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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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…キリスト教…
    社会福祉活動のあゆみ(4)
  旧約時代の貧しい人々の救済
 
  貧しい人々の救済
 この回から暫く聖書の箇所から今日で言う「社会福祉」の考え方をご紹介いたします。以下の聖書の箇所は、その一つの例に過ぎませんので、皆様ご自身でも「社会福祉」の考え方に関係のある聖書の箇所を探して下さい。それから、どうか聖句の前後も合わせてお読みいただきたいと思います。
 
 旧約時代における貧しい人々の救済と言えば、それはイスラエル王国からユダヤ王国までと考えることも出来ます。ユダヤ人には、その歴史の極く初期の時代から、貧しい人々、病人、やもめ、孤児、異国人に対する関心と支援は、当時の人々の社会生活や個人生活の一部でした。旧約聖書には、困っている他の人々に対して、支援の手を差し伸べるように期待される領域とその方法、その理由、そして目的が具体的に示されています。貧しい人々への救済に関する規定は、モーセ5書の中に示されていると言えます。そこには、大切なことですが、社会的弱者、貧困者の救済はイスラエル人の義務であるという根本的信仰理念がみられます。義務と定められたことから当然の結果として、社会的弱者や貧困者は救済される権利があると考えられます。これらの規定は、神によって定められたものですから、これに応答・実践する人は、神と真理を実践する人だと信じられていました。
では、その規定とはどのようなものであるかを聖書のみ言葉から見たいと思います。e72062c8.jpg
1 あなたの神、主は、あなたに嗣業として与えた土地において、必ずあなたを祝福されるから、貧しい者はい 
    なくなるが、…。今日あなたに命じるこの戒めをすべて忠実に守りなさい。(申命記15:5~6)
2 あなたの神、主が与えられる土地で、どこかの町に貧しい同胞が一人でもいるならば、その貧しい同胞に対  して心をかたくなにせず、手を閉ざすことなく、彼に手を大きく開いて、必要とするものを十分に貸し与えなさい。(申命記15:7~8)
3 彼に必ず与えなさい。また与えるとき、心に未練があってはならない。このことのために、あなたの神、主はあなたの手の働きすべてを祝福してくださる。この国から貧しい者がいなくなることはないであろう。それゆえ、わたしはあなたに命じる。この国に住む同胞のうち、生活に苦しむ貧しい者に手を大きく開きなさい。(申命記15:10~12)
 貧しい人々への救済は、神を喜ばす大切な一つの方法であることが分かります。当時は、現代のように、貧しい人々への救済が制度として確立していたわけではありません。あくまでも、個人的に実行されていたのです。実行しない個人がいても、問題にされなかったかも知れません。しかし、モーセの律法で、これだけは皆が実行しなければならないという最低限度の規定が、次のようになされました。
1 あなたは6年の間、自分の土地に種を蒔き、産物を取り入れなさい。しかし、7年目には、それを休ませて、休閑地としなければならない。あなたの民の乏しい者が食べ、残りを野の獣に食べさせるがよい。ぶどう畑、オリーブ畑の場合も同じようにしなければならない。(出エジプト23:10~11)
2 3年目ごとに、その年の収穫の十分の一を取り分け、町の中に蓄えておき、あなたのうちに嗣業の割り当てのないレビ人や、町の中にいる寄留者、孤児、寡婦がそれを食べて満ち足りることができるようにしなさい。そうすれば、あなたの行うすべての手の業について、あなたの神、主はあなたを祝福するであろう。(申命記14:28~29)
3 7年目ごとに負債を免除しなさい。負債免除のしかたは次のとおりである。だれでも隣人に貸した者は皆、負債を免除しなければならない。同胞である隣人から取り立ててはならない。主が負債の免除の布告をされたからである。外国人からは取り立ててもよいが、同胞である場合は負債を免除しなければならない。(申命記15:1~3)
4 畑で穀物を刈り入れるとき、一束畑に忘れても、取りに戻ってはならない。それは寄留者、孤児、寡婦のものとしなさい。こうしてあなたの手の業すべてについて、あなたの神、主はあなたを祝福される。オリーブの実を打ち落とすときは、後で枝をくまなく捜してはならない。それは寄留者、孤児、寡婦のものとしなさい。ぶどうの取り入れをするときは、後で摘み尽してはならない。それは寄留者、孤児、寡婦のものとしなさい。あなたは、エジプトの国で奴隷であったことを思い起こしなさい。わたしはそれゆえ、あなたにこのことを行うように命じるのである。(申命記24:19~22)
5 穀物を収穫するときは、畑の隅まで刈り尽くしてはならない。収穫後の落ち穂を拾い集めてはならない。ぶどうも、摘み尽くしてはならない。ぶどう畑の落ちた実を拾い集めてはならない。これらは貧しい者や寄留者のために残しておかなければならない。わたしはあなたたちの神、主である。(レビ記19:9~10)
6 寄留者や孤児の権利をゆがめてはならない。寡婦の着物を質に取ってはならない。(申命記24:17)
 
