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世田谷通信(145)
猫 草
我が家の周辺の見通しが非常によくなっている。大規模な道路の建設予定地なので、立ち退きが進んでいるのだ。家から100m先はすべて対象地である。建設計画は10年以上前からあり、引っ越し当初からわかっていた。しかし数年前はびっしりと住宅が立ち並んでおり、ほんとにやるのかしら程度の気持ちでいたのだ。
しかし昨年からどんどん話が進み、1軒また1軒と更地になり、ふと気が付くと家からの景色が一変しているのに愕然とする。
家の解体は1,2日であっという間に終わる。あったものが失われ、つるりとした更地になると、数日で草が生える。すぐにアスファルトで覆われ、フェンスと鍵が取り付けられた建設予定地になるのだ。そんな無機質さが大半を占め、残っている家が、まるで荒野に剥き出しで建っているような印象になる。
そんな中、まだ残っている1棟の2階建て木造アパートがある。前庭には1匹の猫がいつもいる。住人からご飯をもらうのだろう、ベランダ横の洗濯機に座っていることが多い。雨でも雪でも外にいるので、半ノラだろう。みんなから「ミー」と呼ばれている白黒ブチの高齢猫は、タプタプした体格と愛らしい声をしている。ビニール袋を持った通行人には「ミャーン」と話しかけてくる。あのアパートも取り壊し対象だが、ミーはどうなるだろう。住み慣れた場所を追われ、住人が一緒に連れていくだろうか。
立ち退き後は、近所に新しく家を建てる場合もあるが、全く別の場所に移ることもあり、その判断はさまざまである。人間は自分の住む場所を自分で考えて決めるだろう。でもほかの生き物は?
先日、家の玄関前に1mぐらいのアオダイショウが細長く伸びていた。目が合うと音もなく木の陰にするすると入っていった。こいつも住処を追われたのかもしれない。人間の「壮大な計画」によって完成するもの、失われるもの。何が正解なのか成功なのか、よくわからない。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
いのちのことば社
スーザン・ハント
「緑のまきば」
「聖霊とその働き」