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世田谷通信(166)
猫草
小学2年生に春の里山を紹介する授業があった。私もスタッフとして参加していたのだが、7歳の子供の屈託のなさは素直すぎて眩しい限り。
春を探すゲームとして、「虫」「黄色の花」「鳥」「ハート型の物」などのキーワードを与え、ビンゴカードのように区切ったマス目に見つけたら記入していく。ハート型の物を探すのに苦心したらしく、ハート型の石、木の穴、雲の形など意外な答えが出てきて面白かった。こちらはカタバミの葉っぱとかナズナの実の部分などを想定していたのだが。
虫を探してみようと言っているのに、子供たちが「いたー」と大騒ぎしたのはカナヘビとムカデ。それ、どっちも虫じゃないし。
植物の匂いを嗅いでみよう、というお題でドクダミ、キュウリ草、ハナニラ、ヨモギなど特徴的なものを用意していたのに、子供たちが嗅いでみたのはタンポポ、松ぼっくり、桜の花びらなど、なんとも形容しがたい。草をちぎって鼻に近づけている子に、どんな匂いがした?と聞くと「草のにおい~」そりゃそうだ。予想の斜め上とはこのことだ。
広場から湧水に降りて、サワガニなどの水生生物をみせる。わき水を触らせると、大喜びで袖まで水につけてしまう子がいる。「服が濡れてるよ」と言うと「大丈夫!だってね、これはお古だから!」と得意そうに返された。汚れてもいい服装でと親が着せたのだろう。でもわざと汚して良いって意味ではないよ。春とは言えまだ肌寒い。一日袖が冷たいだろうに。
さらに移動して落葉溜めで丸々太ったカブトムシの幼虫を見せる。7歳にして「触りたーい!」と目を輝かせる子と「気持ち悪っ」の二派に分かれる。現時点では後者が少数派。高学年になるほど後者比率は高くなる。6年生では大半の女子と一部の男子は「絶対無理!」と悲鳴をあげる。
「虫は苦手」な若い先生も多い。子供の手前、平静を装ってはいるが「ひゃー」と呟きながら手にこわごわ乗せて、結構ですと戻してくる。理科で昆虫を扱う授業はどうしているんだろう。教科書を読んで終わりかも知れない。
雨の翌日で、2カ所遊歩道の真ん中からタケノコが生えていた。転ばないように「タケノコ、気をつけて」と声をかけると、「どこ?」と上を見回している。さすが都会っ子、タケノコは足元、という常識が通用しない。それでも、なかなか楽しそうではある。こうして小学1年から6年まで里山で体験授業を行っている。子供の頃に全く土や虫や植物に触れる経験がないと、大人になって森に来ても癒やされないし、まして懐かしいという感情は持てないだろう。ささやかだが自然に触れる原体験を育んでくれたらと思う。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
いのちのことば社
スーザン・ハント
「緑のまきば」
「聖霊とその働き」