忍者ブログ
2023年7月号  №193 号 通巻877号
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 

十戒と主の祈り

             鈴木英昭著

        (元日本キリスト改革派名古屋教会牧師)

=主の名=

  第三戒③・誓い

       創世記31:43~54、マタイ5:37

 「主の名をみだりに唱えてはならない」という第三戒に関して、ウエストミンスター大教理問答の問113は、誓いについて教えています。この点について第三戒を考え、聖書が教えていることを学んでおきましょう。

 普通、誓いには、自分が真実を語っていることを主張する意味で誓う誓いと、何かを約束するためにする誓いの二つがあります。前者は自分の証言が神の名にかけて真実であると誓います。証言を受け入れてもらえないとき、あるいは相手や人々に受け入れようとする意志が初めからないとき、神様に証人となっていただいて誓うために、「そこまで言うのなら」ということで、何らかの前進が見られるときがあります。これを「主張としての誓約」(assertory oath)と言います。そして、後者のように約束としての誓いをする場合、例えば、洗礼式での誓約や、教会役員の任職式・就職式での誓約のように、その職務をこれから果たすことを誓う場合を「約束としての誓約」(promissory oath)と言います。

 

 創世記の31章に記されている有名な実例として、ラバンとヤコブとの間の誓いがあります。ヤコブがハランに滞在していた20年の間に、伯父ラバンはヤコブの結婚相手となる自分の娘のこと、ヤコブの財産となる羊のことで、ヤコブと結んていた約束を破りました。そういう意味で、ヤコブにはラバンに対する不信感があったわけですが、自分の妻の父親であること、父の下に滞在していた間に、妻たちを与えられ、子供たちが与えられ、多くの羊や家畜が増えて財産を持つことができたことを思うと、約束の度々の不履行に悩まされはしたものの、耐えてきたのでしょう。ヤコブ自身が兄エサウを騙して、父の祝福を兄から奪ったことも、ラバンに対して忍耐を可能にしたのかもしれません。

 

 ラバンは自分の守り神の偶像を、ヤコブが盗んでいないのを認めると(事実は彼の妻ラケルが盗んでいて、ラクダの鞍の下に隠し、その上に座っていた)、ヤコブとの間に互いの不可侵と、ヤコブがラバンの娘である妻たちを苦しめないためのことを約束させています。これが約束の誓いの実例で、平和を得るための一つの手段となっています。

 

 前者の真実を誓約することに関して、主イエスが山上の説教の中で、「一切誓いを立ててはならない」と言われたことが誤解されて、誓いをすることそれ自体を拒否する人々がいます。この主イエスの言葉と同じことを、主の兄弟ヤコブもその手紙の512節で、こう述べています。「わたしの兄弟たち、何よりもまず、誓いを立ててはなりません」。これについては、次回で学びますが、なぜこのように語る必要があったかが分かると、よく理解できます。主イエスは誓いをすべて禁じたのではなく、誓いは、特に教会において、「然りは然り」、「否は否」(5:37)とはっきりするように言われたのです。平和や秩序はこうして保たれるからです。

 

第三戒④・世俗の誓約

       創世記31:43~54

 前回は、山上の説教やヤコブの手紙に教えられている「誓ってはならない」という、誓いに消極的な教えは、誓いそのものを否定しているのではなく、「然り、然り、否、否とせよ」ということで、不誠実な誓いを禁じていることを学びました。というのは、天や地やエルサレムなどを指して誓ったことは、果たす義務はないというようなことが教えられていたからです。

 今回は、キリスト者とキリスト者でない人々との間の「誓い」について考えてみます。16世紀のアナバプテストのなかに、そして、現在でもルター派などの敬虔主義の流れの中に、あるいは長老派のなかにさえも、この世で誓約が求められるために、政治に関わることや、公務員になることに消極的なキリスト者がいます。

 

 しかし、どの国でも、国民は憲法に従う義務があり、同時に憲法が保障する権利を与えられています。その憲法の内容が誤っていて良心的に従うことができないなら別ですが、そうでなければ公共の益となることには市民として従うことを誓約しています。

 例えば、公共料金を支払ったり、選挙の投票に参加したりするのは、誓約を果たしている一つの姿です。病院に入院して、手術を受ける時、「誓約書」のようなものを書くように求められて、それに従うのも同じです。

