2023年7月号
№193
号
通巻877号
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ビルマ
戦犯者の獄中記 (12) 遠山良作 著
昭和21年
5月30日
-「エデゴン」事件弁護の概要-(「バーンズ」大尉の弁論)・・・4・・・
最後に遠山軍曹であるが、もしも証人たちの証言を信ずるならば、彼は本件の真の悪党である。最後に立った証人「ムサフラアーメット」は、彼は本人及び他の部落民から「恐れられていた」と陳述している。余は彼が彼らから恐れられていたということは、疑わない。何故ならば、彼は常に部落で行動したのみならず、彼の情報による結果彼ら証人が逮捕された。彼らが経験した虐待や苦痛は直接遠山が原因しているからである。
遠山が法廷に現われるや、如何なることが起こったか、証人は一人残らず彼を指名した。しかし「モールメン」刑務所での首実験の際は僅か一人のみ彼を指している。
我々には証人たちが、一見してよく知り得ることの出来る遠山が、被告席にいるのを見た時、如何なることを考えたかを想像し得る。彼らは「彼奴だ」“彼こそ全ての禍の因”「拷問の若干を彼の責任にしてやろう」と話したのではなかろうか、・・・然し弁護が進むに従い彼が刑務所にいたのは僅か10分位でそれも或る姓名を認めるためであったと聞いた証人たちは如何に失望したことであろう・・・・。中島軍曹は当時監視についていたのでこの点を認めている。
前記三名の行動は東大尉、中山少尉及び福田曹長たちにより裏書されている。余はここにこれら三名の人物が何ら本事件についての関わりのないことは全く疑う余地のないものであることを申し開き彼らの無罪を主張するものである。
法廷は福田曹長の証言の態度に印象づけられたであろう。彼は本法廷に現われることにより全てを失い、何等得るところは無いにも拘らず、彼は何の言い抜けもせずまた、何等躊躇することなく、透明的な、正直さをもって証言している。以て余は彼の証言に対し特別なる注意を払うべく法廷に乞うものである。
中山少尉以外は被告の何人といえども取調に参加せずと福田は断言している。更に福田の証言は証人たちの言明が如何に真実であるかを測定するに有効な資料である。「ハジ、モハマットサレー」は老人にして刑務所では特別の待遇を受けている。またこの老人が検挙された主な理由の一つは彼の同胞の邪推を除くためであった。更に重要なる点は虐待を受けた人間はこの二名であると言って、福田が指した者は本法廷の証人席において感動のあまり泣き出した二名の証人であることである。
他の留置人が如何なる待遇を受けたかについては、福田は何ら直接の証言は出していないが、取調官の間に連絡があったと言明している。
更に次の二点に興味がある。第一に福田は梁に吊るされた際には目隠しされて、足は地面についていなかったと言っている。第二に電気拷問に使用した器具は電話機であったことである。英軍の通信兵はその電話機の試験のため、自身に対しこの「拷問」を行なったものである。これは不愉快な気持ちを与えるのみで何等危険なものに非ず。意識を失うようなことはあり得ない。
次に私は被告人が転じてこの法廷において証言をした九名の証言に言及しよう。これら九名の如き不完全極まる人間はちょっと他にはないであろう。彼らの大部分の者は以前になした陳述書の中に述べるまでもないと考えた残虐無道なる拷問について長たらしい供述をした。これらは彼らが申立てをした時より証言台に立つまでの間に考えついた作り事であると判断するのは当り前のことではなかろうか。尚彼らの中で一人たりとも首実験において指したのと同一人(真に同一人だけ)を被告人の中に指した者はいない。
彼らの中のある者は首実験の際に一、二名より指していないにもかかわらず被告人席の全員を指した。―中略―この件に関し、検事は二つのことを立証しなければならなかった。(1)拷問の実在、(2)被告人がこれらの拷問を許可しあるいは目撃し或いは自身それを行なったか否や。しかるに彼は(検事)哀れにも失敗せり、この件は一転の疑問なきままに立証されねばならぬのに疑問は山程ある。証人の虐待に関する申立ては如何にも誇張されているため、何ごとかなさん。そしてこれは不可能であろう。
被告人たちも彼らの言が間違っていることが立証されるまでは他の者と同様に信用される権利を有する。而して被告全員は当法廷にて、彼らの中で中山少尉ただ一人が訊問を行なったことを証言している。取調は中山、井出、福田の外に一、二名の通訳によって行なわれたことは明らかになった。取調は彼らの専門の仕事であり彼ら以外の何者もこれに関与していない。
