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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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f3015254.jpeg ビルマ
  戦犯者の獄中記  (26)  遠山良作 著

昭和21年

11月18日
―東独房の一日―(続き)

 十時頃になると「お早うございます」と雨が降っても風が吹いても笑顔で温かい食事を運んで来てくれる友の声がする。食事を運んで来る時は必ず英兵(白人)がついて来る。ひと言でも話をすると「ヘイ」と言って怒るので話したいことは山ほどあれど、話しをすることがでない。ただ顔を見合わせて目と目で合図してお互い元気であることを確かめては安心するのである。
 食事が終わると運動の時間である。死刑囚は一人ずつ出して運動させるが、われわれ有期刑のものは三人位ずつ出してくれる。薄暗い房から一歩外に出ると、眩しい太陽は「サンサン」と輝いている。ここで生活する者のみが知る太陽に有り難さ、十分か十五分くらいの運動の時間は一日の内で一番楽しいときである。外の空気はおいしい。澄んだ青い空、秋の気配を感じるそよ風は軽く頬をなでて通る。
 
 やつれたる 腕思いきり 伸ばしけり 獄舎にあれど 強く生きんと

 6本の鉄格子の間から見る空の視界は狭い。赤い獄舎の屋根の彼方に鷲が一羽高く弧を描いて悠々と飛んでいる。その姿は実に自由である。俺もあんなに自由に空を飛んでみたい。そして祖国まで飛んで行きたい。一羽の鷲は二羽になり風に乗って大きく旋回をして空を飛ぶ姿は雄々しく見事である。
  
 さわやかに 澄みたるビルマの 秋の空 白雲一つ 浮くを目に追う
 極むまで 澄みたる空の 下にして緑葉なびくを 見るはさやけし

やがて日が沈むと大きなねむの繁みに集まる鳥の囀りが始まる。隣りの房の友との話が聞き取れない。にぎやかな鳥の囀りが暫らく続く。次第に夜のとばりとともにあたりはやがて静かになる。

茜雲 たなびく彼方に 陽は落ちて 悔いなき今日の ひと日は終わる
夕さりて 獄庭の木枝の 群鳥の 楽しき語らい 聞くも羨しさ
囀りし鳥の 声ひそむ 夕べとなり 獄舎の庭に 蟋蟀の鳴く

歩哨の兵舎にこうこうと月の影がさす。今宵はきっと満月かも知れない。視界の狭いここから月を直接見ることは出来ない。「カツカツ」と歩哨の靴音のみが静かな闇をついて響いて来る。静かな夜の訪れである。低いながらも良く通る声で広瀬中佐の「死生命あり論ずるに足らず・・・」と永原大尉の歌う正気の歌が流れて来る。孤独と絶望の中にある独房生活の中にあって、勇気を与えくれる詩吟は、日本の歴史の中に生きている忠臣、勇壮な古武士(つわもの)の姿を詩の中に求めて誰しも口ずさむものである。
高級部員出田大佐の吹く尺八の音は、哀調を帯びた余韻を残して、四囲の静寂の中を流れて来る。この響きは何故か故郷を思い涙で頬を濡らす者は私一人ではなかろう。
そして流行歌を歌う者、故郷の民謡を歌うもの等、獄の中にあって荒みがちな心は和むひと時でもある。
歩哨する 兵の人影 尾を曳きて いざよいの月 皓々と照る
生還は すまじと心に 誓えども 父母思えば 咽ぶ吾かも
夜は更けて 獄舎に響く 音楽の音に 故郷の秋祭を 偲びつついる
手づくりの 暦に今日の一日を しかと消したり 囚人われは
小夜更けて 獄舎の庭に さす月を 賞でつ吟ずる 古武士のこころ
  
この文章の転載はご子息の許可を得ております。
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書籍紹介
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エネルギー技術の
 社会意思決定

日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
 定価(本体5200+税)
=推薦の言葉=
森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授

本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
 共著者・編者
鈴木達治郎
電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
寿楽浩太
東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本

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教会における女性のリーダーシップ
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント 
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
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「緑のまきば」
吉岡 繁著
(元神戸改革派神学校校長)
「あとがき」より
…。学徒出陣、友人の死、…。それが私のその後の人生の出発点であり、常に立ち帰るべき原点ということでしょう。…。生涯求道者と自称しています。ここで取り上げた問題の多くは、家での対話から生まれたものです。家では勿論日常茶飯事からいろいろのレベルの会話がありますが夫婦が最も熱くなって論じ合う会話の一端がここに反映されています。
定価 2000円 

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「聖霊とその働き」
エドウイン・H・パーマー著
鈴木英昭訳
「著者のことば」より
…。近年になって、御霊の働きについて短時間で学ぶ傾向が一層強まっている。しかしその学びもおもに、クリスチャン生活における御霊の働きを分析するということに向けられている。つまり、再生と聖化に向けられていて、他の面における御霊の広範囲な働きが無視されている。本書はクリスチャン生活以外の面の聖霊について新しい聖書研究が必要なこと、こうした理由から書かれている。
定価 1500円
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「十戒と主の祈り」
鈴木英昭著
 「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
定価 1800円
おすすめ本
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われらの教会と伝道
C.ジョン・ミラー著
鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
定価 1000円
おすすめ本

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さんびか物語
ポーリン・マカルピン著
著者の言葉
讃美歌はクリスチャンにとって、1つの大きな宝物といえます。教会で神様を礼拝する時にも、家庭礼拝の時にも、友との親しい交わりの時にも、そして、悲しい時、うれしい時などに讃美歌が歌える特権は、本当に素晴しいことでございます。しかし、讃美歌の本当のメッセージを知るためには、主イエス・キリストと父なる神様への信仰、み霊なる神様への信頼が必要であります。また、作曲者の願い、讃美歌の歌詞の背景にあるもの、その土台である神様のみ言葉の聖書に触れ、教えられることも大切であります。ここには皆様が広く愛唱されている50曲を選びました。
定価 3000円

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