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世田谷通信(176)
猫草
先日「トヨタの森」というトヨタ自動車の社有林を訪問した。里山環境教育の場として様々なプログラムを実施していることに興味を持ったからだ。豊田市の一角45haという広大な敷地内には色々なエリアがある。ムササビやイノシシ、シカ、フクロウ、稀少な昆虫や植物、多様な生きものが暮らしている。
インタープリターの方は野鳥に詳しい方。丁寧に、広い森を案内してくださった。里山の管理手法を比較実験しているのが興味深かった。下草刈りで整備したエリアと、放置したエリアを道の左右に設ける。来訪者は左右を眺めてその環境の差を比較できる。正解はなく、一長一短、試行錯誤していくプロセスが見られるのだ。
朽ち木を根元で伐らず高さ1mぐらい残すと樹皮が自然に剥がれ、木の洞が沢山できて、色んなキノコが生える。そういう場所を好む昆虫の住み処になる。
フクロウの止まり木にするために1本横枝を残し、他の枝を払って広場を作る。伐った枝は一カ所に集め地面に伏せる。そこにフクロウの餌となるネズミや昆虫が集まる。フクロウの狩り場をつくってやるわけだ。
水辺も全部刈らず、まだらに残す。それによって、水草の根元に集まる生きものが住み、それを狙う上位の生きものも来る。
業者さんは仕事なので請けたエリアは全部草を刈るし、雑草は抜き、落葉を集め、丸坊主に枝を伐る。それも都会で車や人の多い場所では必要な管理である。トヨタの森はそういう人間優先の感覚ではなく、色んな生きものがちょっとずつ住めるような仕掛けがたくさんあった。「あえて残す」というのがキーワードになっているように思った。希少種や目立つ生きものだけではなく、目立たず地味で、ありふれた、名すら無い生きものにも、隅っこで生きられる隙間を作ってあげること。
生物多様性ってこういうことかな。ちょっと腑に落ちた。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
いのちのことば社
スーザン・ハント
「緑のまきば」
「聖霊とその働き」