2023年7月号
№193
号
通巻877号
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…キリスト教…
社会福祉活動のあゆみ(11)
キリスト教公認後の貧しい人々への救済(4)
中世教会の貧困問題の対策の基本原則(2)
中世社会では、人はなぜ慈善を行わなければならないかを、聖書に根拠を求めました。この聖書に書かれているキリスト教の行為を吟味してみると、中世キリスト教信仰では、明らかに利他主義ではなく表現は十分ではありませんが、信仰に立つ利己主義の要素があります。この利己主義は名誉や地位を満たす自己中心主義ではありません。
熱心に寄付したりするように推奨されるのは、その行為が神を喜ばすことであり、天国の報いを受けるに値することであるとの保証を持っていたからです。中世において、慈善の目的のために基金を募る場合に、「天に宝を積むために」という信仰的利己主義の要素が、明らかに基金募金の理由として強調されたのです。
しかし、ここに中世の慈善に対する全ての批判の中心点があり、また、道徳的根拠からも、中世の救済行為には真の利他心が欠けていたといわれるところです。その原点が、コンスタンチヌス皇帝時代の「司祭・修道院への義務免除の特典」にありました。このことに付いては、改めて「修道院の歩みを考える」ところで、ご紹介したいと思います。
S・クゥイーンも、その著書「西洋社会事業史」で、この点を指摘して、「この教義は疑いもなく自己犠牲及び救助の精神を刺激する手段としては有効・適切なものであったが、本質的には、商業的事業にまで堕落したように見えることがしばしばである。また一方には職業的施与者があった。彼らも元来、施しは被施与者に対して多くの効果があるとは考えなかったが、彼らは主として自己の魂の救済に高徳があるものと考えられていたように思われる」と述べています。
これに対する当時のカトリック教会の弁明は、聖書の意味する寄付・施しは、正義の行為であり、それはまた愛の行為であって、感傷的な衝動の行為とは理解されていないと言うのです。人間の義務は神を愛し、また神がそれを求めているので、その隣人を愛することでもある。隣人を愛するとは、どういうことであるのか。それは、その人のために祈り、その人の救霊のために尽くし、霊的、物的に助け合うことである。物的に助け合うということは、貧しい人を助け、病人を見舞い、孤児や老人を保護し、社会福祉施設に協力し、社会の繁栄と平和に寄与するように努めることである。隣人は、特に貧民は、時として個人的に好ましくない者、あるいは嫌いな者であるかもしれない。それにもかかわらず、キリストのために尊敬され、困窮の際には、援助されなければならないのである。聖書には、すべての人を愛さなければならないと次のように命じられている。
「あなたがたも聞いているとおり、「隣人を愛し、敵を憎め」と命じられている。しかし、わたしは言っておく。敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。あなたがたの天の父の子となるためである。父は悪人にも善人のも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださるからである。自分を愛してくれる人を愛したところで、あなたがたにどんな報いがあるだろうか。徴税人でも、同じことをしているではないか。自分の兄弟だけ挨拶したところで、どんな優れたことをしたことになろうか。異邦人でさえ、同じことをしているではないか。だから、あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい」(マタイ5:43~48)。
ここに慈善は義務であり、命令であると説かれていると主張しています。
アッシュレーも、中世の慈善は中世の人々にとって守るべき義務であったことを認めて、「もしも一人の人が彼の必要である以上に所有していたなら、彼はその余剰を貧乏人に与える義務があった。なぜなら自然法によれば、彼はそれに対して何ら私的権利を持たず、ただ神の管理人にすぎなかったからである。そしてキリスト教の教師にとって、かくのごとき法制は最早単なる哲学的推論ではなかった。実際的戒律というはなはだ重要なものとなってきて、守るべき義務及び次の世界において罰を課せれられるべき罪悪と指摘している」とする中世の聖書理解とキリスト教信仰に立つものであったとしています。
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緑を大切に!
書籍紹介
エネルギー技術の
社会意思決定
日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
定価(本体5200+税)
=推薦の言葉=
森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授
「本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
共著者・編者
鈴木達治郎
(財)電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
(財)電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
(財)電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
寿楽浩太
東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
(財)電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント
スーザン・ハント
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
「緑のまきば」
吉岡 繁著
(元神戸改革派神学校校長)
「あとがき」より
…。学徒出陣、友人の死、…。それが私のその後の人生の出発点であり、常に立ち帰るべき原点ということでしょう。…。生涯求道者と自称しています。ここで取り上げた問題の多くは、家での対話から生まれたものです。家では勿論日常茶飯事からいろいろのレベルの会話がありますが夫婦が最も熱くなって論じ合う会話の一端がここに反映されています。
「聖霊とその働き」
エドウイン・H・パーマー著
鈴木英昭訳
「著者のことば」より
…。近年になって、御霊の働きについて短時間で学ぶ傾向が一層強まっている。しかしその学びもおもに、クリスチャン生活における御霊の働きを分析するということに向けられている。つまり、再生と聖化に向けられていて、他の面における御霊の広範囲な働きが無視されている。本書はクリスチャン生活以外の面の聖霊について新しい聖書研究が必要なこと、こうした理由から書かれている。
定価 1500円
鈴木英昭著
「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
定価 1800円
おすすめ本
C.ジョン・ミラー著
鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
定価 1000円
おすすめ本
ポーリン・マカルピン著
著者の言葉
讃美歌はクリスチャンにとって、1つの大きな宝物といえます。教会で神様を礼拝する時にも、家庭礼拝の時にも、友との親しい交わりの時にも、そして、悲しい時、うれしい時などに讃美歌が歌える特権は、本当に素晴しいことでございます。しかし、讃美歌の本当のメッセージを知るためには、主イエス・キリストと父なる神様への信仰、み霊なる神様への信頼が必要であります。また、作曲者の願い、讃美歌の歌詞の背景にあるもの、その土台である神様のみ言葉の聖書に触れ、教えられることも大切であります。ここには皆様が広く愛唱されている50曲を選びました。
定価 3000円