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ビルマ
戦犯者の獄中記 (63) 遠山良作 著
昭和22年
―タキン党事件の裁判の状況―・・11・
―落下傘諜者を追跡して・・4・・
捜索を始めてから12日目であった。ユン村(カレン人部落)の近くの山中に諜者らしき者が3名潜んでいるという情報を得た。浜田曹長の班と合同して、夜明けを期して急襲することにした。
情報を提供してくれた現地人を案内人として、夜中からの行動である。これでも道かと思われる山路を歩くこと3時間、谷底からせせらぎの音が聞こえてくる小高い所に来ると、案内人は谷底を指差して「あの谷にいる」と言うのである。
彼らが潜んでいると思われる場所に行くにはただ一本の道が下方に向かってあるのみで、右も左も深いジャングルで覆われているので一歩も踏み入れることはできない。一本道をしゃにむに進む以外に方法はない。夜明けが近くなって、浜田曹長を先頭に、私たちは息を殺して這うようにして少しずつ進む。木の葉の間より黒いものが動いている気配がする。
まだ気付いている様子はないが、彼らがどんな武器を持っているのかの不安があった。こちらは警察官が持っているライフル銃4丁と私たちが持っている拳銃3丁のみである。撃ち合いになれば双方に犠牲者が出ることは必至である。
それを避けるためにも少しでも彼らに近づくことである。谷川のせせらぎと暗闇が幸いしたのか30メートル位まで近づいた時である。彼らの一人が何か叫ぶような声がしたと同時であった。先頭の浜田曹長の「突っ込め」の合図があったので発砲しつつ、彼らに向かって殺到した。
余りにも気づくことが遅かった彼らである。反撃一つせず1名を残して逃走した。残された1名を逮捕すると共に逃げる2名を追跡したが、あたりはまだ暗く不案内な地形のために見失ってしまったので、夜明けを待って追跡することにした。
*文章の転載はご子息の許可を得ております。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
いのちのことば社
スーザン・ハント
「緑のまきば」
「聖霊とその働き」