忍者ブログ
2023年7月号  №193 号 通巻877号
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 ビルマ
  戦犯者の獄中記  (21)  遠山良作 著

戦犯裁判は続く

9月5日
 第8回目の裁判は山脇一二三憲兵曹長に対する拷問致死事件で死刑の判決であった。
9月15日はタボイ警備隊情報係、林善人大尉に対する判決で7年の有期刑があった。事件の概要は反乱ビルマ軍の関係者数名を逮捕し、部隊長の命令でビルマ警察署にこの犯人を処刑させた事件である。

9月25日 
10回目の裁判である。藤森嵯憲兵准将と橋本幸男憲兵軍曹たちの判決があった。事件の内容は犯人を取調べ中に拷問したとの理由である。起訴状の内容が事実と違って針小棒大であったが、死刑になるような内容ではない。もし検察側の証人が法廷で如何なる証言をするか計り難いので、起訴状をそのまま認めたほうが良いのではないか、との弁護士の助言があった。本人たちも弁護士の言葉に従うことにした。その翌日判決があり、結果は二名とも3年の刑であった。事実行わなかった行為であっても、認めなければならない裁判が戦犯裁判である。

10月1日
当房寿憲兵軍曹にたいする拷問事件である。偽りと虚偽でつづられた起訴状の内容であった。この事件も弁護士の助言もあり、開廷と同時に「有罪」と答え、起訴状をそのまま認めた。今度は10年の判決であった。拷問事件としては今までにない重い刑である。
英軍軍事法廷は、如何なる行為が重いのか、軽いのか、裁判に臨んでその対策は皆無である。

10月20日
-死刑囚の一日―
死刑判決を受けて減刑になった者は未だ一人もいない死刑の判決を受けてこの独房にいる友は現在5人いる。やがて絞首台におくられるのであろう。
愛する祖国のために、父母や妻子と別れて、南国ビルマの最前戦で命をかけて戦って来たが、ついに敗れ、敗戦を迎えたのである。戦いが終わったならば当然祖国日本に帰れると思っていたのに、待っていたのは、刑務所であり、裁判と断頭台であるとは、誰が予想したでしょうか。しかしこの悲劇を敗戦国民が担うのは当然の運命として受け止め、今日一日を正しく生きようとしている友の姿を目のあたりに見ると痛々しく、慰める言葉を知らない。
 限られた狭い獄庭で一日僅か十分位赦される運動の時間を黙々と走り者、或いは監視兵に隠れて自分の思いを遺書として書き残そうとしている友の姿を見る。

生きられる 日はあと幾日と 数えつつ 遺書かく君は 死刑囚なり

毎日毎日降り続く雨の庭を褌一つになって、裸足で走る大西軍医(死刑囚)の足取りは軽い。
「大西さん、あんたの走りぷりは素人の私が見ても見事だね。随分走った足のように見えますがね」
「うん私は四国の金比羅さんのある琴平町から、五里もある山奥で生まれたので、小学校へ通学するために毎日駆け足で通学したし、国体でも二位に入賞したこともありました。」と走り続ける大西軍医、何日処刑されるか分からないにも拘わらず最後まで身体を鍛える。

獄庭を フンドシ一つで かけている 死刑囚の友 雨降る中を

死刑囚松岡大尉は日記に、「死の予期者は、現在をどんな風に考えているだろうかとは、誰しも疑問に思っているだろう。私は真実のことをいうと、死に就いて深く考えていない・・・。私の生命の鍵を握る者に、延命を乞う気持は全くない。私の生命は木の葉が落ちるのと少しも変わらない。太陽が西に沈むのと少しも変わらないと私は思う。絞首台に登れと言われた時に堂々と登り、そして呼吸が止まり、心臓が停止した時が、私が天から与えられた生命の終わりであると考えている。
私には今一日のたつのが非常に早く感じられる。修養のために一分、一秒でも惜しい現在 の私なのだ・・・。中略・・・。私の肉体は亡ぶ、これは自然の法則だ。木の葉が落ち花は散る。これも自然である・・・。自然は美しい、自然は清い。自然はやさしい、自然は強い、この数日、私は、自然を眺めよう、自然に帰ろう、そしてまた御奉公するのだ、御恩に報いるのだ、ああ私は幸福だ」と書いている(原文のまま)。

