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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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さんびか物語 (7)

    (広く愛唱されている50曲)・・・6     

 ポリン・マカルピン著

          (米国南長老教会婦人宣教師) 

讃美歌66番

 聖なる、聖なる、聖なるかな

<神様のみ言葉> 

「聖なる、聖なる、聖なる、万軍の主。その栄光は全地に満つ。その叫ぶ声のために、敷居の基はゆるぎ、宮は煙で満たされた」。

              =イザヤ書6章3~4節=

 聖なる、聖な、聖なるかなの讃美歌は世界に比べるものなき地位を占める、礼拝の歌と言われているものです。多分この讃美歌が歌われない教会は、世界のどこにもないと思われるほど有名であり、多くの人々に歌われているものでございます。

 

 原作者レジナルド・ヒーバーは1783年4月21日、イギリスのマルパスで裕福な牧師の家庭に生まれました。彼は小さい時から詩才をあらわし、17歳の若さでオックスフォード大学に入学いました。彼はそこで、二つのすぐれた詩を書き、賞を得ました。そうしてイギリス中で詩人として知られるようになりました。

 ヒーバーは1807年にホドネットという辺ぴな村の教会の牧師に任命されました。この教会は以前、お父さんの教会でありまして、そういう関係で16年間この教会で意義深い、しかも楽しい牧会の時を過ごしました。

 ヒーバーはホドネット在任中に讃美歌を57曲作詞しましたが、この57曲がみな今日に至るまで歌われているのは、彼の作品のすぐれた証拠と言えましょう。彼が讃美歌を書き始めたきっかけとなったのは、当時の教会内の讃美歌集の不足でした。また自分の教会の信者がもっと元気を出して歌えるように、ヒーバー自身が新しい讃美歌を次から次へと教会カレンダーに合わせて作詞しました。

 この讃美歌66番は、当時教会カレンダーで指定されている三位一体の日のために書かれたものです。しかし、今日では、あらゆる朝の礼拝に用いられています。ヒーバーは若い時から、インドに興味を持っていました。1819年に作詞した北のはてなるこおりの山(214番)の原作には、インドやセイロンなどの国名まで出ています。この讃美歌は最も有名な外国伝道の讃美歌と言われています。

 1822年(ヒーバー40歳の時)、彼はようやくインドのカルカッタの司教に任命され、3年間なれない猛暑と闘いつつ職務に励みましたが、残念なことにその仕事の重荷があまりにも重かったのか、彼の健康は衰え1826年4月3日ヒーバーは43歳の若さで心臓麻痺で急死しました。

 ヒーバーはウオッツ、ウエスレー、モンゴメリー、ボナーと共にイギリスの5大讃美歌作者と言われています。或る人は、彼の讃美歌の優美さや文学的な美しさを称賛されるかもしれませんが、私が一番素晴らしいと思いましたのは、彼の伝道に対する熱心さであります。讃美歌214番はそのよい実例の一つと言えますのでご参考になさって下さい。

<214>

4 大君イエスよ み代をしらす

  時のくるまで いよよ励み

  救いのひかり たかくかかげ 

  あまねく照らせ 四方の国に。

ヒーバーの讃美歌集は死の翌年(1827)未亡人アミリアによって発表され一般に普及しました。

 

讃美歌66番の曲NICAEAは、ジョン・B・ダイクスの作曲ですが、ヒーバーの威厳のある歌詞に対して少しも劣るところのない素晴らしい曲といえます。この曲はダイクスの他の作品と一緒に1861年に‘Hymns Ancient and Modern’という讃美歌集に初めて発表されたものです。

ニケヤというのはトルコにあった大昔の町であって、紀元325年にこの町でキリスト教会の大切な会議があり、三位一体の神という教理がキリスト教の根本的な教理として決められました。

ウエストミンスター小教理問答書において「三位一体の神について」、問5と問6は次のように教えています。

問5 唯一の神のほかに神々があるか。

答  唯一の神がいますだけで、それは生けるまことの神である。

問6 神にはいくつの人格があるか。

答  神には、三つの人格がある。それは父と子と聖霊であって、この三つは一つの神で、本体は同一であり、力と栄光は同等である。

 

このような神観に立つ三位一体の神を中心に歌っています。この讃美歌を作曲したダイクスは、わざわざNICAEAという曲名をつけたのです。ジョン・B・ダイクス(1823~1876)はイギリス人で、祖父を牧師に、父を銀行家にもって生まれました。ダイクスはケンブリッジの聖キャサリン大学を卒業後、牧者となり、主にダラム市でその生涯を過ごしました。

ダイクスは、音楽に対しては天才的才能を持っていたのでしょう。わずか10歳のころから教会のオルガニストとして活躍しています。

大学時代には、音楽クラブの優れたリーダーとして、その才能を生かしています。1861年(彼38歳)には、ダラム大学から、音楽博士の学位を受けています。翌62年には、ダラム市の聖オズワルド教会の「教区牧師」に任命され、53歳で亡くなるまで牧会を続けました。その間に、礼拝学に関する論文や、説教集や、また300曲にのぼる讃美歌を作曲しています。