 教会において、私たちキリスト者は神を証人として誓いますが、この世で世俗的な事柄について誓約するとき、相手が聖書の神を信じていないために、その相手とは誓約できないことを考える必要はありません。聖書にはこうした場合にも誓約がなされなければならないことが幾つか記されているからです。

 例えば、読んでいただきましたヤコブとラバンの誓約は、それぞれの神を指してなされていて、同じ神ではありません。ラバンが偽りの神の名によって誓約していますから、そうした罪はありません。しかし、誓約したことの内容を守る責任は両者にあり、こうした誓約はこの世において必要なことです。

 キリスト者は世のものではありませんが、世に生きています。世から出て行くことはできません(Ⅰコリント5:10)。教会では不品行者とは共存できませんが、この世で不品行者や偶像礼拝者と共存することを避けることができません。

 大祭司カイアファが主イエスに向かって、「生ける神に誓って我々に答えよ。お前は神の子、メシアなのか」と答えを要求した時、イエスは、「それはあなたが言ったことです。…」とお答えになり、御自分が審判者であるメシアであることを断言なさいました。ですから異教徒の前でも誓約することは必要ですし、それは義務です。 

 

 

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
ブログ内検索
カウンター
★ごあんない★
毎月第一日更新
お便り・ご感想はこちらへ
お便り・ご感想くださる方は下記のメールフォームか住所へお願いいたします。お便りは「つのぶえジャーナル」の管理人のみ閲覧になっています。*印は必須です。入力ください。
〒465-0065 名古屋市名東区梅森坂4-101-22-207
緑を大切に!
お気持ち一つで!
守ろう自然、育てよう支援の輪を!
書籍紹介
    8858e3b6.jpg
エネルギー技術の
 社会意思決定

日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
 定価(本体5200+税)
=推薦の言葉=
森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授

本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
 共著者・編者
鈴木達治郎
電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
寿楽浩太
東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本

      d6b7b262.jpg
教会における女性のリーダーシップ
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント 
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
217ff6fb.jpg 








「緑のまきば」
吉岡 繁著
(元神戸改革派神学校校長)
「あとがき」より
…。学徒出陣、友人の死、…。それが私のその後の人生の出発点であり、常に立ち帰るべき原点ということでしょう。…。生涯求道者と自称しています。ここで取り上げた問題の多くは、家での対話から生まれたものです。家では勿論日常茶飯事からいろいろのレベルの会話がありますが夫婦が最も熱くなって論じ合う会話の一端がここに反映されています。
定価 2000円 

b997b4d0.jpg
 









「聖霊とその働き」
エドウイン・H・パーマー著
鈴木英昭訳
「著者のことば」より
…。近年になって、御霊の働きについて短時間で学ぶ傾向が一層強まっている。しかしその学びもおもに、クリスチャン生活における御霊の働きを分析するということに向けられている。つまり、再生と聖化に向けられていて、他の面における御霊の広範囲な働きが無視されている。本書はクリスチャン生活以外の面の聖霊について新しい聖書研究が必要なこと、こうした理由から書かれている。
定価 1500円
 a0528a6b.jpg









「十戒と主の祈り」
鈴木英昭著
 「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
定価 1800円
おすすめ本
4008bd9e.jpg
われらの教会と伝道
C.ジョン・ミラー著
鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
定価 1000円
おすすめ本

0eb70a0b.jpg








さんびか物語
ポーリン・マカルピン著
著者の言葉
讃美歌はクリスチャンにとって、1つの大きな宝物といえます。教会で神様を礼拝する時にも、家庭礼拝の時にも、友との親しい交わりの時にも、そして、悲しい時、うれしい時などに讃美歌が歌える特権は、本当に素晴しいことでございます。しかし、讃美歌の本当のメッセージを知るためには、主イエス・キリストと父なる神様への信仰、み霊なる神様への信頼が必要であります。また、作曲者の願い、讃美歌の歌詞の背景にあるもの、その土台である神様のみ言葉の聖書に触れ、教えられることも大切であります。ここには皆様が広く愛唱されている50曲を選びました。
定価 3000円

Copyright © [   つのぶえジャーナル ] All rights reserved.
Special Template : シンプルなブログテンプレートなら - Design up blog
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]