2023年7月号
№193
号
通巻877号
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「ローマ人への手紙」研究 (83)
第50課 異邦人の召命とユダヤ人の拒否
9章1~11章36節(続)
E ユダヤ人の拒否は全体ではなく、残される者はやがて救われる。
11章1~10節 (2)
「神は、あらかじめ知っておられたその民を、捨てることはされなかった」(2)。この言葉を解釈するに当たって、その強調点がどこにあるかが問題になります。もし強調点を「その民」に置くならば、そこにも一つの解釈ができ、また「あらかじめ知っておられた」に強調点を置くならば、もう一つの解釈が可能になります。第一の場合には、「その民」とはイスラエルを指すことになり、その意味は、神はイスラエルの民をお捨てになってはおられない。神は予めおられたその民を捨てることはされなかったということになります。
しかし、第二の場合には、その民はイスラエルではなくて、選びの民、すなわちイスラエルの中の選ばれた者たちの意味となり、永遠より愛と慈しみをもってあらかじめ知っておられたイスラエルの中の真のイスラエル、霊的イスラエルを指すことになります。第二の意味が第一の意味に比べて、より優れていると考えられます。
第一の場合には、2節は1節の繰り返しに過ぎなくなってしまいます。しかし、第二の場合には2節はそれ自身の意味を持ってくることになります。更に、9:6~8節においてパウロはすでに、外的イスラエル(肉のイスラエル)と霊的イスラエルという核となる者との区別を明らかにしています。この考えはこの書簡において、今新しく登場して来たものではありません。
また、第二の解釈は11章の後にある部分と最も良く適合するのです。すなわち、11章においてパウロは恵みの選びによって残された者があることを語っています(5)。これらの理由から、第二の解釈の方がはるかに優れているのです。この解釈によりますと11章2a節の意味は「神はその選びの民をお捨てにならなかった。神は特にあらかじめ知っておられたイスラエルの民の中のある者たちを捨てることはされなかったのだ」となります。
これはローマ書全体の文脈に適合するばかりでなく、聖書全体の教理、すなわち、外的な目に見える社会とそのメンバーたちは罪の中に捨てられ滅びるかもしれない。しかし、神の選びの民たちは、決して捨てられないし、滅びることはありえないという教理にも適合するのです。
「あらかじめ知る」という語は、聖書では一つ以上の意味に用いられています。11章2a節に用いられているように、単に「先に知る」という意味以上のことを意味するのです。「あらかじめ知る」、あるいは「永遠より知る」という意味において、神のあらかじめの知識、すなわち、神の予知は全ての被造物と出来事を一切包含しているのです。この意味において、神はユダヤ人と同じく異邦人をもあらかじめ知っておられたのです。したがって11章2a節の「あらかじめ知る」という言葉が、単に「先だって知る」という意味に過ぎないならば、神がユダヤ人をあらかじめ知っておられると言うとき、ユダヤ人について何の特殊性も独自性もないことになってしまいます。しかし、「神はあらかじめ知っておられるその民」という言い方においては、「あらかじめ知っている」という言葉は、イスラエル人を「神の特別な配慮と慈しみを永遠より受けている」という意味にとることが適切であります。神がご自身の民としてあらかじめ慈しみと愛顧をかけておられる人々は、決して捨てられることはあり得ず、永遠に神との交わりの中に生きるのです。
J.G.ヴォス著
玉木 鎮訳
(日本キリスト改革派引退教師)
この文章の転載は訳者の許可を得ております。
第50課 異邦人の召命とユダヤ人の拒否
9章1~11章36節(続)
E ユダヤ人の拒否は全体ではなく、残される者はやがて救われる。
11章1~10節 (2)
「神は、あらかじめ知っておられたその民を、捨てることはされなかった」(2)。この言葉を解釈するに当たって、その強調点がどこにあるかが問題になります。もし強調点を「その民」に置くならば、そこにも一つの解釈ができ、また「あらかじめ知っておられた」に強調点を置くならば、もう一つの解釈が可能になります。第一の場合には、「その民」とはイスラエルを指すことになり、その意味は、神はイスラエルの民をお捨てになってはおられない。神は予めおられたその民を捨てることはされなかったということになります。
しかし、第二の場合には、その民はイスラエルではなくて、選びの民、すなわちイスラエルの中の選ばれた者たちの意味となり、永遠より愛と慈しみをもってあらかじめ知っておられたイスラエルの中の真のイスラエル、霊的イスラエルを指すことになります。第二の意味が第一の意味に比べて、より優れていると考えられます。
第一の場合には、2節は1節の繰り返しに過ぎなくなってしまいます。しかし、第二の場合には2節はそれ自身の意味を持ってくることになります。更に、9:6~8節においてパウロはすでに、外的イスラエル(肉のイスラエル)と霊的イスラエルという核となる者との区別を明らかにしています。この考えはこの書簡において、今新しく登場して来たものではありません。
