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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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ビルマ

  戦犯者の獄中記  (69)  遠山良作 著

11月22日    

―小田大尉、塩田中尉の死刑執行される前夜―

モービン討伐ケースで死刑を宣告されていた小田大尉、泰面鉄道ケースで死刑の宣告を受けている士官学校出身の若い塩田中尉の死刑を執行される前夜の記録(筆記者不詳)は次の通りである。

 西独房20号に小田大尉、塩田中尉、清水中尉、橋口准将の4名、向側1号房には宮本、岩城、葵生川准将、鼻野、屋(おく)曹長がいる。19号には菅原、渡辺の両准将(いずれも絞首刑の宣告を受けているものである)は15時30分頃夕食を食べ終わって雑談していた。そのとき英人曹長たち3名が房に入って来た。そして「キャプテン小田、リュテナント塩田」と両名の名を呼んだ。呼び出しを受けた両名は「とうとう来たか」と言いながら彼等に従って房を出た。刑の確定判決を受けるためである。16時頃両名とも死刑確定の言い渡しを受けて帰って来る。両名は房の廊下を歩きながら各房にいる友だちに「永い間お世話様になりました。今晩が最後になりましたからお願いします」と挨拶される。

 小田大尉は10号、塩田中尉は11号と向かい合った房に移された。衛兵が帰ると間もなく塩田中尉は「小田大尉殿、仲よく行きましょう」と言う。

小田「ああ、仲よく行きましょう。今日はなかなか親切だったね、何もせずここまで連れて来たなあ」と両名とも声高く笑う。

 一寸間をおいて、

小田「オーイ井出いるか」「ハイ」と答える井出准将。

小田「書いたものやその他の品は新山大尉に渡してもらってくれ。森本君はどこか」「ハイ15号です」「今晩は頼むぞ」「ハイ承知しました」との会話が続く。

塩田「塩田の歌集やその他の品は橋口さんに言って、菅野少佐殿に渡して下さい」「ハイ承知しました」との返答がある。

 16時10分頃、英人曹長以下5名が来て両名を連れ出した。5分ほどして帰り廊下を歩きながら各房に向かって、小田大尉は「今晩は演芸を頼むぞ」と声をかける。塩田中尉も「お願いします」といいつつ元の房に収容される。

 衛兵が去ると井出准将が「今、何処に行かれましたか」「ああ、一寸体重を図りに行って来た」と小田大尉の返事がある。

 16時20分頃、小田大尉「印度人通訳ワタン(戦犯調査委員会通訳)が来て「お国のためだから安心してください」と言うから「お前たちにそんなこと言われなくとも、俺たち日本人には、ちゃんと覚悟は出来ている。でたらめな通訳ばかりしていらんことを言うな」と言ってやったらすごすごと帰って行ったよ・・・)と笑われた。

16時25分頃、刑務所長(印度人)が来て「何か頼むことはないか、欲しいものがあれば出来る限りのことはするから遠慮なく言ってくれ」

小田「一晩中話をすることを許可してほしい。そしてそのことを衛兵司令に伝えておいてほしい」と申し入れる。所長はそれを承諾した模様であったが、後の言葉は雑音で聞き取れない。そのとき菅野少佐と共に英人将校が来たが会話の内容は聞き取れない。

16時30分頃、西独房の者全員が漸次面会する。東独房から久米憲兵司令官たちが面会に来る。雑房からも原田少佐たち10名もそれぞれ最後の面会をする。所長はこれに立ち会い、17時30分頃帰った。暫く二人は無言であったがやや経ってから、「これで満足した。皆さんに会えてこんなに嬉しいことはない」と言われた。

17時40分頃、菅野少佐が桃の罐詰を持って来て分配しながら何か話しをしているが聞き取れない。―中略―

18時40分頃、小田大尉は房にいる全員に明朝出発の行事として、5時に私たちは遥拝をします。そして、「君が代」「海行かば」を各々2回歌います。万歳は房を出る直前に致しますから御承知下さい。歌の音頭は森本君に取っていただきたいと思います、と言われる。

19時頃より井出准将の進行係により演芸会が始まり房内は賑やかになる。

22時20分頃、全員の心からのはなむけの演芸会に応えて、塩田中尉は「二・二六の歌」自作の歌を謳われ、次いで辞世の歌を朗詠される。

あたたかき 友の情に うるおいて 心豊かに 我は逝くなり

身はたとえ 断頭台に 消えるとも 永遠に生きん 真心もちて

引き続いて小田大尉は、都々逸、詩吟、正気之歌、自作の「転進行」などを歌い、辞世の歌を朗読される。

皇国の 悠久平和を 祈りつつ 南の涯に 我は散り逝く

悠久に皇御国(すめらみくに)の新代を 興されかしと祈りつつ逝く

そして「内地に帰るもの者は戦犯をよく理解して帰り、祖国再建に尽してもらいたい」と言われた。―中略―

23時両官は「余り遅くなると皆様にもご迷惑だからこの辺で切り上げて下さい。長い間有難う御座いました」との謝辞があった。

清水中尉「時間の心配はありませんから続けましょう。そのかわり遅くなったから拍手だけは止めましょう」と提案される。2時ころまで演芸会は続けられる。

=東独房のスケッチ=

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書籍紹介
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 社会意思決定

日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
 定価(本体5200+税)
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森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授

本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
 共著者・編者
鈴木達治郎
電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
電力中央研究所社会経済研究所研究員
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電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
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東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
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      d6b7b262.jpg
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発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント 
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
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 「著者のことば」
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