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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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  解説 ウエストミンスター信仰告白 (38)

   岡田  稔著

  (元神戸改革派神学校校長)

第18章 恵みと救いの確信について・・2・・

3 この無謬の確信は、信仰の本質には属していないので、真の信者がそれにあずかるものとなる前に、長く待ち、また多くの困難と戦うことがある(1)。しかし彼は、神から自由に自分に与えられている事柄をみたまによって知ることができるようにされているので、特殊な啓示なしに、普通の手段を正しく使うことによって、これに到達することができる(2)。それゆえ、自分の召命と選びを確かにするために全く勤勉に努めることは、すべての信者の義務である(3)。これによって彼の心は、この確信の結ぶ正しい実である、聖霊による平和と喜び、神への愛と感謝、服従の義務を果たす力とよろこびにおいて、増大されるようになる(4)。それは人々を放縦に傾かせることからは程遠いものである(5)

  1 
ヨハネ5:13、イザヤ50:10、マルコ9:24、詩88編、詩77:1-12(2-13)
  2 
コリント2:12ヨハネ4:13、ヘブライ6:11,12、エペソ3:17-19
  3 
ペテロ1:10
  4 ロマ5:1,2,5、ロマ14:17、ロマ15:13、エペソ1:3,4、詩4:7,8(6,7)、詩119:32
  5 
ヨハネ2:1,2、ロマ6:1,2、テトス2:11,12,14コリント7:1
    ロマ8:1,12
ヨハネ3:2,3、詩130:4ヨハネ1:6,7


三 ここで告白されている真理は、おおむね次の5点である。

1 この確信は、信仰の本質に属するものではない。つまり、この確信を伴わない限り、それは本当の信仰とは認められない、と言うようなものではなく、むしろ、初歩的は信仰では、この確信を伴わないのが普通である。なぜなら、この確信は単に疑わないと言うような消極的無知状態、自己批判の足りないのん気な状態とは異なり、信仰内容を自覚的に確信させられ、すべての論理的な反対論にも動揺せず、すべての事実的脅迫にも、たじろがない確信のことである。

2 この確信に到達する道は、何か特別啓示を受けるといった、神秘的体験によるものではなく、普通の信仰の教育訓練を受ける方法によるものである。

3 これは全信者が義務として、それを与えられるように祈り励むべき目標であって、手の届かない高嶺の花と諦めたり、どうでもよいことと放任してはならないことである。

4 この賜物は、他の恵みの賜物と無関係なものではなく、極めて密接に結合している事柄であって、これを得ることは、また同時に、他の祝福をより十分に味わわされることである。

5 この教理を予定論などと同様に、何か信者を放漫に流れさせる有害な教えだと曲解する人々が少なくないが、決してそうではない。これは常に、信者自身に目標として励ますのに役立つ有益な教理である。

4 まことの信者も、自分の救いの確信を維持することの怠慢、良心を傷つけ・みたまを悲しませるある特殊な罪に陥ること、ある突然の激しい誘惑、神がみ顔の光をかくされて神を恐れる者をさえも闇の中を歩き、光を持たないままにしておかれることによるなど、種々の方法によって、それを動揺させ、滅らし、中断させることがある(1)。しかし彼らは決して、神の種と信仰の命、キリストと兄弟とへの愛、義務を行なう心と良心の誠実さ、を全く欠いているのではない。これらから、みたまの働きによって、適当な時にこの確信が回復され(2)、またこれらによって、全くの絶望に陥らないようその間支えられている(3)

  1 雅5:2,3,6、詩51:8,12,14(10,14,16)、エペソ4:30,31、詩77:1-10(2-11)
    マタイ26:69-72、詩31:22(23)、詩88編、イザヤ50:10
  2 
ヨハネ3:9、ルカ22:32、ヨブ13:15、詩73:15、詩51:8,12(10,14)、イザヤ50:10
  3 ミカ7:7-9、エレミヤ32:40、イザヤ54:7-10、詩22:1(2)、詩88

四 ここで述べてあることは、前項で告白された通り、この確信への到達が時間的に相当長い戦いを経た後であるのみでなく、一度この確信に至った者でも、それは死ぬまで同じ強さで維持されるとは限らず、度々、それから転落後退するような状況が生じることを明らかにして、わたしたちの信仰生活が、いかに多難ないばらの道であるかを教え、失望よりこれを支え、また絶えず注意と警戒心を呼び覚ますことにある。聖化の地上での未完成と言う主張と合わせて考えなければならない。

 

<結び>

これは、極めて簡素ではあるが、聖書的罪観をよく表明した名文である。罪の責任が人間にあって、神にも悪魔にもないこと(もちろん、悪魔はそれ自身の責任を負う。罪は人間によって犯された事実でありつつ、神の聖定が混乱したのではなく、神は、すべてにおいて絶対的主権者であること、罪は対神、対世界、対自身の三つの面に深い結果を及ぼしていること、アダムの罪が全人類に転嫁と遺伝の両方式をもって波及していること、行為のみが罪ではなく、罪を生む性質そのものが罪として罪責・罰に価すること。このようにして、罪人の救いがいかに重大事であるかを、自力救済が望みのないことであるかを、キリストの贖罪と聖霊の活動が大いなる恵みであるかを明瞭にしている。

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