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2023年7月号  №193 号 通巻877号
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86d5f855.jpeg『旧・新約婦人物語』(45)

捕虜になったイスラエルの少女
   =列王紀下 5:1~14=

 預言者エリシャの時代、イスラエルは北方のスリヤという国から常に侵略を受けていました。そのスリヤの将軍にナアマンという人がおりました。この人は立派な人で、聖書には、「ナアマンはその主君に重んじられた有力は人であった」(1)とあります。
 当時の習慣で、戦いに勝った国は、敗戦国の財産を没収するだけでなく、その国民の一部を捕虜として連れ帰り、奴隷として使ったのです。
 この少女も、そうした捕虜の一人で、将軍ナアマンに使われていたのです。彼女は懐かしい故郷から、知らぬ他国へ連れてこられた可愛想な身の上でした。しかし、良い主人の下に使われ、その主人の侍女として仕え、主人たちに愛されたことは、せめてもの幸いでした。ナアマン一家は理想的な家庭であったようで、彼女には奴隷によく見られるひがみもなく、主人や女主人に信用され、勤勉であったようです。
 しかし、この幸福そうな一家にも大きな悩みがありました。ナアマンには多くの財産もあり、高い地位、栄誉もありましたが、それらではいやされない、ライ病に罹っていたのです。この病を思う時、明るいはずのこの家庭も、憂愁に包まれて暗く、さすがに猛き将軍もこれには施す術もなく、諦めていたようです。一家の悩みに心を痛めていこの優しい少女は、ある日、女主人に、「わたしの故郷サマリヤに神の人エリシャがおられます。そこへお出になればいやされることでしょう」と言いました。それを聞いたナアマンは、少女の言葉を信じて、王に話し、王の許しをいただき、イスラエルへ出発しました。
 ここで私たちの、愉快に思いますことは、この少女のまことの神に対する信仰と、将軍ナアマンが一少女の言葉を素直に信じて、エリシャのところへ旅立ったことです。
 この少女はエリシャが神の人であり、神から与えられている能力をよく理解して、エリシャは今まで一度も、ライ病をいやしたことを聞かなかったのに、彼は神の人であり、神はこのような病気もいやしたもう能力があると信じて、預言者のことを自分の主人に進言したのです。
 誰でも、奴隷のような不遇の身に置かれますと、希望を失い悲観して、望郷の思いにかられるものです。まして多感な少女時代においては、なおさらです。彼女にはそのようなところもなく、信仰によってこの不遇のうちにも光明を見出し、主人を愛し、主人の幸福を自分の幸福だと考えたりするあたり、大いに学ぶべきです。
 さらに、おもしろいのは将軍ナアマンが、位も、身分もきわめて高い地位にありながら、あわれな奴隷の一少女の信仰を見て、その一言の言葉を信じました。スリヤ王もまた、このことを聞いて喜んでナアマンのために、イスラエル王に紹介状を書いたことです。一少女の言葉が、国王を動かした例はあまり類のないことです。
 将軍ナアマンは王よりの手紙をいただき、金銀、衣類など立派な贈物を携え、イスラエルの王のもとへ急ぎました。彼はイスラエルの王にスリヤ王の手紙をささげました。その手紙には、「わたしの家来ナアマンを、あなたにつかわしたことを御承知ください。あなたに彼のライ病をいやしていただくためです」(6)と記されていました。
 これを見た王は非常に驚き、「わたしは殺したり、生かしたりすることのできる神であろうか・・・」(7)。これは多分難題を持ちかけて、戦争の口実をつくるのであろうと、イスラエルの王は思い込み、衣を裂いて歎きました。
 預言者エリシャは、王の嘆きを聞いて使いを王に送り、「どうしてあなたは衣を裂いたのですか、彼をわたしのもとにこさせなさい。そうすれば彼はイスラエルに預言者のあることを知るようになるでしょう」(8)と言いました。
 そこでナアマンは家来を引きつれてエリシャのもとへ行き、その門前に立ちました。その時、エリシャは召使に「ヨルダン川へ行って身を七度洗え、そうすればあなたは清くなる」と言わせるだけで、自分は出て行きませんでした。
 ナアマンは、自分が有名な将軍ですから、一野人のエリシャはきっと敬意を払って、玄関まで出迎えるであろうと思っていたのです。ところが出て来ないのみか、この一見愚にも等しい命令ではありませんか。彼は意外でもあり、怒りました。この時のナアマンのことばは、「わたしは、彼がきっとわたしのもとに出てきて立ち、その神、主の名を呼んで、その箇所の上に手を動かして、ライ病をいやすだろうと思った。ダマスコの川アパナとパルパルはイスラエルのすべての川にまさるではないか。わたしはこれらの川に身を洗って清まることができないのであろうか」(11~12)と聖書に記されています。
 この言葉には、彼の傲慢と不信がよく出ております。彼は自分が位の高い軍人であるのに慢心して、エリシャの治療の方法が余りにも馬鹿らしく感じられたに違いありません。エリシャが自ら出てきて、彼に手を置いて祈るとか、他の特別な方法でいやしてくれると思ったのにヨルダン川で身を洗えとは、あまりにも将軍を馬鹿にした話だ、自分の国には、ヨルダン川よりも美しい河が流れているのに、何も頭を下げてイスラエルまで来る必要はなかったではないかと彼は身を翻して帰ろうといたしました。ナアマン将軍のこの態度には非常に考えさせられる所があります。実は、私たちにも、彼の態度によく似た、短気から来る軽率なこのような態度がよくあるものです。
 「小事に忠実な人は、大事にも忠実である」(ルカ16・10)と、聖書にあります。
 人がつまらないと思うようなことにも、忠実であるところに神のお恵みがあるのです。ナアマンがつまらないことだと思った川の水で身を洗うことも、これを信じて行うところに神の恵みがあったのです。私たちも大きなことにのみ心引かれて、人目を引かない小事をなおざりにいたしますと、せっかくの神の恵みに恵まれる機会を失ってしまいます。
 ナアマンは愚かにも傲慢と怒りのために、神の恵みの機会を逃すところでした。しかし幸いにも賢い僕たちがいました。
 「わが父よ、預言者があなたに、何か大きな事をせよと命じても、あなたはそれをなさらなかったでしょうか。まして彼はあなたに『身を洗って清くなれ』と言ったわけではありませんか」(13)と諌めましたので、彼はヨルダン川にくだり、身を洗いました。ところが、預言どおり、彼の全身が清くなりました。

 これによって、私たちが特に教えられますことは、
1 人は神の言葉に素直に、子供のように従って行くべきです。ナアマンがエリシャの言葉に従って、身をヨルダン川で洗って救われたのは、その例です。
2 人は神の義を知らず、自分の義を立てようとするところに、傲慢があります。キリストによる義のみが、私たちを救いにいたらせます。
  
 ポーリン・マカルピン著
(つのぶえ社出版)この文章の掲載は「つのぶえ社」の許可を得ております。尚、本の在庫はありません。
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