また、第二の解釈は11章の後にある部分と最も良く適合するのです。すなわち、11章においてパウロは恵みの選びによって残された者があることを語っています(5)。これらの理由から、第二の解釈の方がはるかに優れているのです。この解釈によりますと11章2a節の意味は「神はその選びの民をお捨てにならなかった。神は特にあらかじめ知っておられたイスラエルの民の中のある者たちを捨てることはされなかったのだ」となります。
これはローマ書全体の文脈に適合するばかりでなく、聖書全体の教理、すなわち、外的な目に見える社会とそのメンバーたちは罪の中に捨てられ滅びるかもしれない。しかし、神の選びの民たちは、決して捨てられないし、滅びることはありえないという教理にも適合するのです。
「あらかじめ知る」という語は、聖書では一つ以上の意味に用いられています。11章2a節に用いられているように、単に「先に知る」という意味以上のことを意味するのです。「あらかじめ知る」、あるいは「永遠より知る」という意味において、神のあらかじめの知識、すなわち、神の予知は全ての被造物と出来事を一切包含しているのです。この意味において、神はユダヤ人と同じく異邦人をもあらかじめ知っておられたのです。したがって11章2a節の「あらかじめ知る」という言葉が、単に「先だって知る」という意味に過ぎないならば、神がユダヤ人をあらかじめ知っておられると言うとき、ユダヤ人について何の特殊性も独自性もないことになってしまいます。しかし、「神はあらかじめ知っておられるその民」という言い方においては、「あらかじめ知っている」という言葉は、イスラエル人を「神の特別な配慮と慈しみを永遠より受けている」という意味にとることが適切であります。神がご自身の民としてあらかじめ慈しみと愛顧をかけておられる人々は、決して捨てられることはあり得ず、永遠に神との交わりの中に生きるのです。
J.G.ヴォス著
玉木 鎮訳
(日本キリスト改革派引退教師)
この文章の転載は訳者の許可を得ております。
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緑を大切に!
書籍紹介
エネルギー技術の
社会意思決定
日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
定価(本体5200+税)
=推薦の言葉=
森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授
「本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
共著者・編者
鈴木達治郎
(財)電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
(財)電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
(財)電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
寿楽浩太
東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
(財)電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント
スーザン・ハント
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
「緑のまきば」
吉岡 繁著
(元神戸改革派神学校校長)
「あとがき」より
…。学徒出陣、友人の死、…。それが私のその後の人生の出発点であり、常に立ち帰るべき原点ということでしょう。…。生涯求道者と自称しています。ここで取り上げた問題の多くは、家での対話から生まれたものです。家では勿論日常茶飯事からいろいろのレベルの会話がありますが夫婦が最も熱くなって論じ合う会話の一端がここに反映されています。
「聖霊とその働き」
エドウイン・H・パーマー著
鈴木英昭訳
「著者のことば」より
…。近年になって、御霊の働きについて短時間で学ぶ傾向が一層強まっている。しかしその学びもおもに、クリスチャン生活における御霊の働きを分析するということに向けられている。つまり、再生と聖化に向けられていて、他の面における御霊の広範囲な働きが無視されている。本書はクリスチャン生活以外の面の聖霊について新しい聖書研究が必要なこと、こうした理由から書かれている。
定価 1500円
鈴木英昭著
「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
定価 1800円
おすすめ本
C.ジョン・ミラー著
鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
定価 1000円
おすすめ本
ポーリン・マカルピン著
著者の言葉
讃美歌はクリスチャンにとって、1つの大きな宝物といえます。教会で神様を礼拝する時にも、家庭礼拝の時にも、友との親しい交わりの時にも、そして、悲しい時、うれしい時などに讃美歌が歌える特権は、本当に素晴しいことでございます。しかし、讃美歌の本当のメッセージを知るためには、主イエス・キリストと父なる神様への信仰、み霊なる神様への信頼が必要であります。また、作曲者の願い、讃美歌の歌詞の背景にあるもの、その土台である神様のみ言葉の聖書に触れ、教えられることも大切であります。ここには皆様が広く愛唱されている50曲を選びました。
定価 3000円