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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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さんびか物語・・・40・・・ 

    (広く愛唱されている50曲)・・・39・・・

           ポーリン・マカルピン著

          (米国南長老教会婦人宣教師) 

 

讃美歌399番

 なやむものよ とく立ちて

 

<神様のみ言葉>

「わたしは父にお願いします。そうすれば、父はもうひとりの助け主をあなたがたにお与えになります。その助け主がいつまでもあなたがたとともにおられるためです」。 

~ヨハネの福音書14章16節~

この讃美歌は、試練の中にあっても神様を仰ぎ見、神様が招いておられることを信じて、神様のみもとに立ちかえることの喜びを歌っているものであります。

讃美歌399番の作詞者トーマス・モーアはアイルランドの詩人で1779年5月28日にダブリンで生まれ、同市のトリニティ・カレッジで教育を受けました。1799年にはロンドンに行って法律を学びました。

1804年バーミューダの裁判所の書記係になりましたが、彼の興味と目的はむしろ文学方面にありましたので、その職務を代理人に任せてイギリスに戻りました。そうして、彼がなくなる1852年までの間に、多くの詩歌と散文とを発表し、それらの中には世界中でしられているThe Last Rose of SummerとかBelieve Me,if all Those Endearing Young Chsrmsなどの曲が含まれていました。

彼は有名な民謡や詩歌の他に、32編の讃美歌を作り、それらを1816年にSacred Songs(1816年)にまとめて出版しました。この歌はその中の一編で、彼の讃美歌としてはもっとも広く歌われ、知られているものの一つです。

原作の第3節はヘイステングスとメイースンのSpiritual Songs(1831年)に編入された時トーマス・ヘイステングスによって取り代えられたものでモーア自身の作ではありません。そうして、ヘイステングスの作の方が原作よりも聖書的であり、伝道的であります。

しかし、原作の第1節から用いられていますその美しい折り返しの部分は、モーアの独特なもので、彼の作った文学的讃美歌の素晴らしいものの一つであります。

讃美歌の作曲者はサミュエル・ウェブですが、讃美歌22番をご参照ください。

この曲CONSOLATORは、ウェブが1792年に出版したCoLLection of Motettsに初めて発表し、その後この曲はトーマス・モーアの作品”悩むものよ“(399番)の曲として、独唱および2重唱の形でトーマス・ヘイステングスおよびロウエス・メイスンのSpiritual Songs(1831年)に発表されました。

日本では、昭和6年版の讃美歌に採録されてから、広く一般に普及しました。

<399>

 1 なやむものよ、 とく立ちて

   めぐみの座にきたれや。

   天のちからにいやしえぬ

   かなしみは地にあらじ。

1節で作者は、この讃美歌の実に意義深い感情に満ちたテーマを紹介くださいました。すなわち、“天の力にいやし得ぬ悲しみは地にあらじ”と歌っています。生けるまことの神様は、全知全能の神様であられます。ですから、私たちの全ての悩みや悲しみを知っておられます。また、ただ知っておられるだけでなく、その悩みの苦しみを癒してくださるみ力をも持っておられるお方であられます。

ダビデ王も「主は私の羊飼い。・・・私はわざわいを恐れません。あなた(主)が私とともにおられますから。あなたのむちとあなたの杖、それが、私の慰めです」(詩篇23:1、4)と歌っています。またイエス様は「悲しむ者は幸いです。その人は慰められるからです」と山上の垂訓でお教えになられました(マタイ5:4)。

悩みの中にある人は、自分の悩みの中に閉じこもり沈んでしまうのではなく、いち早くその悩みを解決してくださる神様の恵みのみ座に行くことですと歌っています。

では、恵みのみ座は何を意味するのでしょうか。これは、旧約聖書に記されています「贖罪所」のことであり、神様はこのところでイスラエル人の指導者であったモーセと会見なされ、彼らに、神様に従うための命令をことごとく語られたところです(出エジプト25:22)。

この恵みのみ座について作詞者ヒユー・ストウェルも讃美歌315番で非常に美しく歌っていますので、どうぞご参考になさってください。

 

<315>

1 うき世のあらなみ のがれてやすらう

   しずけきみなとは めぐみのみ座なり。

 2 いともかぐわしき よろこびのあぶら

   かしらに受けまし めぐみのみざにて。

 3 住家をへだつる  主にある御民も

   ともにこそあわめ めぐみのみざにて。

 4 せつなるいのりに 天(あめ)戸ひらけて、

   かがやくみさかえ 御座のうえに見ゆ。

悩める者は、神様のいまし給う恵みのみ座に祈りをもって近づきます時に、慰められいやされるのであります。

 2 さちなき身のなぐさめや

   くやめる身ののぞみや。

   天のちからにいやしえぬ

   かなしみは地にあらじ。

2節では、慰め主なる主イエス・キリストにある、偉大な特徴について歌っています。日本語訳では、それが“さちなき身のなぐさめ”と“くやめる身ののぞみ”の二つの言葉に示されています。原文の方では、その他に、”キリストは悩める者に喜びあり、迷っている者の光である“と歌っています。

キリストは実に喜びのない者の慰め、希望なき者のまことの望みであります。ここで知らなければならないことは、自分の心の乏しい状態ではないでしょうか。本当の喜びを知りたいと思いますなら、キリストに立ち帰らなければなりません。本当に慰めを頂きたいと願いますなら、神と人の前に犯した己が罪を心から悔いて、キリストにより頼む他にありません。

 3 見よ、いのちのましみずの

   み座より湧きいずるを。

   天のちからにいやしえぬ

   かなしみは地にあらじ。

3節での“いのちのましみずの、み座より湧きいずる”はヨハネの黙示録22章1、2節を背景にして書かれたものでしょう。

そこには「御使いはまた、私に水晶のように光るいのちの水の川を見せた。それは神と子羊との御座から出て、都の大通りの中央を流れていた。川の両岸には、いのちの木があって、12種の実がなり、毎月、実ができた。また、その木の葉は諸国の民をいやした」と記されています。

私たちは、この“いのちのましみずの、み座より湧きいずるを”“見よ”と言う作詞者の呼びかけに、耳を傾けなければなりません。そのためには、神様のみ言葉である聖書を通して、神様の恵みをいただき、恵みのみ座まで引き上げられて、パラダイスにあるいのちのましみずを飲むことに励みたいものです。

その聖く汚れのない水の源は、神と子羊のみ座です。つまり、私たちの全ての祝福と恵みは、父なく神と救い主なるキリストから流れ出てくるものであります。この事実を決して忘れてはなりません。

同時に川の両岸にあるいのちの木から実を食べることもできます。それも、エデンの園の木の実のようにではなく、この木は、永遠のいのちの実を実らすものです。また、その葉は諸国の民をいやし、いこわすものでもあります。

罪の公害のために悩まされている私たちにとりまして、この聖い水と木の実は、どんなにありがたく大切でしょうか。どうぞ、神様のお選びになられる民としてあなたも、いち早くその恵みのみ座に立ち帰ってくださいますように、おすすめいたします。
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