 このように貧しい寡婦と孤児、そして異邦人に対して、特に関心を払ったようです。異国人というのは、他国からイスラエルに入って来た亡命者のことです。ユダヤ民族の間での貧しい人々への救済に関するいろいろの掟をみますと、土地は神の所有であって、人間は僕、用益権の所有者に過ぎないというのが明白な原則です。ですから、神から命じられたら、その土地の収穫物を割いて、貧しい人々に与えるのはごく当然だという根本理念がありました。
 エゼキエル書47章21~23節には、次のような言葉がありますので、ご紹介しましょう。
 「あなたたちは、この土地を自分たちイスラエルの各部族に分けねばならない。この土地を、あなたたち自身とあなたたちの間に滞在し、あなたたちの間で子をもうけるにいたった外国人に、くじで嗣業として割り当てねばならない。彼らをイスラエルの子らの中で同じ資格のある者として扱わねばならない。あなたたちと共に彼らも嗣業をくじでイスラエの部族の間に割り当てねばならない。外国人には、その滞在している部族の中で嗣業を与えねばならない」と主なる神は言われます。
 
 今日でも、ユダヤ人の教育は幼児から「貧しい人がいたら何かをしてあげよ」という教訓を心に刻むことにあると言われています。ユダヤ人の慈善事業運動がなぜ成功するのでしょうか。その理由は、貧しい人への思いやり、ユダヤ人の存続のための富める者の義務であるという思想・信仰があるからと言えましょう。しかし、他にも理由があります。それは共同体の力、即ち、慈善行為によって、献金することによって、ユダヤ人共同体で一人前の資格が認められることになっているのです。寄付が共同体入会金でもありました。しかし、このように複雑な理由・動機があったとしても、社会的風潮の根源を遡れば、やはりモーセの律法に由来していることは明白です。
 「社会事業の諸根源」と言う書物の中で次のように言っています。
 「一般にユダヤ人は富が重要視されて、物質主義者とみなされた面がある。だからと言ってユダヤ人の富める人々は、彼らの伝統的な価値である貧民救済を忘れてはいない。ユダヤ人にとっての富の蓄積は、富そのもののため、或いは私的な現世的享楽が優先したのではなかった。富には義務が伴っていた。その義務を引き継ぎユダヤ人の間で、果たされているということは、現在、全世界におけるユダヤ人の救済のためにまた、イスラエル建国のために莫大な献金がなされていることによって十分証明される」。
 
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書籍紹介
    8858e3b6.jpg
エネルギー技術の
 社会意思決定

日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
 定価(本体5200+税)
=推薦の言葉=
森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授

本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
 共著者・編者
鈴木達治郎
電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
寿楽浩太
東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本

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教会における女性のリーダーシップ
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント 
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
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「緑のまきば」
吉岡 繁著
(元神戸改革派神学校校長)
「あとがき」より
…。学徒出陣、友人の死、…。それが私のその後の人生の出発点であり、常に立ち帰るべき原点ということでしょう。…。生涯求道者と自称しています。ここで取り上げた問題の多くは、家での対話から生まれたものです。家では勿論日常茶飯事からいろいろのレベルの会話がありますが夫婦が最も熱くなって論じ合う会話の一端がここに反映されています。
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「聖霊とその働き」
エドウイン・H・パーマー著
鈴木英昭訳
「著者のことば」より
…。近年になって、御霊の働きについて短時間で学ぶ傾向が一層強まっている。しかしその学びもおもに、クリスチャン生活における御霊の働きを分析するということに向けられている。つまり、再生と聖化に向けられていて、他の面における御霊の広範囲な働きが無視されている。本書はクリスチャン生活以外の面の聖霊について新しい聖書研究が必要なこと、こうした理由から書かれている。
定価 1500円
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「十戒と主の祈り」
鈴木英昭著
 「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
定価 1800円
おすすめ本
4008bd9e.jpg
われらの教会と伝道
C.ジョン・ミラー著
鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
定価 1000円
おすすめ本

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さんびか物語
ポーリン・マカルピン著
著者の言葉
讃美歌はクリスチャンにとって、1つの大きな宝物といえます。教会で神様を礼拝する時にも、家庭礼拝の時にも、友との親しい交わりの時にも、そして、悲しい時、うれしい時などに讃美歌が歌える特権は、本当に素晴しいことでございます。しかし、讃美歌の本当のメッセージを知るためには、主イエス・キリストと父なる神様への信仰、み霊なる神様への信頼が必要であります。また、作曲者の願い、讃美歌の歌詞の背景にあるもの、その土台である神様のみ言葉の聖書に触れ、教えられることも大切であります。ここには皆様が広く愛唱されている50曲を選びました。
定価 3000円

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