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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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 ビルマ

  戦犯者の獄中記  (49)  遠山良作 著

昭和22年

6月20日

 マカ不思議なところはこの独房である。検査をされて彼等から必要なものを取り上げられると、雑房にいる戦友(容疑者)は直ぐにその品物を整えてくれる。日記を書く鉛筆やトイレットペーパー、それに洗面兼用のバケツ代わりの、かんかんまで作って、食事を運ぶ度に少しずつ差し入れてくれるのである。本当に有難い。獄中の生活とはいえ無くてはならないものばかりである。監視する側の当局はこのことを知っているのか、知らないのか・・・、監視の歩哨たちもあまりやかましく言わない。実に大らかである。われわれ日本人との国民性の違いを改めて知らされた気がした。

 

 6月23日

 ­―戦友の出所­

 今日は戦犯者としての容疑が晴れて戦友が出所する日である。残された者は、私たち戦犯者、起訴中の者、取り調べ中の者の外に少数の残務整理(通訳者たち)の者のみである。今日まで1年半余の独房生活の中にあって、言葉では言い尽くすことの出来ない友情に涙を流したことは数えることは出来ない。空腹でどうにもならない時には、ジャングル野菜(雑草)を汁の中に入れてくれた。孤独と絶望の中に、生きる希望さえ失いがちの私を励ましてくれた友情は忘れることが出来ない。

 この友等が出所するのである。この友のために心から喜び、祝福しなければならないと思えども、今日まで支えてくれた友がいなくなるのである。これから一体俺等はどうするだろうと、不安と寂しさはどうすることも出来ない。心の底に渦巻く醜い己を覗いたような気がする。

 千藤君も今日出所する。彼は私の両親の住んでいる隣村(東野村)の出身者で、この刑務所に入るまでは一面識もなかったが、私が独房生活をしていることを知って、いろいろと御世話になった。耐えられない空腹の時に乾パンや煙草も差し入れてくれた。

 彼は「出所するから、両親宛に伝言があるなら伝える」と言ってくれたので、今日まで書いてきた「トイレットペーパー」の日記を家に届けて頂くことにした。しかし途中検査があって迷惑をかけてはと思ったが、彼は腹にでも巻き付けて持って行くから大丈夫だと言ってくれた。両親への手紙を、食事を運んできた食器の間に隠して持ち帰ってくれた。両親宛に手紙を書くことも、今日が最後かもしれない。

  出所する友に送る

 ビルマの前線で共に戦った友よ 

戦いに敗れた敗者への道は 

高い壁に囲まれた牢獄であった

毎日水の中に米が浮いているような粥

塩汁の中に幾すじかのジャングル野菜

何回も噛んで食べた

人間の生命の強さも知った

今日まで生きられたこともみな友の情けである

ゆるされて帰る友よ

憧れの祖国の山河は

君たちを力強く抱いてくれるであろう

死か生かの戦いの中で知り得た体験はきっと

焼野と化した焦土の中に立って

新しい日本を作ってくれることを信じる

 

ゆるされて 祖国に帰る 戦友達の 歌声高く 獄舎かけゆく

ともがらは みな帰りゆく 今日のわれ 淋しくもあり 嬉しくもある

帰りゆく 友に託せる 獄だより 我が帰る日を 知らせ難くも

手を振りつつ ゆるされてゆく 友がらを 独房にありて 我ら見送る

*この文章の転載はご子息の許可を得ております。

 

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書籍紹介
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 社会意思決定

日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
 定価(本体5200+税)
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東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授

本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
 共著者・編者
鈴木達治郎
電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
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東京大学大学院学際情報学府博士課程
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東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
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東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本

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教会における女性のリーダーシップ
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント 
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
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定価 1500円
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「十戒と主の祈り」
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 「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
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おすすめ本
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鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
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おすすめ本

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