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―落下傘諜者を追跡して・・6・・
これではB村に着くには夜になっても到着しそうもない。やむを得ず木を切り「イカダ」を組んで銃、衣類、食料を積んで裸になり「イカダ」につかまって下流に向かって泳ぐことにした。時は雨期である。茶褐色の河は水かさを増し、ゆっくりと流れている。30分も河に漬かっていると体が冷え切ってくる。そのたびに上陸しては焚火で体を温めては又泳ぐのである。3時間くらい泳いだと思う。
ようやく目的の部落が見えた。突然、バリバリと凄まじい大きな音に度肝を抜かれた。その音は40頭くらいの象の群れであった。部落民が作っていた陸稲を食べていたところを、突然現れた私たちに驚いて逃げていく音であった。
この部落には人一人住んでいなかった。再び「イカダ」につかまり、下流にある部落にたどり着いたときは、すでに日は暮れていた。ここの部落民に、B村より「イカダ」を組んで泳いできたことを話すと、驚いて「この河にはワニが棲んでいる。マスターたちは運がよかった。水浴する水牛など、14フィート(4メートル位)もある大きなワニに襲われることがある」
「だけどワニなど1度も見なかったよ」
「ワニは通常川底に潜んでいて獲物が来ると川底に引っ張り込んでしまう」と言う。ワニがいるとは知らずに泳いだ河は忘れられない。
この捜索にはいろいろの思い出がある。或る部落では、生まれたばかりの子象を毎晩襲いに来る虎から1ケ月も守った親象の話も聞いた。
逃げた彼らに関する情報がぱったり途絶えて久しく、タイ国に逃亡したとの情報もあったので、象を雇い背中に荷物を積んでビルマとタイ国境にそびえている嶮しい山脈を越えてタイ国境まで捜索に行ったこともあった。
この捜索が私の裁判の証人として立ってくれた警察官であったチヨミー、アオンチーたちとの出会いでもあった。
*文章の転載はご子息の許可を得ております。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
いのちのことば社
スーザン・ハント
「緑のまきば」
「聖霊とその働き」