2023年7月号
№193
号
通巻877号
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ビルマ
戦犯者の獄中記 (1) 遠山良作 著
昭和20年
8月15日
-終戦を迎えて-
“敵の落下謀者潜入せり”との情報により「エデゴン」村(モールメン北方15kmにある部落)に出張、その捜査に当たっていたが、東分隊長(東(ひがし)登大尉)より、“捜索を中止して至急帰隊せよ”との命令を受けて帰隊した。分隊の庁舎は爆撃されて丘の上にあるパゴダ(仏塔)の寺院に引越していた。
分隊長より「日本軍は無条件で連合軍に降伏した。陛下よりは詔勅を賜り、祖国日本に帰るまでは軽率妄動してはならない」旨を伝達された。
一瞬、目の前が暗くなる思いである。決して負けることのない神州不滅の日本が負けた!最後まで祖国の勝利を信じて死んで逝った多くの戦友は、きっと地下で慟哭しているだろう。これからの日本は一体どうなることか。そして俺はどうすべきか、と不安と悲しみが脳裏をかけ巡る。
敗戦の 詔勅ききて 泣きの得ず 空を仰ぎて唇噛みぬ
忍べよと さとし給える 大君の詔勅の声 つつしみてきく
じっとしてはいられない。モールメン市が一望できるパゴダの丘に一人登る。市街は静かで平日と少しも変らない。ただ敵機がバラまいた宣伝文があちこちに落ちている。まだ日本軍の降伏を報じるビラは一つもない。雨期というのに今日は珍しく空は青い。遥か東の空をじっと見つめる。祖国日本のこと、父母は如何に、と心は祖国へと走る。
悲しみよりも憤りともつかない涙が急に頬に伝わる。拭えども拭えども流れる涙はどうしようもない。今まで祖国のために戦って死ぬことは当然と考えていたが、戦いに敗れたと知ると、生きて故郷に帰りたい。一日も早く日本に帰りたいとの思いでいっぱいになる。
遥かなる 東のかなた 見放けつつ 故郷を思えり 敗戦の夕べ
10月11日
-モールメン刑務所に入る-
憲兵全員(ビルマ派遣)はモールメン市より約30km東北にある、モン人の部落に分宿し、帰還船の来る日を心待ちにしていた。新しい日本に帰ったらこんな仕事をしようなどと、将来のことを友と語らう毎日の生活であったが、突然「ムドン町に移動せよ」との命令が出た。イギリス軍の指示である。
朝早く英軍が準備したトラックに分乗してムドン町(モールメンより東方13km位)の学校の広場に集められた。広い校庭に並んだわれわれを、武装した英軍が四方から囲んでいる。持っていた小銃、拳銃、軍刀等の一切は取り上げられ、一定の場所に積み上げられた。
武装解除が終わると直ぐに20名ごとにトラックに乗せられた。トラックには英兵が数名ずつ分乗し、前後左右から銃口をわれわれに向けている。どこへ連れて行かれるのか、外部が見えないので分らない。このままどこかで殺されてしまうのではないか、とさえ思えた。
数十分の後、自動車が止まり、下ろされた場所はモールメン刑務所の前である。入口では一人一人の身体検査が行われた。パンツまで脱ぎ、肛門まで調べる厳しさである。所持品として認められた物は毛布二枚、水筒、飯盒、衣類のみである。時計、書籍、筆記具等は全部取り上げられた。ここの警戒は実に厳重である。高い塀の監視所には機関銃が据えられている。全ての銃口は刑務所内のわれわれに向けられている。
私物検査をしている途中で通訳が久米憲兵司令官、東分隊長(私の上官)、藤原准将(モールメン隊付)たち6名の者を呼び出し独房に移した。おそらく戦犯容疑者として取調べるためであろう。
私は木造二階建ての格子戸のある雑房(60名位入れる)の1階に入れられた。入獄した憲兵は全部で372名である。この刑務所は私が所属している、モールメン憲兵隊が終戦の日まで留置場として使っていた場所である。敗戦とともに、戦争犯罪容疑者として監禁されるとは・・・。勝者と敗者の違いをこれほど身近に感じたことはない。昨日まで日本に帰ることを夢にまで見て、帰還する船を待っていたというのに、と思うと、前途は不安でいっぱいである。
われらみな 背に銃口を 感じつつ モールメン獄の 門をくぐりぬ
この文章の転載はご子息・遠山信和師の許可を得ております。
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緑を大切に!
書籍紹介
エネルギー技術の
社会意思決定
日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
定価(本体5200+税)
=推薦の言葉=
森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授
「本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
共著者・編者
鈴木達治郎
(財)電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
(財)電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
(財)電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
寿楽浩太
東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
(財)電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント
スーザン・ハント
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
「緑のまきば」
吉岡 繁著
(元神戸改革派神学校校長)
「あとがき」より
…。学徒出陣、友人の死、…。それが私のその後の人生の出発点であり、常に立ち帰るべき原点ということでしょう。…。生涯求道者と自称しています。ここで取り上げた問題の多くは、家での対話から生まれたものです。家では勿論日常茶飯事からいろいろのレベルの会話がありますが夫婦が最も熱くなって論じ合う会話の一端がここに反映されています。
「聖霊とその働き」
エドウイン・H・パーマー著
鈴木英昭訳
「著者のことば」より
…。近年になって、御霊の働きについて短時間で学ぶ傾向が一層強まっている。しかしその学びもおもに、クリスチャン生活における御霊の働きを分析するということに向けられている。つまり、再生と聖化に向けられていて、他の面における御霊の広範囲な働きが無視されている。本書はクリスチャン生活以外の面の聖霊について新しい聖書研究が必要なこと、こうした理由から書かれている。
定価 1500円
鈴木英昭著
「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
定価 1800円
おすすめ本
C.ジョン・ミラー著
鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
定価 1000円
おすすめ本
ポーリン・マカルピン著
著者の言葉
讃美歌はクリスチャンにとって、1つの大きな宝物といえます。教会で神様を礼拝する時にも、家庭礼拝の時にも、友との親しい交わりの時にも、そして、悲しい時、うれしい時などに讃美歌が歌える特権は、本当に素晴しいことでございます。しかし、讃美歌の本当のメッセージを知るためには、主イエス・キリストと父なる神様への信仰、み霊なる神様への信頼が必要であります。また、作曲者の願い、讃美歌の歌詞の背景にあるもの、その土台である神様のみ言葉の聖書に触れ、教えられることも大切であります。ここには皆様が広く愛唱されている50曲を選びました。
定価 3000円