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ビルマ 戦犯者の獄中記(76) 遠山良作著
―結核で入院―・・・2・・・
独立したばかりのビルマ政府に不満を持つ共産党やカレン族は武力に訴え、国は内乱状態であり、経済的にも極めて深刻である。現在の政府は、外国から輸入する薬などあろうはずがない。友はなんとか私のために薬を入手しようと尽力してくれた。久米大佐(戦犯者)の友人であるビルマ財界の富豪ネザミ氏に薬の差し入れを依頼した。彼は最も高価な朝鮮人参、ビタミン剤、ブドウ糖の注射液等沢山差し入れてくれた。
その上彼は、きたない牢獄の病院まで毎日5日間、入手困難とも思われるブドウ、リンゴを持って見舞いに来てくれた。嬉しくて涙で布団を濡らした。何の価値もない私のために尽くしてくれる友らのために報いなければならない。全ての人を愛さなければならないと思う感謝の病院生活である。
聖書は「すべての者を愛せよ」と教えているが、人を愛することの難しさを痛感する。同室にいる悪臭プンプンする病院では、何でも勝手に持ってゆく。コップがないからといってわたしのコップを無断で使用する。つい腹が立つ。誰でも優しい心の持ち主にならなければならないと思いつつも優しい人間になりきることの出来ない弱さを知らしめられる。
人間はどうにもならなくなると救いを神に求める。かつて私も、死刑になるかも知れないと思ったとき「神様助けて下さい」と願ったが、死刑を免れると神様など何処にいるのかさえ忘れ、聖書を読むことも怠って来たことに気付いた。
聖書を再び読み始める。直ぐに疲れてしまい、小さな文字がぼんやりとして読めなくなってしまう。しばらくしてまた読む。今度は熱が高くなって苦しくなる。友は疲れるから聖書など読むなと注意してくれる。友の来る足音がすると聖書を布団に隠す。
友を裏切っているような気がするが、少しずつでも毎日聖書を読まずにはいられない。「労する者、重荷を負う者は我に来れ、我休ません」。この聖書の言葉は私を励ましてくれました。理解できない多くの箇所があるけれども何べんも繰り返して読む聖書は私の心の支えでもあった。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
いのちのことば社
スーザン・ハント
「緑のまきば」
「聖霊とその働き」