尽せども 尚励めども 吾がつとめ 果せることの なかりけるかな
明日ありと 思うな今日の このときを 空しく過ごさじ 明日はまた明日
                松岡憲郎作

自分の運命を達観しつつ、最後の日まで、自己を磨こうと努めている死を待つ友の姿を見る。
「註」 判決の確定は、判決後その書類はシンガポールの英軍司令部に送られ、書類審査を行い確定される。その間二ヶ月位の期間がある。

この文章の転載はご子息の許可を得ております。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
ブログ内検索
カウンター
★ごあんない★
毎月第一日更新
お便り・ご感想はこちらへ
お便り・ご感想くださる方は下記のメールフォームか住所へお願いいたします。お便りは「つのぶえジャーナル」の管理人のみ閲覧になっています。*印は必須です。入力ください。
〒465-0065 名古屋市名東区梅森坂4-101-22-207
緑を大切に!
お気持ち一つで!
守ろう自然、育てよう支援の輪を!
書籍紹介
    8858e3b6.jpg
エネルギー技術の
 社会意思決定

日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
 定価(本体5200+税)
=推薦の言葉=
森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授

本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
 共著者・編者
鈴木達治郎
電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
寿楽浩太
東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本

      d6b7b262.jpg
教会における女性のリーダーシップ
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント 
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
217ff6fb.jpg 








「緑のまきば」
吉岡 繁著
(元神戸改革派神学校校長)
「あとがき」より
…。学徒出陣、友人の死、…。それが私のその後の人生の出発点であり、常に立ち帰るべき原点ということでしょう。…。生涯求道者と自称しています。ここで取り上げた問題の多くは、家での対話から生まれたものです。家では勿論日常茶飯事からいろいろのレベルの会話がありますが夫婦が最も熱くなって論じ合う会話の一端がここに反映されています。
定価 2000円 

b997b4d0.jpg
 









「聖霊とその働き」
エドウイン・H・パーマー著
鈴木英昭訳
「著者のことば」より
…。近年になって、御霊の働きについて短時間で学ぶ傾向が一層強まっている。しかしその学びもおもに、クリスチャン生活における御霊の働きを分析するということに向けられている。つまり、再生と聖化に向けられていて、他の面における御霊の広範囲な働きが無視されている。本書はクリスチャン生活以外の面の聖霊について新しい聖書研究が必要なこと、こうした理由から書かれている。
定価 1500円
 a0528a6b.jpg









「十戒と主の祈り」
鈴木英昭著
 「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
定価 1800円
おすすめ本
4008bd9e.jpg
われらの教会と伝道
C.ジョン・ミラー著
鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
定価 1000円
おすすめ本

0eb70a0b.jpg








さんびか物語
ポーリン・マカルピン著
著者の言葉
讃美歌はクリスチャンにとって、1つの大きな宝物といえます。教会で神様を礼拝する時にも、家庭礼拝の時にも、友との親しい交わりの時にも、そして、悲しい時、うれしい時などに讃美歌が歌える特権は、本当に素晴しいことでございます。しかし、讃美歌の本当のメッセージを知るためには、主イエス・キリストと父なる神様への信仰、み霊なる神様への信頼が必要であります。また、作曲者の願い、讃美歌の歌詞の背景にあるもの、その土台である神様のみ言葉の聖書に触れ、教えられることも大切であります。ここには皆様が広く愛唱されている50曲を選びました。
定価 3000円

Copyright © [   つのぶえジャーナル ] All rights reserved.
Special Template : シンプルなブログテンプレートなら - Design up blog
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]