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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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十戒と主の祈り・・4・・

             鈴木英昭著

        (元日本キリスト改革派名古屋教会牧師)

=わたしのほかに=

  第一戒③・全能の神

           Ⅰペトロ5:6、ヤコブ5:11

 私たちは異教社会に多くの神々があることを知っています。その神々は、どれもみな人間に幸いをもたらしてくれるものと期待されています。不幸や災いは神からではなく、別のところからもたらされるものであって、それを防いだり、そこから救い出してくれるのが、神々であるということになっています。そのために、いわば幸福を与える分業を割り当てられたいろいろの神々が挙げられることになります。

 ところが、現実の生活には願っていない不幸が多くあります。そうなると、その原因は悪魔であると考えるが、神も悪魔も存在しないとする人々は、偶然に起こったものとして、運が悪かったと言って諦めます。私たちの人生や世の中には、偶然と思えるようなことが起こります。クリスチャンも偶然という言葉を使いますが、文字どおりに偶然であると信じているわけではありません。偶然を信じているなら、神の支配が届かないところがあることを信じていることになるからです。それは、明らかにこの第一戒の戒めに反することになります。

 

 しかし、神は聖書によって、このように御自身だけが神であることを、はっきりと宣言なさり、御自身だけが幸も不幸も、生も死も、慰めも懲らしめも、すべて両面を行っておられることを表明しておられます。

 具体的な例を挙げれば、エデンの園で、第一に、神は悪魔がアダムとエバとを誘惑することを許可されました。第二に、堕落した罪のため、彼らへの罰として、彼らに苦しみを送られました。そして第三に、神はその憐みから、彼らの裁きと共に、彼らを救う道を備えられました。

 神は悪を憎み、死を憎んでおられながら、神はこの悪と死を支配しておられ、それらを与えることがおできになります。私たちがこの関係を十分理解することができないとしても、神がこのように全能の力をもって、すべてを治めておられることを知ることは慰めです。

 したがって、私たちは、「へりくだって」(ウ大教理の問104)、この聖書の神と共に歩むことが必要です。また神の統治に「忍耐して」(ウ大教理の問105)従うことが必要です。

 「だから、神の力強い御手のもとで自分を低くしなさい。そうすれば、ちょうど良い時に高めていただけます」(Ⅰペトロ5:6)。自分の努力でへりくだるのではなく、全能の神を思って、へりくだります。「忍耐した人たちは幸せだと、私たちは思います。あなたがたは、ヨブの忍耐について聞き、主が最後にどのようにしてくださったかを知っています。主は慈しみ深く、憐れみに満ちたかただからです」(ヤコブ5:11)。神は、悪魔の働きを許された神ですが、悪魔がヨブを自由に支配することはお許しになりませんでした。

 

 第一戒④・偶像からの解放 

          ローマ1:21~32

 

 経験のない人から見ると、キリスト信者になったら、さぞ不自由な生活になるのではないかと思われるかもしれません。ところが、実際はその逆で、まことの神を畏れ敬うようになると、だれでもある種の自由を実感します。

 例えば、自然界や、死んだ人や、あるいは動植物に魂があると思って頭を下げ、それらを恐れる人は多いのですが、真の神を知ってからは、そういうことはなくなります。

 真の神を畏れ敬う人は、神でないものを恐れる必要がなくなります。大地は神ではありませんから、地下資源の開発をすることも問題はありません。同時に「地を治める」責任を考えますから、日本の商社のように無計画に森林を伐採させて自然破壊をするようなことはしません。しかも、神が創造され、そして摂理の力をもって守ってくださることを知っていれば、神への感謝をもって開発することになります。開発そのものが大義名分になって、無制限になることからも抑制されます。

 真の神を神としないとき、人が生み出した高度の技術、例えば、原子力にしても、生命医学の技術にしても、やがては恐ろしいものになって、人をその奴隷とするようになってきましたし、これからもそのようになるでしょう。先日のNHKのテレビで北米でのクローンのペットのことが報道され、猫は250万円で予約待ちだそうです。つまり、真の神ではなく、技術が偶像化され、それは神の栄光のためでも隣人の益のかめでもなく、個人の利益のために利用されるようになります。私たちがそれらを支配することができなくなり、反対に支配されるようになるからです。

 技術だけでなく、神の賜物である経済も政治も、神と人々に仕えるための手段です。真の神への畏れがないとき、技術、経済、政治、異教の神々、欲望という偶像が、これまで人をその奴隷にしてきました。これからもそれは繰り返されます。

 

 こうした偶像から解放されるには、第一戒が出発点になります。神と共に歩まなければなりません。神の契約を喜び、神の愛を知って生きることが必要で、すでに述べたように、「神などない」といって、高慢な態度で生きることは、必ずさまざまな偶像を恐れる生き方になります。人は神を崇めるか、それとも自分自身を崇めるか、そのいずれかをとるものだからです。

 ローマの信徒への手紙の1章21~32節は、神に造られたものを崇める人間の姿が描かれています。自分を誇る、被造物に似せた偶像を拝む、欲望の虜になる、さまざまな罪の奴隷になる・・・と言われています。ですから神の戒めの真理だけが信じる者を偶像から解放することができます。

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