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ビルマ
戦犯者の獄中記 (37) 遠山良作 著
昭和22年
4月11日
―ハンスト計画の失敗―(1)
殴打された事件解決のために、「ハンスト」を行うべきであることを独房にいる12名の者に呼びかけた。少なくとも7名以上の者が賛成してくれるものと思っていたのに、賛成者は橋本さん一人のみであった。この棟には現在29名いるのに、僅か3名で「ハンスト」を行っても負けであることは火を見るより明らかである。残念ながらこの計画を断念するより致し仕方がない。信じていた友に裏切られた思いである。
C君は運動の時に「遠山君よ。断食はどうしたよ」と問うた。
私は「3名ではどうにもならないから、中止です」。
C君「3名でやったらいいではないか」と言う。
私たちは死ななければならないかも知れないと、真面目に考えているのに、余興でもやるような、人を馬鹿にした言葉に私は胸の血は逆流する思いである。その思いをぐっとこらえて、平静をよそおい、「いやだめだよ」とやっとひと言返事ができた。
房に帰って、田室さんに憤りの言葉でそのことを話した。
彼は「それで良いのだ。分からない者には百言を費やしても、理解できないからなあ」と言う。
橋本さん宛てに次のことを書いて送った。
「昨日計画しました「ハンスト」は完全に失敗いたしました。今まで信じていた友に裏切られたようで口惜しく思います。友なんていざという時には、当てにならないとの思いで、無念でなりません。しかし、この事件で貴兄という友を得たことで満足です。
私は少なくとも7名位の同調者があれば「ハンスト」を実地すべきだと思っていたのに、貴兄は5名あれば決行すると言う。貴兄の意気込みには敬服します。
今後貴兄が死を賭して闘争するという時は、私は必ず協力するでしょう。しかし他の人が行う時は決して協力しないでしょう。
貴兄の刑は僅か3年です。後2年も辛抱すれば内地に帰ることが出来ます。貴兄の戦場は祖国日本です。祖国に帰って働いて下さい。私はそれのみ祈っております」。
この文章の転載はご子息の許可を得ております。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
いのちのことば社
スーザン・ハント
「緑のまきば」
「聖霊とその働き」