2023年7月号
№193
号
通巻877号
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ビルマ
戦犯者の獄中記 (25) 遠山良作 著
昭和21年
―松岡大尉たち三名絞首刑になる―
11月10日
「チヤイトー」事件の関係者3名を絞首台に送り、空房が出来た。私は鈴木曹長のいた房に移された。房内はきれいに片付けられてあったが壁に「母」という一文字が生々しく書いてある。きっと国の母のことを思い、書いた文字であろう。この友も再び帰ることがない友の面影が浮かぶ。
刑死せる 戦友の独房に 移り住み 面影顕ちて心緊るも
死刑囚 君の残した 歌一首 その真心に 胸打たるなり
死に給う 君の 独房に ただ一字 「母」という字が 残してぞある
11月18日
―東独房に一日―
蚊に悩まされて眠れない時も明け方近くになると涼しくなってうとうと眠る。外は薄明るい。雀やこま鳥のさえずる声が木の繁みから聞こえてくる。
西の方から「ガチャン」と重い鍵が外れる音が響いてくる。既に外に出た友の「お早う」と朝の挨拶を交わす声、西の端から順番に三名ずつ出してくれる印度兵は「マスター、タテジャイガー」(旦那便所に行きますか)と言う。人のよい印度兵はわれわれをマスターと呼ぶ。バケツ(石油缶を半分に切り、洗面器、食器洗い、洗濯洗い等兼用)と便器を持って外に出る。
空は青く澄んでよく晴れている。空を仰いで深呼吸をして、房内のよどんだ空気を全部吐き出して、すがすがしい外気を腹一杯吸い込むのである。歩哨の前に立って先ず便所に行く、既に用便をしている友の下半身は丸見えである。便所には扉がないからである。ふだん便所は汚い場所であるが、ここの便所は楽しい憩いの場所である。要領のよい者は一日に2回も3回もここにくる。歩兵が咎めると腹が痛いという。便所に行くと言えば意地の悪い歩哨でない限り出してくれる。印度語を一言も知らなくても「タテジャイガー」(便所に行く)の印度語だけは誰でも覚える。お互いに顔を合わせて話のできる唯一の場所である。便はしてもしなくても便をするふりをして話をする。
監視の兵は「ジャルテイージャルティー」(早く早く)と大きな声でせきたてる。「今日の歩哨はうるさいから帰ろう」と話を打ち切って便所からでる。
暁ときの 獄庭の繁みの 群雀 かしましく鳴くも あたりは暗し
朝なれば 開かれて行く 音を聞き 便器を持ちて 鉄扉の前に立つ
そして洗面に行き食器を洗うと朝の行事が終わる。「ガチャン」と鉄の扉はしまる。
この文章の転載はご子息の許可を得ております。
戦犯者の獄中記 (25) 遠山良作 著
昭和21年
―松岡大尉たち三名絞首刑になる―
11月10日
「チヤイトー」事件の関係者3名を絞首台に送り、空房が出来た。私は鈴木曹長のいた房に移された。房内はきれいに片付けられてあったが壁に「母」という一文字が生々しく書いてある。きっと国の母のことを思い、書いた文字であろう。この友も再び帰ることがない友の面影が浮かぶ。
刑死せる 戦友の独房に 移り住み 面影顕ちて心緊るも
死刑囚 君の残した 歌一首 その真心に 胸打たるなり
死に給う 君の 独房に ただ一字 「母」という字が 残してぞある
11月18日
―東独房に一日―
蚊に悩まされて眠れない時も明け方近くになると涼しくなってうとうと眠る。外は薄明るい。雀やこま鳥のさえずる声が木の繁みから聞こえてくる。
西の方から「ガチャン」と重い鍵が外れる音が響いてくる。既に外に出た友の「お早う」と朝の挨拶を交わす声、西の端から順番に三名ずつ出してくれる印度兵は「マスター、タテジャイガー」(旦那便所に行きますか)と言う。人のよい印度兵はわれわれをマスターと呼ぶ。バケツ(石油缶を半分に切り、洗面器、食器洗い、洗濯洗い等兼用)と便器を持って外に出る。
空は青く澄んでよく晴れている。空を仰いで深呼吸をして、房内のよどんだ空気を全部吐き出して、すがすがしい外気を腹一杯吸い込むのである。歩哨の前に立って先ず便所に行く、既に用便をしている友の下半身は丸見えである。便所には扉がないからである。ふだん便所は汚い場所であるが、ここの便所は楽しい憩いの場所である。要領のよい者は一日に2回も3回もここにくる。歩兵が咎めると腹が痛いという。便所に行くと言えば意地の悪い歩哨でない限り出してくれる。印度語を一言も知らなくても「タテジャイガー」(便所に行く)の印度語だけは誰でも覚える。お互いに顔を合わせて話のできる唯一の場所である。便はしてもしなくても便をするふりをして話をする。
監視の兵は「ジャルテイージャルティー」(早く早く)と大きな声でせきたてる。「今日の歩哨はうるさいから帰ろう」と話を打ち切って便所からでる。
暁ときの 獄庭の繁みの 群雀 かしましく鳴くも あたりは暗し
朝なれば 開かれて行く 音を聞き 便器を持ちて 鉄扉の前に立つ
そして洗面に行き食器を洗うと朝の行事が終わる。「ガチャン」と鉄の扉はしまる。
この文章の転載はご子息の許可を得ております。
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緑を大切に!
書籍紹介
エネルギー技術の
社会意思決定
日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
定価(本体5200+税)
=推薦の言葉=
森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授
「本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
共著者・編者
鈴木達治郎
(財)電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
(財)電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
(財)電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
寿楽浩太
東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
(財)電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント
スーザン・ハント
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
「緑のまきば」
吉岡 繁著
(元神戸改革派神学校校長)
「あとがき」より
…。学徒出陣、友人の死、…。それが私のその後の人生の出発点であり、常に立ち帰るべき原点ということでしょう。…。生涯求道者と自称しています。ここで取り上げた問題の多くは、家での対話から生まれたものです。家では勿論日常茶飯事からいろいろのレベルの会話がありますが夫婦が最も熱くなって論じ合う会話の一端がここに反映されています。
「聖霊とその働き」
エドウイン・H・パーマー著
鈴木英昭訳
「著者のことば」より
…。近年になって、御霊の働きについて短時間で学ぶ傾向が一層強まっている。しかしその学びもおもに、クリスチャン生活における御霊の働きを分析するということに向けられている。つまり、再生と聖化に向けられていて、他の面における御霊の広範囲な働きが無視されている。本書はクリスチャン生活以外の面の聖霊について新しい聖書研究が必要なこと、こうした理由から書かれている。
定価 1500円
鈴木英昭著
「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
定価 1800円
おすすめ本
C.ジョン・ミラー著
鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
定価 1000円
おすすめ本
ポーリン・マカルピン著
著者の言葉
讃美歌はクリスチャンにとって、1つの大きな宝物といえます。教会で神様を礼拝する時にも、家庭礼拝の時にも、友との親しい交わりの時にも、そして、悲しい時、うれしい時などに讃美歌が歌える特権は、本当に素晴しいことでございます。しかし、讃美歌の本当のメッセージを知るためには、主イエス・キリストと父なる神様への信仰、み霊なる神様への信頼が必要であります。また、作曲者の願い、讃美歌の歌詞の背景にあるもの、その土台である神様のみ言葉の聖書に触れ、教えられることも大切であります。ここには皆様が広く愛唱されている50曲を選びました。
定価 3000円