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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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「あなたに聖書を」

「キリスト教百話」・・・33

問20・・10 キリスト教では「罪」と言うことを言いますね。クリスチャンは「われらの罪を赦し給え」と祈っていますが、別に犯罪を犯しているようでもないのに、どうしてあんなことを言うのですか。

答   「罪」と言う言葉は普通には何か悪いことしたことに対して、それは「罪を犯した」という風に使われますね。それが法律に引っかかる場合には明らかな「犯罪行為」とみなされます。その場合は法律に違反しなければ「犯罪」とはなりません。と言うことは、その場合の「罪」というものは、その法律が適用せれる範囲内の人にとって誰もが認める共通の「してはならないこと」が明文化されていますから、「罪」とは何かがはっきりしています。

 <続き> 「放蕩息子の譬話」には母親は出てきませんが、この場合の父は、切る役を自分に課すと同時に、包む役も担っているのであって、父とか母とかいう言葉に限定されない、人間を超えた神の、人間への関わりを語っていると言うべきでありましょう。

 「放蕩『息子』」という言葉は、その親があって成り立つ言葉でありますし、親があるから問題となります。親がいなければ「放蕩人」であっても「放蕩『息子』ではありません。それと、親がいても、親を無視して、自分の思いだけで生きている者は、親という自分の存在基盤から離れて生きているのですから、本人にその自覚はなくても、親からすれば、放蕩していることになります。

 このことが親に対する見当違いな生き方(罪)です。放蕩という言葉は、普通にはふしだらな身を持ち崩した生活をしているような状況のことが考えられますが、本来、「拠って立っているべきところ」から離れて、自分の思いだけで生きているなら、それは、その本来的ものからは「放蕩」していることになります。ですからギャンブルに明け暮れていようと、社会的に立派な仕事をしているとみられていようと、親を無視して生きているなら、それは「放蕩『息子』」なのです。

 同様に、神が存在しなければ、神に対する的外れの人間(罪人=罪人=)すなわち「放蕩人間」ということはあり得ません。ただし、親を無視して独走しているものに「放蕩『息子』」などという意識がないように、神がいても、神を無視して生きているものには、神に対する罪人意識などは起こりようがありません。

 しかし、放蕩息子は、親から離れて自立したと思っての独走の結果、どん詰まりに至りました。自力では自分のことをどうすることも出来なくなったのです。助けが必要になったのです。これが「我に返った」ということです。「このままでは立つことが出来ない我」を自覚したのです。その時、彼は幸いにも、より頼むべき存在があること、自分のどん詰まりは、その存在を無視し、そこから飛び出したことにあると気付きました。こうして帰還が成り立ったのです。

 人間は、自分の危機に直面せざるを得ないことがあります。太平洋をヨットで横断するという快挙を果たしたかつての堀江青年は、横断の手記の中で、荒れ狂う海の中でどうにもならなくなった時、「神様、仏様、キリスト様、金刀比羅様・・・」など、知っている限りの名前を呼んで、助けを求めたといいます。

 助かったのは何によったかは別にして、「助けて!」というしかない時、初めて人間は、自分を超えたものに助けを求めるのです。罪人が罪から立ち返らなくてはならない時が来るのです。第二次世界戦争の結果、多くの人々は、人間の営みに希望を失いました。人間が危機にあることを自覚したのです。

 しかし、そういう中でも小康を得て、またぞろ放蕩の旅に出ています。やがてどん詰りに至るのではないかと危惧や不安を抱きながらもです。そういう中でも、「帰るべきところはここだよ」との声を聴くことが出来る人は幸いです。キリストは、そういう呼びかけをし続けておられる方なのです。

                篠田 潔

(日本基督教団隠退教師・元「キリストへの時間」協力委員・ラジオ説教者)

       <9月のラジオ放送予定>  

  9月 6日 田口博之  (日本基督教団名古屋桜山教会牧師)

    13日 田口博之  (日本基督教団名古屋桜山教会牧師)

    20日 上田正昭  (日本基督教団華陽教会牧師)

    27日 上田正昭  (日本基督教団華陽教会牧師)

  (放送開始19(日本キリスト改革派長久手教会牧師)52年10月)

CBCラジオ「キリストへの時間」(1053KHZ

毎週日曜日朝6時30分~45分放送

 

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書籍紹介
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 共著者・編者
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