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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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97f25181.jpeg 「ローマ人への手紙」研究 (103)
 第57課 異邦人の召命とユダヤ人の拒否
       9章1~11章36節(続)
F 神のユダヤ人拒否は最終的なものではない。何故なら、彼らの多くの者がキリストへ立ち帰るからである。
       11章11~36節 (15)

 「兄弟たちよ、あなたがたが知者だと自負することのないために、この奥義を知らないでいてもらいたくない。一部のイスラエル人がかたくなになったのは、異邦人が全部救われることに至る時までのことであって、・・・」(25節)。

 ここの箇所をめぐる大問題は、これが未来におけるユダヤ人の集団的な回心を語っているかという点です。C・ホッジは、ここの解釈には多くの見解があることを述べてから、しかし要するに二つの見解に還元されると言っています。
(1) 第一の見解は、この箇所はユダヤ人の未来における全体的な回心を述べているのではなく、彼らの盲目性は全体的なものではなく、異邦人が救われつつある間は、かれらユダヤ人のうちのいくらかが継続して回心していくことを述べているに過ぎないとするものです。
(2) 第二の見解は、パウロはここで、将来、ユダヤ人たち全体のキリストへの回心があるが、それは異邦人があまねく救われるまでは起こらないだろうと言っているのだとするものです。

 ホッジは、前者は宗教改革の頃まで、一般に行われていた見解であり、当時の千年王国論者たちの極論に反駁しようとした学者たちが、反対に極端な論をとるに至って、この箇所の預言的性格をまったく無視してしまっていると述べています。ユダヤ人の心は極端にかたくなになっていたので、その回心は不可能であると断言し、さらに「ローマ人への手紙からこのような行き過ぎを捏造するものである」と付言したマルチン・ルーテルの言葉をホッジは引用しています。

 ホッジは、後者の見解は宗教改革の時代を除けば、キリスト教史のすべての時代において、あまねく取り上げられた見解であると断言し、この見解こそ正しいと述べています。この見解を支持し、ホッジはこの解釈は最も文脈に合致しているとして、ユダヤ人たちは拒否されたと同じ意味において、すなわち、集団として回復されるべきことは明らかであるとしています。
 このことは異邦人と並行して回心する少数のユダヤ人たちだけで成就されることではないのです。パウロが「この奥義を知らないでいてもらいたくない」という言い方をして、このことが重大な出来事であると述べていることは明らかです。もしパウロが何か新しい特に重大なことを語っているのでなければ、彼はこのような言い方を取らないからです。
 「少数のユダヤ人たちのじょじょの回心であるならば聖書的な用法における「奥義」(mystery)では決してない」。ホッジは「奥義」と言う語は、新約においては、一般に近代的な意味では用いられていないと言っています。すなわち、「私たちの理解を超えた事柄」の意味ではなく、「或る隠されたこと・知られていないこと」の意味です。神が啓示されていない御意図であるからであろうと、未来のことであろうと、また、私たちの理解を越えているからであろうと、とにかく「隠れた事柄」というのが、この意味なのです。
 パウロは「一部のユダヤ人が盲目でかたくなになっているのは、異邦人が全部救われるに至るまでのことである」ということを「奥義」として述べているのです。何故かと言えば、このことは神の特別啓示によってのみ、知れることであるからです。だから、11・25におけるパウロの「奥義」という語の用法は、彼の時代に既に起こりつつあるユダヤ人の個人的な回心より、はるかに重大なことを語っていると言うことを示しているのです。

「あなたがたが知者だと自負することのないために」。これがパウロが述べようとすることの理由です。彼が異邦人キリスト者に対して、彼らが傲慢になって、神がユダヤ人を永久に退けられたのだと考えることのないように警告しているのです。

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 玉木  鎮訳
 (日本キリスト改革派引退教師)
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