忍者ブログ
2023年7月号  №193 号 通巻877号
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

…キリスト教…
    社会福祉活動のあゆみ(14)1370c7c3.jpg
  キリスト教公認後の貧しい人々への救済(7)
   中世教会の貧困問題の対策の基本原則(5)
 
 さらに、中世共同体の特異性といわれるもの、また、現代社会との相違点を考える必要があります。13世紀は、近世産業化以前の社会的標準からすれば、比較的安定した社会が存在していたとされています。それは、貧困者の大部分は農民でしたが、彼らは、小さい村落に住み、自分の土地に根を下ろした生活であったため、集団的失業は見られなかったからです。
 貧しいと言えども、一般的には健康な人はもし働く意思さえあれば、自らを扶養することは出来ました。しかし、負傷して農作業が出来なくなったり、長期の病気や老衰によるものであったり、また、世帯主が死亡して、幼少の子供を抱えた未亡人が残されるようなことも当然起こりました。
 このような種類の貧困に対する救済を主とした慈善の弊害、と指摘する人々もおりますが、一体何をもって言うのでしょうか。また、一時的な困窮の状態であるならば、組織的慈善に頼ることなしに、しばしば解決されていました。また、家族的結合あるいは家族的忠誠は強固であって、隣人同士は、しばしばギルドによって結ばれていたからです。
 このような事態を考慮するならば、「自分の家族、特に家族の世話をしない者がいれば、その者は信仰を捨てたことになり、信者でない人にも劣っています」(Ⅰテモテ5:8)という教えも民衆の意識の中に広まっていたと考えても良いでしょう。
 また中世の農民は、教区司祭の監督の下で生活し、「わたしたちは、働きたくない者は、食べてはならない」(Ⅱテサロニケ3:10)と教えた聖書の戒めも知らされていたに違いありません。当時の農民は、その領主の土地で要求された仕事をしなかった場合には、ただちに執事の棍棒でその義務を思い知らされたであろうし、或いはもっと適切な方法としては、領主裁判所へ正規の手続きで召喚され、厳しい罰金を課せられたりすることによって、その義務を要請されたであろうと思われます。
 それでも、自分の土地で働かなかったならば、その家族は生命の維持が困難な家族の生活扶養の重荷は、第一義的には親戚か隣人に係わってきました。したがって、このような行為は中世農民の社会形成をしていた小さい共同社会全体から、激しい非難攻撃を受けたに違いありません。
 全体的には、農民各人に少なくともその扶養家族を養うに必要な労働をするように強制するきわめて強い社会的圧力があったに違いないのです。すべての事情を考慮してみるならば、国内の村から村への間にある修道院で、無料の食事が得られる可能性が13世紀の社会一般に、道徳的腐敗をもたらすほど影響力が有り得たと推測することは当を得ていないように思われます。
 事実、中世社会の生活の現実の姿に心を留める時には、甚だしい慈善の乱用も比較的無害で、特殊なあの歴史的機構においては、むしろ有益でさえあったと判断されている面もありました。
 アッシュレーを憤慨させた慈善の形式の一つに、恩人の霊魂の安息のための祈りに集まる貧しい村人たちにご馳走をするという習慣がありました。中世紀の一般農民は、生命を維持するに足るだけの生活必需品をいくらか余分に所有しているというだけで、毎日単純な変化のない食事をしていて、厳しく管理されて、潤いのない型にはまった生活を送っていたのです。
 このような事情にあっては、持てる者が持たない貧しい隣人たちを、一年に一度か二度招いて、美味しい食物や飲み物で腹一杯にするように配慮することは、恩人の霊魂のために益がある、すなわち供養になるという宗教上のまた精神上の大きな慰安になったと考えられていたことです。
 もちろん、中世法学者は、このような見解はおそらく取らなかったし、またこうした折々のご馳走は、長期間の貧困の問題に対しては、有効な回答を与えるものではありません。しかし、中世期の人々が、慈善のために大きな遺贈をしようと思うときには、教会か或いは慈善的機関に、それを寄進していたのです。教会や慈善的機関によって貧民救済とその管理は、結局、中世教会の慈善理論に支配されていたので、その弊害、あるいはその欠陥といえば、現代福祉国家の公的扶助にまつわる弊害や欠陥に類似のものであったと想像しても大過ないものです。 
 
  
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
ブログ内検索
カウンター
★ごあんない★
毎月第一日更新
お便り・ご感想はこちらへ
お便り・ご感想くださる方は下記のメールフォームか住所へお願いいたします。お便りは「つのぶえジャーナル」の管理人のみ閲覧になっています。*印は必須です。入力ください。
〒465-0065 名古屋市名東区梅森坂4-101-22-207
緑を大切に!
お気持ち一つで!
守ろう自然、育てよう支援の輪を!
書籍紹介
    8858e3b6.jpg
エネルギー技術の
 社会意思決定

日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
 定価(本体5200+税)
=推薦の言葉=
森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授

本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
 共著者・編者
鈴木達治郎
電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
寿楽浩太
東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本

      d6b7b262.jpg
教会における女性のリーダーシップ
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント 
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
217ff6fb.jpg 








「緑のまきば」
吉岡 繁著
(元神戸改革派神学校校長)
「あとがき」より
…。学徒出陣、友人の死、…。それが私のその後の人生の出発点であり、常に立ち帰るべき原点ということでしょう。…。生涯求道者と自称しています。ここで取り上げた問題の多くは、家での対話から生まれたものです。家では勿論日常茶飯事からいろいろのレベルの会話がありますが夫婦が最も熱くなって論じ合う会話の一端がここに反映されています。
定価 2000円 

b997b4d0.jpg
 









「聖霊とその働き」
エドウイン・H・パーマー著
鈴木英昭訳
「著者のことば」より
…。近年になって、御霊の働きについて短時間で学ぶ傾向が一層強まっている。しかしその学びもおもに、クリスチャン生活における御霊の働きを分析するということに向けられている。つまり、再生と聖化に向けられていて、他の面における御霊の広範囲な働きが無視されている。本書はクリスチャン生活以外の面の聖霊について新しい聖書研究が必要なこと、こうした理由から書かれている。
定価 1500円
 a0528a6b.jpg









「十戒と主の祈り」
鈴木英昭著
 「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
定価 1800円
おすすめ本
4008bd9e.jpg
われらの教会と伝道
C.ジョン・ミラー著
鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
定価 1000円
おすすめ本

0eb70a0b.jpg








さんびか物語
ポーリン・マカルピン著
著者の言葉
讃美歌はクリスチャンにとって、1つの大きな宝物といえます。教会で神様を礼拝する時にも、家庭礼拝の時にも、友との親しい交わりの時にも、そして、悲しい時、うれしい時などに讃美歌が歌える特権は、本当に素晴しいことでございます。しかし、讃美歌の本当のメッセージを知るためには、主イエス・キリストと父なる神様への信仰、み霊なる神様への信頼が必要であります。また、作曲者の願い、讃美歌の歌詞の背景にあるもの、その土台である神様のみ言葉の聖書に触れ、教えられることも大切であります。ここには皆様が広く愛唱されている50曲を選びました。
定価 3000円

Copyright © [   つのぶえジャーナル ] All rights reserved.
Special Template : シンプルなブログテンプレートなら - Design up blog
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]