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世田谷通信(206)
猫草
前々から被害拡大の話は聞いていたが、ついに来た。カシノナガキクイムシという5mmほどの害虫である。林野庁によると「平成30年度の全国のナラ枯れ被害量は、前年度より減少し、約4万5千立方メートルとなりました。」ってさっぱり広さの実感がない。東京ドーム何個分か。神宮球場なら実感がわくのに。それはさておき、グラフをみると平成12年から被害が拡大し、ピークは平成22年の32.5万立方メートル。いまは減少傾向にあるので、対策は有効ということだろう。
さてこの通称カシナガ。全国で猛威をふるってナラやカシの森をまるごと枯らす。大径木が好みで、幹に無数の穴をあけて中に侵入する。木の中にアリの巣のように大量の卵を産み付け、幼虫が木の内部を食い荒らす。水を吸えない木は枯れ、夏だというのに真っ赤な葉となりやがて枯れる。やっかいなのは単に食い荒らすだけではなく、ナラ菌というカビの仲間を運ぶ。つまり伝染病を媒介している点だ。わざわざ雌の背中には菌を運ぶ穴が開いている。確信犯だ。この菌のせいで木質部がスカスカになる。森ごと立ち枯れ多発、やがて倒木となると被害は甚大だ。
成城の里山でも、数本の木に沢山の穴、そしてフラスとよばれる大量の木くずを発見。カシナガが内部に侵入した証拠だ。狙われたのは80年以上の古木、弱っている木で遊歩道近くなので心配である。
カシナガが本領を発揮するのは翌年の梅雨前だ。木の中ですくすく育った何万という幼虫が成虫になり次のターゲットを求めて一斉に飛び立つ。特に被害にあうのは近くの特定の古木に集中するらしい。これをマスアタックと呼ぶ。
ここまでわかっているのだから対策もある。薬、伐倒、フェロモンのおとりなどの方法が試されている。殺虫剤は木へのダメージがあるし他の希少種も死んでしまう。伐るにしても伐った後の木は食い荒らされ材として使えない。
というわけでトラップだ!ということになった。今回は簡単にクリアファイルを使った。品定め中のカシナガが幹の周囲を旋回する習性を利用し、幹にクリアファイルを貼ってその下に洗剤入りの水を貯め、衝突させて水に落として駆除、というシンプルな作戦だ。毎週トラップの回収をする手間もあるが、毎回数百もかかっているとちょっと嬉しい。しかしたとえカシナガをやり過ごしても、クビアカツヤカミキリや新種の菌や伝染病は発生するだろう。ヒトだけではなく、植物も、動物や昆虫も新たな脅威と戦っている。目に見えない菌の世界でも新旧の戦いがある。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
いのちのことば社
スーザン・ハント
「緑のまきば」
「聖霊とその働き」