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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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…キリスト教…
 社会福祉活動のあゆみ(23)
 
 プロテスタントの貧しい人々への救済のあゆみ(1)
 共同基金の規定
 
 プロテスタントの貧しい人々への救済の基本原理を理解するためには、「なぜなら、わたしたちは、人が義とされるのは律法の行いによるのではなく、信仰によると考えるからです」(ローマ3・28)というプロテスタント神学を念頭に置く必要があるでしょう。従来のキリスト教では、慈善の行為は信徒の義務であり、それは価値のある善き業とされていました。ルター(1483~1546)は、パウロが「ローマの信徒への手紙」の中に、旧約聖書の「ハバクク書」から引用して「しかし、神に従う人は信仰によって生きる」(2・4)という言葉に強く打たれ、ここに救いの確信を得たと言われています。すなわち、人間は善行を積み、その功徳によって救われるのではなく、ただ神の恩寵を信じることによってのみ義とされるという信仰の立場に立ちます。
 ルターから見ると、当時の個人的なキリスト教の慈善は、ただ神を喜ばす善き業として、与える側の宗教的満足の手段であるに過ぎないように思われていました。それでルターは、1520年に公にした「キリスト教会の改善に関してドイツのキリスト者貴族に与える書」で、キリスト教界のあらゆるところから、全ての物乞い・商売が除かれるということは、実際に最も大きな必要の一つであると宣言しました。
 「実際、だれもキリスト者の名の下に物乞い行為をなすべきでない。もし私たちが勇気と真剣さとをそのことに示すなら、そのための制度が容易に作られることだろう。すなわち、全ての都市は、その町の貧しい人々を世話するが、他の地方の如何なる物乞いをも、それが巡礼者であっても、あるいは托鉢修道会に属するものであっても、彼らが望むようにどのように喜ばれようとも、世話しないことである。たしかに、全ての都市は、その町の貧しい人々を扶養することが出来るはずだ。・・・そこで、全ての貧民を知ると共に、その貧民にとって必要であるに違いないものを、市の参事会員かあるいは主任司祭かに報告する管理人か、または後見人がここにいなければならない」(ルター著作集第一集・第2巻)と説いています。
 ルターは自分のこうした考えを実行に移すために、1523年「共同募金の規定」を著して、次のように訴えました。
 「物乞いは厳重に禁止すべきであり、老齢、虚弱の者以外は働かなければならない。その教区に属さない物乞いは留まることを許さない。正直に手工業、あたは農場に従事する貧困な戸主には、もし他に何らかの援助も求めることが出来なければ、無利息で共同基金から資金を貸与すべきである。
 45a1dd9c.jpgまた、もしこの補助金を事実返済することができない時は、返済の必要がなく、与えられるべきである。基金の収入は教会領地の収入、自由寄付、またもし必要があれば、居住市民への課税及び旅職人に対する少額の人頭税からなる。その管理は選出された10名の委員に任せなければならない」。その10名の選出については、「それで、神の恵みにより、真のキリスト教信仰における協力のもとに、教会全体から例外なく適任である10名の共同基金後見人、あるいは執事が選ばれなければならない。すなわち、それは2人の貴族、市参事会から2人、市の市民から3人、農民から3人である。
 こうして選ばれた10名は、直ちにこの管理と後見の責任を神の共同の福祉のために、喜んで引き受け、また負わなければならない。善きキリスト教的良心をもって、個人的な好意、妬み、利益、恐れ、またはその他の相応しくない口実などに関らず最善を尽くし、この今書き記されている私たちの規定の内容、管理、収入と支出を忠実にまた安全に処理する責任があり、義務がある」と(ルター著作集・第一集・第5巻)。
 
 しかし、「共同基金の規定」の提案は、残念ながら実際には余り成功ではなかったのでした。「原則は非常に立派であったけれども、実際の運用にあたってはそれの僅かしか実現しなかった」(アリス・サロモン著・社会福祉事業入門)と、「共同基金の規定」の目的は達成されなかったことを説明しています。
 市の議会は、それまで自分たちで扱ってきた多くのことを、共同基金の管理委員会に委ねることを渋ったし、そして選帝侯の承認なしには実行できないと主張したからでした。ただ、フランス、オーストリア、スカンジナビア諸国の各都市には、ルターの提案に類した計画を発展させ、困窮者、病人、身体障害者及び孤児に対する救済基金の徴収と配分の責任を負うようになった都市もありました。しかしながら、貧しい人々の救済管理の主要な役割をえんじていたのは依然として教会当局でした。
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書籍紹介
    8858e3b6.jpg
エネルギー技術の
 社会意思決定

日本評論社
ISBN978-4-535-55538-9
 定価(本体5200+税)
=推薦の言葉=
森田 朗
東京大学公共政策大学院長、法学政治学研究科・法学部教授

