ローマ人への手紙研究

　「ローマ人への手紙」研究　（４３）

　第３４課　異邦人の召命とユダヤ人の拒否

　　　　　　　９章１～１１章３６節

A　神がユダヤ人を退け、異邦人を召されることは神の約束と矛盾するものではない。

　　　　　　　９章１～２４節

　「ユダヤ人の兄弟たちに対するパウロの愛と関心の表明」

　　　　　　　９章１～５節

　厳密に言うと、救いの計画についてのパウロの論述は８章の終わりをもっておわります。

しかしパウロは、さらに進んで異邦人の召命とユダヤ人の拒否という大問題に取り組みます。この問題はローマ書を読むユダヤの人たちにとって、実に悲しむべきことであり、また厄介なことであるので、パウロは細心の注意を払い且つ手際よくこの問題を取り上げて、出来得る限り少しの躓きしか与えないように心がけています。

　「忠実に述べると言うことは、真理を出来るだけ躓かせるように語るということではありません。それどころか、パウロがしているように、それを告げる相手の人々の心の中に起こる反対の気持ちや敵意を和らげ、さらに私たちの側にも相手を躓かせるようなものを見せないで、相手の良心にその真理が働くようにする努力をしなければならないのである」（C・ホッジ）。

 

　したがって、パウロは自分の兄弟であり、肉によれば同胞であるユダヤ人たちの福祉と救いに深い関心を抱いていることを訴えるのです。「わたしはキリストにあって真実を語る。偽りは言わない。わたしの良心も聖霊によって、わたしにこうあかしをしている」。

　これは１つのことを述べるに際しての非常に真摯で厳粛な、しかも強調的な言い方です。

 

　「すなわち、わたしに大きな悲しみがあり、わたしの心に絶えざる痛みがある」（２）。

　ユダヤ人たちは彼らの救い主イエス・キリストを拒んでしまった。そして彼らの特別の祝福と地位と特権は取り去られねばならなくなりました。彼らはこの世において棄てられ望みなき者となっています。パウロはこの事情を思うとき、深い悲しみと耐えざる痛みに満たされるのでした。

 

　「実際、わたしの兄弟、肉による同族のためなら、わたしのこの身がのろわれて、キリストから離されてもいとわない」（３）。

　この言葉は、従来、非常に誤解されてきました。ある人々はこの言葉は、人は神の栄光のためには喜んで断罪されるべきであることを教えているのだとします。パウロがここで言おうとしていることは、そのような意味ではありません。彼が言おうとしていることは、「もしそのことを願うことが間違いではないと仮定するならば、またそうすることが不可能でないとするならば、パウロ自身は同族のためならば、のろわれてキリストより引き離されてもよい」ということです。