また、英国讃美歌史上の歴史的事業である‘Hymns Ancient and Modern’の編集にも重要な役割を果たしています。

彼の特色は、保守的な英国讃美歌の伝統を破って、当時の通俗的歌曲に基づいた新しい形の讃美歌を書いた点にあります。彼の曲が英国的でありながら、民謡的色彩をもち、しかも大衆的な性格を持っていたということです。讃美歌が、一般大衆の心にとけこむことは、礼拝用讃美歌として、特に大切でありますが、彼の讃美歌には、貴族的な気品と大衆性を持っていたこということは特筆されることでしょう。

日本の1964年版の讃美歌には、ダイクスの作曲されたものが18曲ほどあります。それらは、とても美しいものであり、多くの人々に愛唱されています。

<66>

 1 聖なる、聖なる  聖なるかな、

  三つにいまして  一つなる

  神の御名をば   あさまだき

  おきいでてこそ  ほめまつらん

2 聖なる、聖なる  聖なるかな、

  神のみまえに   聖徒らも

  かむりをすてて  ふしおがみ

  みつかいたちも  み名をほむ。

3 聖なる、聖なる  聖なるかな、

  罪ある目には   見えねども

  みいつくしみの  満ちたれる

  神のさかえぞ   たぐいなき。

4 聖なる、聖なる  聖なるかな、

  み手のわざなる  ものみなは

  三つにしまし   一つなる

  神の大御名    ほめ奉らん。

 

この讃美歌の素晴らしい原作は、余りにも優れたものであるために、他の国語に翻訳するのは非常にむずかしいことと思います。言葉の独特な美しさと訳文では中々味わい知ることは出来ません。

1節ですが、原作では作詞者は小教理問答書の問4に言われていますように(問4 神はどのような方であるか。 答 神は、その存在と知恵、力、聖、義、善、真実において無限、永遠、不変の霊である)、神様を聖なる神、また三位一体の聖き神であられると歌うと共に、神様を主なる神、全能者、あわれみ深い神、偉大な神と歌っています。

つまり神様とはどのようなお方であるかを、この1節で美しい言葉をつらねてヒーバーは歌っています。私たちも朝な夕なにこの聖なる神様に賛美の歌声を捧げるのは当然となりたいものですし、そうあるべきです。 

2節では、場面は天国に移されています。使徒ヨハネが黙示録によって見聞きしたことが歌われています。即ち、「たちまち私は御霊に感じた。すると見よ。天に一つの御座があり、その御座に着いている方があり、また、御座の周りに24の座があった。これらの座には、白い衣を着て、金の冠を頭にかぶった24人の長老たちがすわっていた。。御座の前は、水晶に似たガラスの海のようであった。御座の中央と御座の回りに、前もうしろも目で満ちた四つの生き物がいた。。彼らは、昼も夜も絶え間なく叫び続けた。『聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな。神であられる主、万物の支配者、昔いまし、常にいまし、後に来られる方』」。また、これらの生き物が、永遠に生きておられる、御座に着いている方に、栄光、誉れ、感謝をささげるとき、24人の長老は御座に着いている方の御前にひれふして永遠に生きておられる方を拝み、自分の冠を御座の前に投げ出した」(ヨハネの黙示録4:2~10)。

このようなヨハネの黙示録の言葉を背景にして、讃美歌の2節をお味わいください。神様のみ前に冠を捨てて伏し拝んだ聖徒たちは、水晶に似たガラスの海の回りで金の冠を投げ出して、み座についている方の前にひれ伏して、永遠に生きておられる方を拝んだ24人の長老たちを意味しています。また、原作にありますように、このお方は昔いまし、常にいまし、のちに来られる唯一のまことの神様であると歌っています。つまり、再臨のキリストへの待望と讃美の歌と言えます。

3節では、私たちが神様のたぐいなきみ栄えを見ることの出来ない理由は、罪のために私たちの目が暗くなっているからです、と歌っています。また唯一の神様のみがそのみ力にも、愛にも、聖にも、清さにも、いつくしみにも完全であることを歌っています。

4節では、作者は今一度神様を聖なる神、主なる神、全能なる神、いつくしみ深い神、三位一体の神と言って讃美を捧げると共に神様のみ手の業になるもの-地にあるもの、天にあるもの、海にあるもの-すべて造られたものが神の大御名をほめまつるようにと歌っています。私たちも心から讃美の歌を主に捧げましょう。「わがたましいよ。主をほめたたえよ。私のうちにあるすべてのものよ。聖なるみ名をほめたたえよ。」=詩編103篇1節=

 =「さんびか物語」は「つのぶえ社」の出版(第一刷1974年、第二刷1992年)で、出版社の許可を得て掲載しています。本の購入を希望される方は、「つのぶえ社」までご注文ください=

          

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