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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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ビルマ 戦犯者の獄中記(75) 遠山良作著

 ―結核で入院―・・・1・・・

 6月(昭和24年)、長い牢獄生活からの疲れであろう、軽い作業でも疲れを覚える。作業を終えて二階の房に帰る階段を昇ると息苦しく休んでは昇る。疲れている者は私ばかりではない。誰でもみんな疲れているのだと心に鞭打って休まずに作業を続ける。作業は戦争により手入れも出来なかった老朽化した家屋の取り壊し、パンを焼くかまど作り等当局から命じられた一般作業班である。

 ついには歩くことすら苦しくなったので、医務室に診断に行く。体温は38度である。休養を許され、その日は房に帰り、布団を敷いて休んだ。その午後。急に頭から血の気がス~と引いて行くような気がしたと思うと、真っ暗な深い穴に中に落ちて行く。その瞬間「ああ俺は死ぬんだ」と思った。そのまま気を失ってしまったのである。

 それからどれくらい時間が経ったのか知らないが、気が付いて見ると枕元には監獄の医師と心配そうに私を囲んでいる友の顔があった。「ああ死ななかったのか」と思う。起き上がろうとしても、まるで力が出ない。「無理するな寝とれ」と友は言う。立って便所に行くことすら出来ない。

 そのまま担架で刑務所内にある病院に入院をした。病院と言っても角材の格子に囲まれた部屋に寝台が並べてあるだけである。50人位の現地人が入院していた。入院患者は作業が免除される。一日一回医者の回診はあるが薬もなく、ただ寝ているだけである。仰向けになると格子の間から見える白い空はまぶしくて目を開けていることが出来ない。布で目を覆いながら寝るのである。熱を測ると37度5分から38度よりなかなか下がらない。着ているシャツは寝汗のためにびっしょり濡れてしまう。一日に何回も着替えなければならない。

 昼の休憩時間と、作業が終わると主に桧垣君が交代で汗に濡れたシャツの洗濯や一日二回の食事も運んでくれる。「遠山君今日はどうかな」とやさしく声をかけて来てくれる。そして、その日にあった出来事を話してくれる。

 彼らが来る時間が待ち遠しい。こんな入院生活が何カ月も続くが、病状は一進一退で病名もはっきりしない。医者は熱があるからマラリヤだとの診断である(後日、日本に送還され巣鴨拘置所でレントゲン検査の結果肺結核であったことが判明した)。

 なかなか回復しないはなはだしい貧血状態の病状を友はみんな心配してくれる。B級扱いを受けている戦犯者に支給してくれる副食物は現品を支給してくれる。これを炊事当番が調理する。鶏やあひるは生きたまま支給してくれる。その肝臓は栄養があるからといって私のために特別に料理してくれた。時には作業中に捕まえたサソリは、猛毒があるからきっと薬にもなるだろうといってサソリの黒焼きも食べた。味はないが、その友情を噛み締める。

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書籍紹介
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エネルギー技術の
 社会意思決定

日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
 定価(本体5200+税)
=推薦の言葉=
森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授

本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
 共著者・編者
鈴木達治郎
電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
寿楽浩太
東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本

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教会における女性のリーダーシップ
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント 
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
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「緑のまきば」
吉岡 繁著
(元神戸改革派神学校校長)
「あとがき」より
…。学徒出陣、友人の死、…。それが私のその後の人生の出発点であり、常に立ち帰るべき原点ということでしょう。…。生涯求道者と自称しています。ここで取り上げた問題の多くは、家での対話から生まれたものです。家では勿論日常茶飯事からいろいろのレベルの会話がありますが夫婦が最も熱くなって論じ合う会話の一端がここに反映されています。
定価 2000円 

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「聖霊とその働き」
エドウイン・H・パーマー著
鈴木英昭訳
「著者のことば」より
…。近年になって、御霊の働きについて短時間で学ぶ傾向が一層強まっている。しかしその学びもおもに、クリスチャン生活における御霊の働きを分析するということに向けられている。つまり、再生と聖化に向けられていて、他の面における御霊の広範囲な働きが無視されている。本書はクリスチャン生活以外の面の聖霊について新しい聖書研究が必要なこと、こうした理由から書かれている。
定価 1500円
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「十戒と主の祈り」
鈴木英昭著
 「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
定価 1800円
おすすめ本
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われらの教会と伝道
C.ジョン・ミラー著
鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
定価 1000円
おすすめ本

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さんびか物語
ポーリン・マカルピン著
著者の言葉
讃美歌はクリスチャンにとって、1つの大きな宝物といえます。教会で神様を礼拝する時にも、家庭礼拝の時にも、友との親しい交わりの時にも、そして、悲しい時、うれしい時などに讃美歌が歌える特権は、本当に素晴しいことでございます。しかし、讃美歌の本当のメッセージを知るためには、主イエス・キリストと父なる神様への信仰、み霊なる神様への信頼が必要であります。また、作曲者の願い、讃美歌の歌詞の背景にあるもの、その土台である神様のみ言葉の聖書に触れ、教えられることも大切であります。ここには皆様が広く愛唱されている50曲を選びました。
定価 3000円

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