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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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 解説 ウエストミンスター信仰告白 (24)

   岡田  稔著

  (元神戸改革派神学校校長)

  第11章 義認について 

1 神は、有効に召命した人々を、また価なしに義とされる(1)。それは、彼らに義を注入することによってではなく、彼らの罪をゆるし・またその人格を義なるものとして認め受け入れることによってであり、彼らの中で・または彼らによってなされる何事のゆえでもなくて、ただキリストのゆえだけによる。信仰そのもの・信ずる行為・あるいはその他どんな福音的服従を彼ら自身の義として彼らに転嫁することによるのでもなくて、かえってキリストの服従と償いを彼らに転嫁し(2)・彼らが信仰によって彼とその義とを受け・それに寄り頼むことによる。この信仰も、彼ら自身から出るものではなく、これも神の賜物である(3)

  1 ロマ8:30、ロマ3:24
  2 ロマ4:5-8
コリント5:19,21、ロマ3:22,24,25,27,28、テトス3:5,7
    エペソ1:7、エレミヤ23:6
コリント1:30,31、ロマ5:17-19
  3 行伝10:44(*)、ガラテヤ2:16、フィリピ3:9、行伝13:38,39、エペソ  2:7,8
     *行伝10:43が正しい

 ローマ人への手紙8章30節に「そして、あらかじめ定めた者たちを更に召し、召した者たちを更に義とし、義とした者たちには、更に栄光を与えてくださったのである」とあるが、これは、予定と召命と義認と救済の完成を述べた言葉である。それは、わたしたちの救いの始めから完了するまでの順序であり、これら一切は、神の恵みの働きである。

 特に義認論は、ローマ・カトリック的セミ・ペラギュス主義やアルミニアン的神人協力主義に反対して「これも神の賜物である」と結論されている限り、救いにおける恵みの独占的活動を強調することによって宗教改革の精神を鮮明に告白しているところである。

 この一項の中には、ローマ・カトリック教会の「注入恩恵論」または「義化論」。アルミニアンの「神人協力説」または「福音的服従論」の他に、「義認の律法を無視した理由、根拠のない宣告」と考える誤謬をも排斥しつつ、義認における信仰の役割と性質とを規定する告白が含まれている。

 すなわち、神はキリストの義を根拠として、それを罪人のものと認め(これが転嫁である)、何ら罪人自身の実質的変化や行為を、前提や理由にせず、み旨のままに主権的に罪を赦されるのであり、信仰は、それを受ける手であり、また、それ自身神の賜物なのであるという告白である。

 

2 このようにキリストとその義を受け、これに寄り頼む信仰が、義認の唯一の手段である(1)。しかもそれは義とされる人物の中に孤立していることはなく、常にすべて他の救いの恵みを伴っており、かつ死んだ信仰でなく、愛によって働く(2)

  1 ヨハネ1:12、ロマ3:28、ロマ5:1
  2 ヤコブ2:17,22,26、ガラテヤ5:6
 

二 これは、ヤコブの手紙2章の所説とガラテヤ人への手紙などの主張との関係を明確にするための付言であろう。

 

3 キリストは、彼の服従と死によって、このように義とされるすべての人の負債を十分に支払い、彼らのために、み父の正義に対して、当然で真実で十分な償いをされた(1)。とはいえ、キリストはみ父によって彼らのために与えられたのであって(2)、その服従と償いとは、彼らの身代りとして受けられたものであり(3)、ともに価なしにであって、彼らの中にある何事のゆえでもなかったのであるから、彼らの義認は、全くの自由な恵みによるものである(4)。それは、神の厳正な正義と豊かな恵みが、ともに、罪人の義認においてあがめられるためである(5)

  1 ロマ5:8-10,19
テモテ2:5,6、ヘブル10:10,14、ダニエル9:24,26
    イザヤ53:4-6,10-12
  2 ロマ8:32
  3 
コリント5:21、マタイ3:17 、エペソ5:2
  4 ロマ3:24、エペソ1:7
  5 ロマ3:26、エペソ2:7
 

三 ここは一項の中で言われた点の再言であるとともに、最も重大な一点のより鮮明な告白である。すなわち、義認の一面は、キリストの完全な律法の要求への満足であり、もう一つの面は、罪人の無代価の義認である。この二つの面があるからこそ、神の義認と恵みとがともに発揚されているのである。救いを単なる神の愛の現われと見るのは誤りである。義認は神の律法を無視する不法行為ではない。

 なお、一項にもあるように、律法に対するキリストの満足が、服従と死(または償い)と言われるのは、やはり改革派神学の特色の一つであって、キリストが単にアダムの犯罪の刑罰を償われたばかりでなく、アダムの失敗した業の契約の完全履行、すなわち、神の律法に立派に服従された点も、キリストの義の内容の大切なポイントである。前者を消極的服従と言い、後者を積極的服従と言う。 

   **********

 この文章は月刊「つのぶえ」紙に1951年(昭和26)10月号から1954年(昭和29)12月号まで書き綴ったものを単行本にしたものです。「つのぶえジャーナル」掲載には、つのぶえ社から許可を得ています。「ウエストミンスター信仰告白」は日本基督改革派教会出版委員会編を使用。

単行本購入希望者は「つのぶえ社」に、ご注文下さい。¥500

465-0065 名古屋市名東区梅森坂4-101-22-207「つのぶえ社」宛

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