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世田谷通信 (195)
猫草
これが掲載される頃はもう師走、雑木林は落葉で一杯の季節だろう。10月末は紅葉もまだ、しかし地面をみるとドングリやギンナン、クリがたくさん落ちている。秋から冬への支度が始まっていると同時に、枝ごとざっくり折れている木々が目立つのは、各地に大きな被害をもたらした台風の影響だ。
ドングリといっても、雑木林をみると色々な種類がある。コナラは網目模様の帽子で可愛らしい、あの帽子は殻斗(かくと)と呼ぶらしい。マテバシイはもっと縦長。本来は九州以南の自生とのことだが、世田谷の雑木林にあるのは薪炭用に植林された名残りとか。生でも食べられるよ、まあまあ美味しいよ、と70代の方は教えてくださるが、食べたことはない。
クヌギは丸くて大きくよく目立つ。帽子がイソギンチャクの触手のような鱗片状。ナラでもカシでもまとめて「ドングリ!」と呼ぶ子ども達も、これは別格で「クヌギ」と言っている。樹液もよく出て昆虫も集まる、雑木林の中のクヌギはなんだか存在感がある。
艶々の小さい実がたくさん落ちている・・と思うとシラカシ。カシ類の殻斗は縞模様なので区別がつく。街路樹や庭木、学校の中にもよく見かける。常緑だからか、いや結構大きくなるし剪定も必要なのに。
このあたりのドングリの仲間はこれぐらいかなと思っていたらスダジイがあった。葉っぱを見上げると裏が光って金色にみえる。殻斗に覆われて熟すと中から出てくるタイプ。栗みたいな味らしい。封筒に入れて電子レンジにかけるのよ、と教わった。ドングリの仲間は重力散布、地面に落ちてころころ転がった先で芽を出すのだ。
秋には色々な実が熟す。赤い実をつけるムクノキにはどちらが先に由来するのかわからないムクドリが来ている。ハゼノキは川の近くに真っ黒なリースのような実をたくさんつけている。シャリンバイは鳥に食べて貰えるように赤から紫、そして深い黒へと変化をみせる。
雑木林と川添いを移動して帰宅すると、靴や服のあちこちに種子が付いている。ヤブジラミだ。5mmほどの小さなラグビーボール状、その表面全体に微細な突起がついている。このタイプの種子の鋭い先端はちゃんと返しがついていて、隙間に入り込んで、とれない。この形状で超小型発信器を作ったらスパイ用品で売れないかと思うほどに精巧。できるだけ遠くへ移動し、勢力拡大したい。種子の知恵と工夫は見習うべき戦略に満ちている。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
いのちのことば社
スーザン・ハント
「緑のまきば」
「聖霊とその働き」