本書は、科学技術と公共政策という新しい研究分野を目指す人たちにまずお薦めしたい。豊富な事例研究は大変読み応えがあり、またそれぞれの事例が個性豊かに分析されている点も興味深い。一方で、学術的な分析枠組みもしっかりしており、著者たちの熱意がよみとれる。エネルギー技術という公共性の高い技術をめぐる社会意思決定は、本書の言うように、公共政策にとっても大きなチャレンジである。現実に、公共政策の意思決定に携わる政府や地方自治体のかたがたにも是非一読をお薦めしたい。」
 共著者・編者
鈴木達治郎
電力中央研究所社会経済研究所研究参事。東京大学公共政策大学院客員教授
城山英明
東京大学大学院法学政治学研究科教授
松本三和夫
東京大学大学院人文社会系研究科教授
青木一益
富山大学経済学部経営法学科准教授
上野貴弘
電力中央研究所社会経済研究所研究員
木村 宰
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
寿楽浩太
東京大学大学院学際情報学府博士課程
白取耕一郎
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程
西出拓生
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程
馬場健司
電力中央研究所社会経済研究所主任研究員
本藤祐樹
横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
おすすめ本

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教会における女性のリーダーシップ
スーザン・ハント
ペギー・ハチソン 共著
発行所 つのぶえ社
発 売 つのぶえ社
いのちのことば社
SBN4-264-01910-9 COO16
定価(本体1300円+税)
本書は、クリスチャンの女性が、教会において担うべき任務のために、自分たちの能力をどう自己理解し、焦点を合わせるべきかということについて記したものです。また、本書は、男性の指導的地位を正当化することや教会内の権威に関係する職務に女性を任職する問題について述べたものではありません。むしろわたしたちは、男性の指導的地位が受け入れられている教会のなかで、女性はどのような機能を果たすかという問題を創造的に検討したいと願っています。また、リーダーは後継者―つまりグループのゴールを分かち合える人々―を生み出すことが出来るかどうかによって、その成否が決まります。そういう意味で、リーダーとは助け手です。
スーザン・ハント 
おすすめ本
「つのぶえ社出版の本の紹介」
217ff6fb.jpg 








「緑のまきば」
吉岡 繁著
(元神戸改革派神学校校長)
「あとがき」より
…。学徒出陣、友人の死、…。それが私のその後の人生の出発点であり、常に立ち帰るべき原点ということでしょう。…。生涯求道者と自称しています。ここで取り上げた問題の多くは、家での対話から生まれたものです。家では勿論日常茶飯事からいろいろのレベルの会話がありますが夫婦が最も熱くなって論じ合う会話の一端がここに反映されています。
定価 2000円 

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「聖霊とその働き」
エドウイン・H・パーマー著
鈴木英昭訳
「著者のことば」より
…。近年になって、御霊の働きについて短時間で学ぶ傾向が一層強まっている。しかしその学びもおもに、クリスチャン生活における御霊の働きを分析するということに向けられている。つまり、再生と聖化に向けられていて、他の面における御霊の広範囲な働きが無視されている。本書はクリスチャン生活以外の面の聖霊について新しい聖書研究が必要なこと、こうした理由から書かれている。
定価 1500円
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「十戒と主の祈り」
鈴木英昭著
 「著者のことば」
…。神の言葉としての聖書の真理は、永遠に変わりませんが、変わり続ける複雑な時代の問題に対して聖書を適用するためには、聖書そのものの理解とともに、生活にかかわる問題として捉えてはじめて、それが可能になります。それを一冊にまとめてみました。
定価 1800円
おすすめ本
4008bd9e.jpg
われらの教会と伝道
C.ジョン・ミラー著
鈴木英昭訳
キリスト者なら、誰もが伝道の大切さを知っている。しかし、実際は、その困難さに打ち負かされてしまっている。著者は改めて伝道の喜びを取り戻すために、私たちの内的欠陥を取り除き、具体的な対応策を信仰の成長と共に考えさせてくれます。個人で、グループのテキストにしてみませんか。
定価 1000円
おすすめ本

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さんびか物語
ポーリン・マカルピン著
著者の言葉
讃美歌はクリスチャンにとって、1つの大きな宝物といえます。教会で神様を礼拝する時にも、家庭礼拝の時にも、友との親しい交わりの時にも、そして、悲しい時、うれしい時などに讃美歌が歌える特権は、本当に素晴しいことでございます。しかし、讃美歌の本当のメッセージを知るためには、主イエス・キリストと父なる神様への信仰、み霊なる神様への信頼が必要であります。また、作曲者の願い、讃美歌の歌詞の背景にあるもの、その土台である神様のみ言葉の聖書に触れ、教えられることも大切であります。ここには皆様が広く愛唱されている50曲を選びました。
定価 3000円

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