2023年7月号
№193
号
通巻877号
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ビルマ
昭和20年
11月23日
-キリスト者との出会い-
ビルマ勤務の4年間に一度もマラリヤに侵されたことはなかったが、連日行われる厳しい取調べと、牢獄生活は、精神的にも、肉体的にも疲労を覚える。今日は朝から、ぞくぞくと寒さを覚えるので、取調べには応じられそうにない。軍医に診断を受けることを申し出た。熱は40度もあり、病室に入室することが決まった。病室は格子のある雑房内に寝台が置いてあるだけである。ありがたいことは、取調べや作業がないことである。医師は入獄者である山崎軍医(憲兵隊の軍医)と加納衛生兵が助手として勤務していた。
約40名いる患者の大部分はマラリヤのようである。この患者の中に若林大尉がいた。彼はマラリヤと赤痢に侵され、相当な重病人で高熱のためか、時々うめくような声を出して苦しんでいた。重病であるにも拘らず、彼は、われわれ患者にも、どなるように、あれをしろ!! これをやれ!! と命令的に言いつける。
誰も返事すらしない。「偉そうなことを言うな、戦争に負けて、その上刑務所に入れられてもまだ将校づらしている。あんな奴は、死んでしまえ」と、つぶやく者もいた。加納看護兵は、この若林大尉に、どなられても、叱られても、頭を冷やしたり、着替えをさせ、お粥を作ったりして、懸命に看護している。多くの者は「加納、あんな奴の看護などやめとけ」と言っても、彼は笑って取りあわない。ただ親身も及ばない看護を続ける。
私にはこの加納兵長の姿は異様とさえ感じられ、また驚きでさえあった。隣りに寝ていた林大尉に「加納兵長と若林大尉とは、何か関係があるのでしょうか」と尋ねた。
林大尉は「何もないさ、加納くんはクリスチャンだよ。彼が内地にいた頃、悲しみと苦しい経験のあまり、生きる希望を失い、2度までも自殺しようとしたが、「一粒の麦」を書いた賀川豊彦に助けられて、クリスチャンになったそうだよ」と話してくれた。
この話を聞いた私は、理解に苦しんだ。キリスト教徒とは、敵国英米の宗教であり、この宗教を信じる者は国賊であるとさえ教えられてきたからである。国賊であるはずの加納兵長は、一体何のためにあのようなことをするのか・・・。
牢獄の生活で、多くの者の心はすさんでいる。日本に帰るためには、信頼していた戦友ですら裏切り、戦犯関係の事件があれば、「俺は知らないよ」との態度をし、憎み合うことは珍しくない。これが人間の本来の姿かもしれないが、悲しいことである。
このような獄中生活にあって、加納兵長の行為は、どこか違う世界に生きている人間のように思え、私は心に深い感銘を覚えた。
(注)加納兵長の牢獄での出来事は生涯忘れることができないばかりか、私がキリスト者になるきっかけでもあり、動機でもあった。
この文章の転載はご子息の許可を得ております。
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書籍紹介
エネルギー技術の
社会意思決定
日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
定価(本体5200+税)
=推薦の言葉=
森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授
「本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
共著者・編者
鈴木達治郎
(財)電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
(財)電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
(財)電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
寿楽浩太
東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
(財)電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント
スーザン・ハント
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
「緑のまきば」
吉岡 繁著
(元神戸改革派神学校校長)
「あとがき」より
…。学徒出陣、友人の死、…。それが私のその後の人生の出発点であり、常に立ち帰るべき原点ということでしょう。…。生涯求道者と自称しています。ここで取り上げた問題の多くは、家での対話から生まれたものです。家では勿論日常茶飯事からいろいろのレベルの会話がありますが夫婦が最も熱くなって論じ合う会話の一端がここに反映されています。
「聖霊とその働き」
エドウイン・H・パーマー著
鈴木英昭訳
「著者のことば」より
…。近年になって、御霊の働きについて短時間で学ぶ傾向が一層強まっている。しかしその学びもおもに、クリスチャン生活における御霊の働きを分析するということに向けられている。つまり、再生と聖化に向けられていて、他の面における御霊の広範囲な働きが無視されている。本書はクリスチャン生活以外の面の聖霊について新しい聖書研究が必要なこと、こうした理由から書かれている。
定価 1500円
鈴木英昭著
「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
定価 1800円
おすすめ本
C.ジョン・ミラー著
鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
定価 1000円
おすすめ本
ポーリン・マカルピン著
著者の言葉
讃美歌はクリスチャンにとって、1つの大きな宝物といえます。教会で神様を礼拝する時にも、家庭礼拝の時にも、友との親しい交わりの時にも、そして、悲しい時、うれしい時などに讃美歌が歌える特権は、本当に素晴しいことでございます。しかし、讃美歌の本当のメッセージを知るためには、主イエス・キリストと父なる神様への信仰、み霊なる神様への信頼が必要であります。また、作曲者の願い、讃美歌の歌詞の背景にあるもの、その土台である神様のみ言葉の聖書に触れ、教えられることも大切であります。ここには皆様が広く愛唱されている50曲を選びました。
定価 3000円