裁判長殿、最後に私は被告人に対するこの度の告訴は一点の疑問なきまでに立証されねばならぬ。そのため、私は全員に対し法廷は無罪の宣告を与えられんことを、自信を持って主張します。 (了)
「註」エデゴン事件の弁護士は英人「バーンズ」大尉であった。彼が裁判長に提出した英文を訳したもので、穴沢定志弁護士が入手し、ひそかに持ち帰ったのである。
この文章の転載はご子息の許可を得ております。
戦犯者の獄中記 (12) 遠山良作 著
昭和21年
5月30日
-「エデゴン」事件弁護の概要-(「バーンズ」大尉の弁論)・・・4・・・
最後に遠山軍曹であるが、もしも証人たちの証言を信ずるならば、彼は本件の真の悪党である。最後に立った証人「ムサフラアーメット」は、彼は本人及び他の部落民から「恐れられていた」と陳述している。余は彼が彼らから恐れられていたということは、疑わない。何故ならば、彼は常に部落で行動したのみならず、彼の情報による結果彼ら証人が逮捕された。彼らが経験した虐待や苦痛は直接遠山が原因しているからである。
遠山が法廷に現われるや、如何なることが起こったか、証人は一人残らず彼を指名した。しかし「モールメン」刑務所での首実験の際は僅か一人のみ彼を指している。
我々には証人たちが、一見してよく知り得ることの出来る遠山が、被告席にいるのを見た時、如何なることを考えたかを想像し得る。彼らは「彼奴だ」“彼こそ全ての禍の因”「拷問の若干を彼の責任にしてやろう」と話したのではなかろうか、・・・然し弁護が進むに従い彼が刑務所にいたのは僅か10分位でそれも或る姓名を認めるためであったと聞いた証人たちは如何に失望したことであろう・・・・。中島軍曹は当時監視についていたのでこの点を認めている。
前記三名の行動は東大尉、中山少尉及び福田曹長たちにより裏書されている。余はここにこれら三名の人物が何ら本事件についての関わりのないことは全く疑う余地のないものであることを申し開き彼らの無罪を主張するものである。
法廷は福田曹長の証言の態度に印象づけられたであろう。彼は本法廷に現われることにより全てを失い、何等得るところは無いにも拘らず、彼は何の言い抜けもせずまた、何等躊躇することなく、透明的な、正直さをもって証言している。以て余は彼の証言に対し特別なる注意を払うべく法廷に乞うものである。
中山少尉以外は被告の何人といえども取調に参加せずと福田は断言している。更に福田の証言は証人たちの言明が如何に真実であるかを測定するに有効な資料である。「ハジ、モハマットサレー」は老人にして刑務所では特別の待遇を受けている。またこの老人が検挙された主な理由の一つは彼の同胞の邪推を除くためであった。更に重要なる点は虐待を受けた人間はこの二名であると言って、福田が指した者は本法廷の証人席において感動のあまり泣き出した二名の証人であることである。
他の留置人が如何なる待遇を受けたかについては、福田は何ら直接の証言は出していないが、取調官の間に連絡があったと言明している。
更に次の二点に興味がある。第一に福田は梁に吊るされた際には目隠しされて、足は地面についていなかったと言っている。第二に電気拷問に使用した器具は電話機であったことである。英軍の通信兵はその電話機の試験のため、自身に対しこの「拷問」を行なったものである。これは不愉快な気持ちを与えるのみで何等危険なものに非ず。意識を失うようなことはあり得ない。
次に私は被告人が転じてこの法廷において証言をした九名の証言に言及しよう。これら九名の如き不完全極まる人間はちょっと他にはないであろう。彼らの大部分の者は以前になした陳述書の中に述べるまでもないと考えた残虐無道なる拷問について長たらしい供述をした。これらは彼らが申立てをした時より証言台に立つまでの間に考えついた作り事であると判断するのは当り前のことではなかろうか。尚彼らの中で一人たりとも首実験において指したのと同一人(真に同一人だけ)を被告人の中に指した者はいない。
彼らの中のある者は首実験の際に一、二名より指していないにもかかわらず被告人席の全員を指した。―中略―この件に関し、検事は二つのことを立証しなければならなかった。(1)拷問の実在、(2)被告人がこれらの拷問を許可しあるいは目撃し或いは自身それを行なったか否や。しかるに彼は(検事)哀れにも失敗せり、この件は一転の疑問なきままに立証されねばならぬのに疑問は山程ある。証人の虐待に関する申立ては如何にも誇張されているため、何ごとかなさん。そしてこれは不可能であろう。
