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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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さんびか物語・・・11・・・

    (広く愛唱されている50曲)・・・10     

 ポリン・マカルピン著

          (米国南長老教会婦人宣教師) 

 讃美歌119番

  羊はねむれり           

<神様のみ言葉>

「さて、この土地に、羊飼いたちが、野宿で夜番をしながら羊の群れを見守っていた。すると、主の使いが彼らのところに来て、主の栄光が周りを照らしたので、彼らはひどく恐れた」。

              ~ルカの福音書2章8~9節~

 この讃美歌は主イエス・キリストの降誕を歌ったもので、1954年版の讃美歌にはイエス・キリストのご降誕を祝う歌が、24曲ほどあります。その内のあるものは、非常に古いものもありまして、94番の久しく待ちにしの歌詞は12世紀のラテン語の讃美歌から訳されたものであります。面白いことに、このクリスマスの讃美歌の中で一番新しい二つの曲はどちらも日本の作曲家鳥居忠五郎によって書かれたものです。

 1941年に作曲された119番の曲KORINもその一つです。このKORINは、日本人の手になる讃美歌の中で最高のものといえましょう。この曲は、フランスの古いキャロルに似た素朴な美しさの中にも、非常に個性的な曲であり、いかにも日本人の作品らしいものと言えます。

 

 讃美歌119番の作曲者・鳥居忠五郎は、1898年2月4日に北海道の伊達紋別で生まれました。1921年に明治学院神学部を卒業し、1925年にさらに東京音楽学校の声楽科を卒業しました。同時に、彼は霊南坂教会聖歌隊の指揮者でもありました。

 また、東京学芸大学の前身である東京府立青山師範学校時代から長い間、声楽主任教授を務めました。現在は、聖徳学園短期大学教授、キリスト教音楽学校理事、明治学院評議委員、教団子供さんびか委員などの要職にあって活躍されています。

 この曲は、三輪源造の羊はねむれりというキリストご降誕の歌詞に対して1941年に作曲されて、「青年讃美歌」に発表されたものです。

 

 讃美歌119番の作詞者三輪源造は、1871年に新潟県に生まれ、同志社神学校を卒業し、その後、松山女学校の教師を経て、同志社女子専門学校の教授となり、晩年までその職にとどまりました。彼は国文学に造詣ふかく、明治版や昭和6年版の讃美歌の編集の委員、または顧問として力を尽くしています。また、この讃美歌集のために、幾つかの創作の歌を寄贈したそうです。

 羊はねむれりは、明治版「讃美歌」第2編、1915年に発表され、その後、「青年讃美歌」に1941年に納められました。彼は1946年に、このを去ったのですが、私たちは、毎年クリスマスになりますと、この宝石のように輝く讃美歌を歌うことができますのは、神様が彼にお与えくださった才能と、神様のお恵みとを忘れることは出来ません。

<119>

1 羊はねむれり 草の床に、

  冴えゆく冬の夜 霜も見えつ。

  はるかにひびくは 風か、水か、

  いなとよ みつかい うたうみうた。

2 まひるにおとらぬ くしきひかり、

  み空のかなたに てりかがやく。

  すくいをもたらす 神の御子の

  うまれしよろこび 告ぐる星か。

3 「あめにはみさかえ 神にあれや、

  つちにはおだやか 人にあれ」と、

  むかしのしらべを 今にかえし、

  うたえや、友らよ こえもたかく。

 

 歌詞をお読みになってお分かりのように、この歌詞の場面は、ユダヤのベツレヘムの村の郊外にある牧場です。そこで羊飼いたちは野宿で、夜番をしながら、羊の群れを見守っていました。冴えたつめたい冬の夜でした。狼やほかの獣から羊を守らなければならない羊飼いたちは眠れませんが、羊はなんの心配もないかのように、草の床に眠っています。

 なんと平和で穏やかな場面でしょうか!これを一つのたとえのようにお考え下さい。神様ご自身は、私たちの羊飼いです(詩編23:1)。また詩編95編7節には「主は、私たちの神、私たちは牧場の民、その御手の羊である」と記されています。しかし、私たちはみな、私たちの牧者である神様からさまよい出て各々自分勝手な道に向かって歩む愚かな羊であります(イザヤ53:6)。

 そのために、不信仰と不安に陥り、いつも思い煩う不幸な日々を送っている者であります。このような私たちをいつも見守っておられるのは神様です。私たちの真の牧者は、決してまどろむことも、眠ることもありません(詩編121:4)。ですから、まことの牧者のみもとに立ち返ろうではありませんか!立ち返ることによってのみ、私たちははるかに響くみ使いたちの歌うメッセージを知ることができます。

 ベツレヘムの郊外の牧場で、羊の群を見守っていた羊飼いたちに主のみ使いが現われ、「主の栄光が周りを照らしたので、彼らはひどく恐れた」と9節にあります。作者が2節で歌っていますように、そのくすしき光は、真昼のようにみ空のかなたで光り輝いていました。み使いが現われると、その光のあまりのまぶしさのために、羊飼いたちは非常に恐れました。

 そこでみ使いは彼らに「恐れることはありません。今、私はこの民全体のためにすばらしい喜びを知らせに来たのです。きょうダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです」と知らせて下さいました。主イエス・キリストのご降誕は、この世の罪を取り除き、暗い世に光り輝くまことの入場であります。

 また、この誕生の日は、彼を信じる全ての者にとりまして、罪よりの救いをもたらす、唯一の喜びの日でもあります。

 作者が歌っていますように、「みすくいをもたらす、神の御子の生まれしよろこび」の日なのです。

 2節の終わりの「星」は東の方から博士たちをベツレヘムまで導いた、あの不思議な輝かしい「星」を意味しているでしょう。ともかく、博士たちが幼な子イエス・キリストのみ前に、素晴らしい捧げ物を捧げましたが、あなたは何をもってみ子の誕生のプレゼントにいたしますか。

 私たちが捧げなければならない「捧げ物」は、主の主、王の王であられるみ子のみ前に心からひれ伏し、礼拝することであります。

 3節では、天の軍勢が現われ、神を讃美して歌った場面を歌い上げています。

「あめにはみ栄えが神にあるように。土にはおだやか、平和が御心にかなう人々にあるように」。

 この讃美の調べを、今こそ、私たちも声高らかに歌いたいものです。主にある人々も、そうでない人も、共にクリスマスの本当の意義を知ってください。神様が私たちのために与えたもうたみ子、また、み子が与えようとしていらっしゃる救いの恵みを心から信じ、受け入れ、共にこの讃美の歌声を神様のみ前に捧げますようお勧めいたします。

   ******************  

この「さんびか物語」は「つのぶえ社」の出版(第一刷1974年、第二刷1992年)で、出版社の許可を得て掲載しています。本の購入を希望される方は、「つのぶえ社」までご注文ください=

  
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