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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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さんびか物語 (9)

    (広く愛唱されている50曲)・・・8     

 ポリン・マカルピン著

          (米国南長老教会婦人宣教師) 

讃美歌85番

 主の真理は           

<神様のみ言葉>

「しかし主よ。あなたは、あわれみ深く、情け深い神。怒るのにおそく、めぐみとまことに富んでおられます」。

              ~詩篇86編15節~

 日本語の最初の讃美歌は1872年、横浜で開かれた第一回宣教師会の時に、宣教師ジェームス・バラの紹介した二つの翻訳の歌であると言われています。

その一つは、ジョーナサン・ゴルベ先生の「よい国ありますたいそう遠方に」(490番のあまつみくには)と、いま一つはミス・クロスビー訳の「耶蘇我を愛す左様聖書申す」(461番の主われを愛す)でした。

 この宣教師たちの直訳は、日本語的ではありませんが、その宣教師たちの持っていた深い信仰と伝道に対する熱心と勇気は素晴らしいものと言えるでしょう。日本語学校はもちろんのこと辞典も先生もいなかった当時、よくも難しい日本語を話し、翻訳したものと、私の経験からも感心させられます。

 ともあれ、この最初の二つの讃美歌が日本語の讃美歌のスタートとなって、1874年には8種の歌集が、それから10年の間に多数の小歌集が出版されました。歌詞もそのたび毎にととのい歌数も次第に多くなってまいりまし(一致・組合派)、「基督教讃美歌」(バプテスト派)、「聖公会讃美歌」(聖公会)、などの諸讃美歌集の基礎となりました。さらに1903年には、初めて各派共通の讃美歌が出版されてから、これがまた1954年版讃美歌の基礎になりました。

 讃美歌85番 「主の真理は」の素晴らしい歌詞の作詞者は不明ですが、この歌は1890年に「新撰讃美歌」から1090年の明治版「讃美歌」に編入された歌であると言われています。

 この讃美歌では、神様とはどのようなお方であり、また、神様は私たちに対するはかり知れない慈しみを力強く歌っています。ただ残念に思いますのは「新撰讃美歌」の作詞者が1954年版の場合、不明になっていることで、何とかして知りたいと思います。

 

 曲のLEONIはイギリスのウエスレー派の教師トーマス・オリバース(1725~1799)の作品で、オリバースがある日、ロンドンのユダヤ教大礼拝堂を訪ねたところ、そこで美しいヘブル語のクリードを聞きました。これは、YIDGALと言われているもので、13節もあるユダヤ教の頌栄のようなもので、今でもユダヤ教の礼拝で歌われているものだそうです。

 オリバースはそのクリードを聞いて非常に感動して、是非その楽譜を手に入れたいとその独唱していたユダヤ人レオニ(英名マイアー・ライアン)に頼みました。それはオリバースはこの美しい曲をキリスト教讃美歌にも取り入れたいと思ったからでした

 その結果、YIDGALの編曲として‘The God  of Abraham Praise’という歌詞を作りました。これは1781年にウエスレー派の讃美歌Sacred Harmonyに採用されてから、広く、そして多くの人々に愛唱されるようになりました。この曲名は独唱者レオニの名前に因んでつけたものです。

 <85>

1 主の真理は 荒磯の岩

  さかまく波にも などか動かん。

2 主のめぐみは 浜のまさご

  その数いかでか 計りうべき。

3 うつりゆく世 さだめなき身

  ただ主に頼りて 安きをぞえん。

4 つもれるつみ ふかきけがれ

  ただ主に仰ぎて 救いをぞえん。

 父なる神はどのようなお方でしょうか。神様が雲の中にあって降りてこられ、モーセの前を通り過ぎる時、ご自分について宣言されたお言葉をまずお考えください。「主、主は、あわれみ深く、情け深い神、怒るのにおそく、恵みとまことに富み、恵みを千代も保ち、咎とそむきと罪を赦す者、罰すべき者は必ず罰して報いる者・・・」(出エジプト34:6~7)と言われました。

 そうです。憐れみと情け深い神であり怒るのにおそく、恵みとまことに富み給う神様であられます。

 1節では、主のまことを中心にして歌っています。主のまことは荒磯(ありそ)の岩のように、逆巻く波にも決して動くことのない、たしかな、しっかりした、不動の岩のようであると、その不変性を岩にたとえています。

 詩人ダビデは「私のたましいは、黙ってただ神を待ち望む。私の救いは神から来る。神こそ、わが岩。わが救い。わがやぐら。私は決してゆるがされない」(詩編62:1~2)と歌いましたように、私たちも決してゆるがされないように、まことの岩なる主を、わがやぐらといたしましょう。

 2節では、主の恵みについて歌っています。その恵みの数々は、浜辺の真砂のように限りなく、数えることも計ることも出来ないほどに豊かであります。「わがたましいよ。主をほめたたえよ。主のよくしてくださったことを何一つ忘れるな。主は、あなたの全ての咎を赦し、あなたのすべての病をいやし、あなたのいのちを穴から贖い、あなたに、恵みとあわれみとの冠をかぶらせ、あなたの一生を良いもので満たされる」(詩編103:2~5)とダビデは神様の恵みに対して、感謝の歌を捧げています。

 私たちも、神様の多くの恵みに対して感謝の心を持たなければなりません。特に主イエス・キリストの贖いによって、私たちのすべての咎が赦されているのは、どんなに大きな惠みでありましょう。これ以上の恵みがイエス様を外にしてどこにありましょう。

 このように讃美歌85番の前半は、まことのみ神、恵みの神、とこしえの神について歌われてきましたが、後半では、前半とは対照的な移り行くこの世、定めなき身、とらえて放さない罪と汚れ、はかない人生について歌っています。光から暗闇に移された望なき思いは、神様から離れている人間の真に姿でありますが、このような暗きに迷う者、罪、咎、けがれ、人生の困難や悲しみ、これらの問題も、実は正しい解決が与えられていると作者はっきりと示しています。

 その正しい解決とは何でしょうか。それはただ主に頼ること’‘ただ主を仰ぐことであります。主に頼る人は必ず安らぎを得ることが出来ます。主イエス・キリストは「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしはあなたがたを休ませてあげます。・・・。わたしから学びなさい。そうすればたましいに安らぎが来ます」(マタイ11:28~29)とお約束して下さいました。

 また、主を仰ぎ見なさいは自分の罪を認識して、それを悔いて、改めて、主からの赦しを乞い願う者には、その信仰の故に救いが得られます。

 「地の果てのすべての者よ。わたしを仰ぎ見て救われよ。わたしが神である。ほかにはいない。・・・。と万軍の主は仰せられる」(イザヤ45:22、45:13)。

 (おりかえし)

 くすしきかな  あまつみ神

 げに尊きかな  とこしえの主。

 =「さんびか物語」は「つのぶえ社」の出版(第一刷1974年、第二刷1992年)で、出版社の許可を得て掲載しています。本の購入を希望される方は、「つのぶえ社」までご注文ください=

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