あなたに聖書を

 

　あなたに聖書を

　　　　　　　篠田　潔

 

　アメリカがイラクに戦争を仕掛けて４年を越えました。この戦争を巡ってアメリカやブッシュ政権に対する批判が強く出ていますが、ブッシュ大統領がクリスチャンであるということでもって、キリスト教に対する批判の声も挙がっています。聖書によれば、キリストは「あなたの敵を愛しなさい」と言われた方ですから、ブッシュ大統領は、キリストが言われたことをどう聞いているか、非常に疑問に思っています。

　それとパレスチナでの紛争を巡って、これを宗教戦争と見る見方が強くありまして、こういう戦争が起こるのはユダヤ教にしても、イスラムにしても、キリスト教にしても、みな一神教のせいだ、みたいに言う人も少なくありません。　それに比べると多神教の世界ではお互いに共存しているから、こんなことはないみたいに言われる人もいます。

　しかし、私たちの国にしたって、かつての戦争を聖戦と自認し、天皇を現人神（あらひとがみ）と信じて、一致団結して戦ったのですから、その限りにおいては一神教であったと思うんです。

　問題は、一神教か多神教かということよりも、そこで何が一番大切なこととされているかと言うことと、それが実際にどう生かされているかということにあります。

　キリストは「自分を愛するようにあなたの隣り人を愛しなさい」と言われました。「隣り人」というのは、近い場所にいる誰それのことではありません。私なら私、あなたならあなたに愛があるなら見い出すことが出来るのが「隣り人」なのです。

　愛が無ければ世界中何処にも隣り人などいません。マザー・テレサにとって、インドの路上で倒れている老人たちは彼女の隣り人でした。彼女に愛があったからです。

　キリストは、この世で失われた人たちにとって最も良い隣り人でした。全ての人の隣り人となるため、キリストはこの世に来られ、命を捨てられました。このキリストを信じ、この方に聞き従がうことがキリスト教において一番大切なことでありますから、戦争を始めることはないはずです。

　一神教か多神教かを議論していても始まりません。キリストを信じて生きることです。平和はそれによって実現すると信じて、隣り人を愛することが私たちの課題であると思っています。

（参照聖句・ルカ福音書１０・２７）

（電話によるメッセージより・日本基督教団隠退教師・

元「キリストへの時間」協力委員・ラジオ説教者）