被告人たちも彼らの言が間違っていることが立証されるまでは他の者と同様に信用される権利を有する。而して被告全員は当法廷にて、彼らの中で中山少尉ただ一人が訊問を行なったことを証言している。取調は中山、井出、福田の外に一、二名の通訳によって行なわれたことは明らかになった。取調は彼らの専門の仕事であり彼ら以外の何者もこれに関与していない。
裁判長殿、最後に私は被告人に対するこの度の告訴は一点の疑問なきまでに立証されねばならぬ。そのため、私は全員に対し法廷は無罪の宣告を与えられんことを、自信を持って主張します。 (了)
「註」エデゴン事件の弁護士は英人「バーンズ」大尉であった。彼が裁判長に提出した英文を訳したもので、穴沢定志弁護士が入手し、ひそかに持ち帰ったのである。
この文章の転載はご子息の許可を得ております。
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緑を大切に!
書籍紹介
エネルギー技術の
社会意思決定
日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
定価(本体5200+税)
=推薦の言葉=
森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授
「本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
共著者・編者
鈴木達治郎
(財)電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
(財)電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
(財)電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
寿楽浩太
東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
(財)電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント
スーザン・ハント
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
「緑のまきば」
吉岡 繁著
(元神戸改革派神学校校長)
「あとがき」より
…。学徒出陣、友人の死、…。それが私のその後の人生の出発点であり、常に立ち帰るべき原点ということでしょう。…。生涯求道者と自称しています。ここで取り上げた問題の多くは、家での対話から生まれたものです。家では勿論日常茶飯事からいろいろのレベルの会話がありますが夫婦が最も熱くなって論じ合う会話の一端がここに反映されています。
「聖霊とその働き」
エドウイン・H・パーマー著
鈴木英昭訳
「著者のことば」より
…。近年になって、御霊の働きについて短時間で学ぶ傾向が一層強まっている。しかしその学びもおもに、クリスチャン生活における御霊の働きを分析するということに向けられている。つまり、再生と聖化に向けられていて、他の面における御霊の広範囲な働きが無視されている。本書はクリスチャン生活以外の面の聖霊について新しい聖書研究が必要なこと、こうした理由から書かれている。
定価 1500円
鈴木英昭著
「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
定価 1800円
おすすめ本
C.ジョン・ミラー著
鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
定価 1000円
おすすめ本
ポーリン・マカルピン著
著者の言葉
讃美歌はクリスチャンにとって、1つの大きな宝物といえます。教会で神様を礼拝する時にも、家庭礼拝の時にも、友との親しい交わりの時にも、そして、悲しい時、うれしい時などに讃美歌が歌える特権は、本当に素晴しいことでございます。しかし、讃美歌の本当のメッセージを知るためには、主イエス・キリストと父なる神様への信仰、み霊なる神様への信頼が必要であります。また、作曲者の願い、讃美歌の歌詞の背景にあるもの、その土台である神様のみ言葉の聖書に触れ、教えられることも大切であります。ここには皆様が広く愛唱されている50曲を選びました。
定価 3000円