ローマ人への手紙研究

　「ローマ人への手紙」研究　（３８）

　第３２課　義認に続くキリスト者生活

　　　　　　　６章１節～８章３９節（続）

　D　この地上の生涯において、キリスト信者が励まされる理由

　　　　　　　８章２９節～３９節（続）

　　　全能の神が私たちの見方であることの認識

　　　　　　　８章３１節～３９節

 

　「だれが、神の選ばれた者たちを訴えるのか。神は彼らを義とされたのである。誰が、私たちを罪に定めるのか。キリスト・イエスは、死んで、否、よみがえって、神の右に座し、また、私たちのためにとりなして下さるのである」。（８：３３～３４）

　

　神がキリスト信者を義と宣言しておられるのです。それでは、一体何者がキリスト者らを罪に定めることができるのでしょうか。人が義とされるとき、彼に関する一切の義の要求が完全に満たされていることが宣言されているのであります。世界の至聖の法廷、即ち、神ご自身の裁きの座の判決を覆す如何なる法廷もないのであります。

　「『義とする』という言葉の意味は、正義の要求が満たされたことを宣言することである。至高の裁判官である神が、その判決を宣言されるならば、それは真理そのものに他ならず、何者の口をもふさがれるのである。いかなる理性的被造物も、いかなる良心も、神が義とされた者の刑罰を要求することはできないのである。もし、正義が満たされていないのであれば、義認も良心の平和もありえないし、また、救いの保証も、神の道徳的支配もないことになってしまう。聖書は決して単なる許しというものを語ってはいない。正義を満たすという根拠なしには神の許しということはありえないのである。人間が律法の刑罰より自由にされ、神の愛顧の中に回復されるということは、その人間を義人と宣言することによって（すなわち、彼に関する正義が満たされたと宣言することによって）なされるるのである」（チャールズ・ホッジ）。

 

　「だれが、わたしたちを罪に定めるのか」。その意味は「神が義とされ、正しいと宣言されたキリスト信者を、誰一人として罪に定めることはできない」のです。

　パウロは次に、４つの強力な理由を挙げて、何故、誰一人、キリスト信者を罪に定めることができないかを明らかにしています。

１）キリストの死　２）キリストの復活　３）キリストが神の右に座しておられること　４）キリストは天において、その民たちのために執り成しをしておられること。この４つです。　　　

 

ここで注意すべきことは、パウロは、誰もキリスト信者を罪に定めることができない理由の中に、キリスト信者の行いについて全く触れていないことです。パウロは信者の真摯、忠実、熱心、愛、善行などが、キリスト信者を罪に定められることから守っているとは言っていません。キリスト者が罪に定められることから守られているのは、彼らの人格、善行、信仰によるのではなく、先に挙げた４つのキリストの贖いの事実によるのです。