[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
世田谷通信(188)
猫草
ビブリオバトルなるものが各地で開催されている。バトルと言っても武器で戦うわけではない、簡単に言えば本の紹介合戦である。
一人1冊ずつおすすめの本を持ち寄って、一人5分の持ち時間で紹介をする。その後質問タイムを経て、全員の紹介が終わったら、どの本を一番読みたくなったか投票する。一番になった本を紹介した人が優勝というわけだ。
これを小学校でもやっていたので、参加させて貰うことになった。子ども相手では大人げないので、戦う相手は先生。投票は子ども達だ。
私が紹介しようかなと思う本は「子ぎつねヘレンがのこしたもの」(竹田津実、森の獣医さんの動物日記:偕成社)である。この子ぎつねは北海道の道ばたにじっとしている所を保護され、獣医である著者の所に持ち込まれた。目が見えない、耳も聞こえていないのはすぐに分かった。さらに嗅覚も、どうやら味覚もないことが分かる。味覚がないので、どんなにおなかが空いていても、口に入れられたものが美味しい食べ物だという判断ができない。砂を口に入れられたようなものだ。だから食べ物を受け付けない。ヘレンケラーから名前をもらってヘレンと名付けられた子ぎつねだが、三重苦どころではない状況である。
野生動物の飼育は禁止されている。なので、治療しても野生に戻せない場合、獣医の判断は安楽死である。生きる価値のない命ということだ。しかしこの獣医師と奥さんはこの重い障害を抱えたキツネに向き合い、介護を続ける。常に安楽死との葛藤を抱えながら。
この命を生かすことに意味があるかわからない、それでも最善を尽くす。よい結果が出るかわからない、うまくいかず落胆することの方が多い。一歩の前進より大きな後退を味わう。諦めそうになる、それでも試行錯誤を繰り返す。そこに命があるから。ほんの一握りでも希望があるから。そして、小さいけれど確かな奇跡がいくつも起きる。
子ぎつねヘレンが残したもの、とは何だろう。それはあなたが読んでみてほしい。そんな風にビブリオバトルで紹介してみようかな、と思う。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
いのちのことば社
スーザン・ハント
「緑のまきば」
「聖霊とその働き」