ローマ人への手紙研究

　「ローマ人への手紙」研究　（40）

　第３３課　義認に続くキリスト者生活

　　　　　　　６章１節～８章３９節（続）

　
D　この地上の生涯において、キリスト信者が励まされる理由

　　　　　　　８章２９節～３９節（続）

　　　私たちの主イエス・キリストにある神の愛より私たち引き離すものは何もない」。

　　　　　　　８章３５節～３９節

 

　「だれが、キリストの愛から私たちを離れさせるのか」。

　ここで言われているのは、キリストに対する私たちの愛ではなく、私たちに対するキリストの愛であることはきわめて明白です。パウロはキリスト信者を励まして、確信を植え付けようとしています。キリストに対する彼らの愛を語ることは、この箇所においては、パウロの目的に役立つものではありません。

　それどころか、それは彼らを励ますことにはなり得ず、むしろ、彼らは失望を感じさえするのです。その理由は、キリストに対する彼らの愛は、しばしば弱く不徹底だからです。しかし、キリストの私たちに対する愛は、これとは全く違うのです。そこには弱さも不徹底も中だるみも決してないのです。それは変わることはあり得ないことなのです。

　
キリストは私たちの身代わりとして苦しみを受け、死に、復活された人々を永遠に愛されるのです。そして、この事実こそ、キリスト信者が永遠にキリストと一体であることを保証しているのです。何故なら、キリストの愛は必ずその目的を遂げる愛だからです。

 

　多くのキリスト信者が直面する大きな困難は、彼らが、キリストまたは神が彼らを愛しておられると言うことを自分自身に説得することができないと言うことです。そして、彼らが神の愛を確信することができない理由は、彼らが神から受ける資格がないということを、彼ら自身が知っているからです。それどころか、彼らは最大限において愛されない者であることを知っているからです。

　無限に聖い神が、罪に汚れ、傲慢で、自己中心的で、不平が多く、感謝もなく、不従順な者たちを、どうして愛することができるのでしょう。これこそ正に信じ難いことなのです。しかし、それこそ正に、平和と希望の条件としてのみならず、救いの条件として、私たちが信じるように要求されていることなのであります。

　もし、神の慈しみと愛を受ける望みが、私たちの善良さや何か優れた点に基づいているとすれば、その望みは偽りものなのです。私たちが信じなければならないことは、神の愛は値なしに与えられるものであり、また神秘的なものであって、その対象に何か好ましいことがあるからと言った理由で与えられる性質のものでは決してないのです。

　要するに、聖書の中でよく言われているように、それは両親の子供に対する愛に喩えられているのです。母の愛はその対象である子供に何か良い点があるかどうかとは無関係であり、時には、その子供に何か欠点がある場合でも、時に注がれるものであります（チャールズ・ホッジ）。