャンにとって、1つの大きな宝物といえます。教会で神様を礼拝する時にも、家庭礼拝の時にも、友との親しい交わりの時にも、そして、悲しい時、うれしい時などに讃美歌が歌える特権は、本当に素晴しいことでございます。しかし、讃美歌の本当のメッセージを知るためには、主イエス・キリストと父なる神様への信仰、み霊なる神様への信頼が必要であります。また、作曲者の願い、讃美歌の歌詞の背景にあるもの、その土台である神様のみ言葉の聖書に触れ、教えられることも大切であります。ここには皆様が広く愛唱されている50曲を選びました。
定価 3000円

Copyright © [   つのぶえジャーナル ] All rights reserved.
Special Template : シンプルなブログテンプレートなら - Design up blog
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]